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■おちょやん異聞5 by星★
ID: aF4KUvW.H1 
2021-01-14 21:36:45

■おちょやん異聞5    ~京都就活編~ 
 道頓堀は目の前にポカンと浮かんだ箱にオモチャがギッシリ詰まっていた。しかし、京都という箱は、まだカラッポでそこに何が入るのかわからない。そこで、胸の中から、お母ちゃんとご寮人さんの2つのビー玉を入れて振ったらコロコロと優しい音がする。それで千代は落ち着いた。
 新しい場所には新しい時間がある。京都の時間は、お茶子時代と違い、その間尺は長くも短くもなった。だから、千代はその時間をしばしば思い出と勘違いし、京都は現実とは違う世界のような気がすることがある。
 京都駅近くまで来た時はお昼でソバを食べた。そこで、見知らぬ家出の少女と知り合いになった。
 家出だというのもすぐに分かった。道頓堀に来た時の自分の顔、現実と夢、希望と不安がまだらに混在し映し出された表情、それに似た顔を鏡で見るようだった。千代も家族を捨てた家出だと思っていたから・・・。
 お姉さん、こっちよ、と最初に千代が柔らかな言葉をかけた。真理も氷の解けるような透明な笑顔をかえした。「宇野真理」ナマリで富山生まれだとわかった。千代は、外見や喋り方で、その人がどういう人か色々とわかるのである。それは「岡安」の経験からである。また、正直か嘘つきかもわかったが、これは「岡安」以前の貧乏の経験からである。
 そして、そのようなことがわかっても決して口にしないのが、ご寮人さんの「教え」だった。
 二人は姉妹の様に喋った。千代は、自分が世話焼きな妹のようで嬉しかった。ずっと姉が欲しかったのである。小賢しい自分を苦にしない、のんびりとした姉を。
 そしてすぐに人を信用する真理は、大切な秘密の様に千代の目をのぞきこんでこう言った。
 うちな、千代ちゃん、女優になりたいの。
 駅の近くに商人宿がある。「岡安」のような芝居茶屋近くの宿は建物自体が飾り立てられ、入口も華やかだ。商人宿の入り口は小さく簡素な入り口だった。「生活」に似ていると思った。
 お嬢ちゃん、ここは若い女の子達がくるような宿じゃないよ、と煙草の匂いのする声が響く。
 違うのよ、お父ちゃんが商売を終えて明日来るの、今日は私達だけだけど、・・・馴れた口調で嘘がスラスラとでた。「岡安」に奉公する前の口調である。
 そうかい、それなら良いよ。千代は嘘が通じて嬉しかった。隣にいる真理と秘密を分かち合えた喜びである。このようにして子供達は友情の証として多くの嘘を覚えてゆく。
 荷物を預けて、就活の為、この二人は、小鳥の様に見ず知らずの街に飛び出した。
 ご寮人さんの名刺の商家や、口入れ屋も二人で外から眺めただけである。気おくれがした。希望という袋の内側が不安でいっぱいになり二人して臆病な小鳥になった。口入れ屋を外から見て、真理は家出のことを、千代は、テルヲのことを思いだしたのである。大阪の経験で、人通りの多い場所のカフェに色々な話があるような気がした。二人は人通りの多い庶民的なカフェに入った。聞き耳を立てる。おあつらえ向きの話はない。不安はまず耳から入って、動悸しながら心臓に入ってくる。真理はぼんやりと人を見たり印刷物を見たりしている。
 その日は大した事もなく、宿にかえって姉妹の様に布団を並べて敷いた。カメから渡された荷物の中に、自分の財布とは別に小さく畳まれた紙幣を発見した。「カメさんらしい・・」とそれがカメの仕業だとすぐわかる。紙幣は小さくキチンと畳まれていたが、何かしら大雑把なのだ。カメの善意はいつも大雑把で無造作で他意が無い。千代はその金額を紙にメモし、お金は職を探す為に使おうと財布の中に入れた。そのメモは、千代にとって大事な未来への約束手形だ。辛い時、たびたび千代はこの約束手形を見た。このとき、ふと涙があふれてきたのは、乞食の小次郎さんも別れ際、お金を渡そうとしたのを思い出したからである。あの自分の昼弁当にも困っていた小次郎が。
 「何やってんのよ、小次郎はん。冗談ばっかり」そう、こまっしゃくれた口をきき、千代は物の分かった生意気な瞳で小次郎を見返したつもりだった。けど、急に嬉しくて嬉しくて、声は涙声で、顔はうつむいて上を向けなかった。千代の喜びは、そのような体も心も抑制のきかない感情だった。だから小次郎を見ないで、お金を突き返すのが精いっぱいだった。だから、「じゃ、行くよ、千代」という小次郎の最後の顔の記憶がないことに今やっと気が付いてシクシクと泣いた。
 そんな千代を真理は黙って見ていた。まるで、姉の様に。

<・・・余り面白くないかな?平凡かな? by星★・・・>

122
横浜流れ星
ID: ck1S8Dx3bX 
2021-01-14 21:56:25

>>121
もし…素人さんだったら、高く評価します。
小説家を目指している人ですか?

123
夏菜子
ID: ymqV2Qb8hw 
2021-01-14 22:47:03

おちょやん異聞5 by星★さんへ

非常に細かい背景の描写が素晴らしいと思います。
人物の心の描写もキャラにブレがなくて良いと思います。

内容も専門の脚本家の手を借りれば、ドラマにできるのではないでしょうか。

124
名前無し
ID: 6VU37eCXHe 
2021-01-15 05:10:23

121さんへ
とても素敵なストーリーだと思います。
朝ドラより良いかも?
できれば、続きが読みたいです。

125
芳根杏子
ID: abAnshKKro 
2021-01-15 09:51:35

by星★さんへ
けっこう面白いです。
京都編で、続きが読みたいです。
ホンモノ朝ドラは、今回は違和感が多いので、脚本を作り直してください。(笑)

126
■ご厚意に感謝 by星★
ID: ju4udOu.sJ 
2021-01-15 13:06:42

 「横浜流れ星」様、「夏菜子」様、「124」様、「芳根杏子」様
   好意的ご意見有難うございます。自分の文章というのはなかなか自分で客観的にわからないので、ご意見を聞くとホッとしますし、過分なご厚意だと思っています。
   さて、この異聞も後、2話くらいは書こうと思っています。「女優になります」迄は、何とかアレンジして物語になりそうなのでそこまでは、という思いです。うまく描ければ良いのですが。
  (ただ、今週の「楽しい冒険つづけよう」の舞台練習や劇中劇、そして、今日から始まった映画撮影所のところは、アレンジしようがないという感じです)

127
■幽霊 by星★
ID: ju4udOu.sJ 
2021-01-15 14:18:15

 「こんなドラマあったら・・」ということで「女流スターシナリオライターの栄光と没落物語」のドラマなどどうだろう?と思う。
 ドラマがヒットすれば、映画化、関連商品などのうま味がある。そこで、スターシナリオライターを意図的に作り上げ、実際は、複数人のゴーストライター集団(「幽霊」)がいる。ストーリーの骨子は、プロデューサーとゴーストライターが組んだ成り上がり物語。けど(まあ、定番だけど)成功目前で、ゴーストライターとの気持ちのほころび、恋愛感情から破綻する、という話。
 脚本家は裏方感があるので「女流」とし、今風感を出すなら、アニメの世界が良いかもしれないし、恋愛要素をいれると(アニメ世界としつつも)大人のドラマになりうると思う。それに、ゴーストライターは色々おられるだろうから、リアル感も出しやすいと思う。
 今まで脚本家の物語って余り記憶がないように思っていたら、今日、TVを見ていると「シナリオライタ」の新番組が始まるみたいでびっくり。ただ、
それは家庭を中心にしたドラマのようだし内容はカブらないと思う。

128
名前無し
ID: 6VU37eCXHe 
2021-01-15 16:25:10

by星★さん、発想が柔軟で素晴らしいし、文章も上手いと思います。

129
夏菜子
ID: abAnshKKro 
2021-01-15 22:40:36

by星さんへ
私の理想の千代は、だんだんと階段を上っていくように、女優としての評価を上げていき、最後に有名女優になることです。
でも、モデルの人がいるから…そうもいかないんでしょうね?

130
■おちょやん異聞6 by星★
ID: fFeFhOyJNx 
2021-01-18 00:52:14

■おちょやん異聞6   ~京都カフェ就職編~
 街にはそれぞれの体温がある。日本でも世界の都市でも。そうして、街の一日の体温も街なりの変化がある。京都という体温が温まるのは、大阪に比べやや遅いように千代は思った。だから、翌朝、千代は長い間寝床で目覚めていたが、真理はスヤスヤと眠っている。その寝息が無ければ、千代は暗い京都に飛び出していたかもしれない。二人はそろって街に出、午前中は就職の何の収穫もなかった。二人は公園で腰掛けておにぎりを食べた。まるで遠足のようで「普通の喜び」がうれしい。子供のように手首に巻き付けていた輪ゴムで千代は指鉄砲を作った。千代は、ベンチの傍らの花壇で遊んでいる男の子に、こっち!と声をかけた。振り向いた子供は狙われているのに気付いて面白がって大げな素振りで花影に隠れた。輪ゴムは花に当たって赤い花粉が散り、二人は大笑いした。昔のしあわせたに戻りたい時、千代は子供っぽい行動をするのが常だった。
 真理は、千代の袖を引っ張った。千代はこんな真理の穏やかな仕草がとてもいとおしい。・・・巾着からチラシを取り出した。「昨日立ち寄ったカフェにあったの。これ」と恥ずかしそうに言う。
「俳優カフェ、女給急募」と書いてある。昨日からずっとこのチラシを胸に秘めたまま、何も言わず千代の行動にあわせてくれていたのだろう。「ねえ、行って見ない?」といったのは千代の方である。刷り込まれた地図をみるとすぐ近くである。千代が迷わず自分から言いだしたことが、真理は嬉しかった。

 知らない場所では、人も土地もよそよそしく見えるものだ。京都の街並みがよそよそしいのはそのせいだと思う。そして、人恋しさのせいか、知った顔が雑踏に混じっている気がしばしばする。公園を出た所で、不思議な事に向かいの道路の角に「栗子」を見た。千代は驚いて駆け寄ったが、すぐに街角で見失った。しばらくして、きっと人違いだったのだろうと思った。
 
 京都の街並みは四角い方眼紙の上に大小のマッチ箱を並べたようだ。夜にはそのマッチの様な小さなアカリが灯るのかしら、と千代は京都っぽいなと思った。道頓堀は空も川も川面も街並みも光が溢れんばかりだった。さて、区画の隙間の路地に階段があり、そこを降りると四角い大きな空間であり、その一片にカフェはあった。「ここよね。ここだわ、きっと」瀟洒な文字で「俳優カフェ」と描いてある。改めて上を見上げると、四角い井戸の底から空をうかがうように四角い青空が見える。いつも丸天井の空だがここの空は四角なのである。
 カフェの中に入るとグランドピアノ、ロダンの彫像、モネの睡蓮のレプリカ、そして、活動写真の監督と女優の写真が壁いっぱいに張ってある。その部屋の中央で、メガホンと露出計を首からつるした男が欠伸をして据わっている。このカフェは、親の所有する西洋建築をカフェに模様替えしたものである。親が映画会社の大株主で、この男はいわゆる「高等遊民」で、それなのに親の七光りを嫌っていた。
 このカフェは給与は雀の涙だが二人用の部屋があり、そこをタダで使って良いという。実は「俳優カフェ」という名前から千代は最初っから、真理の為にここに決めるつもりだった。夕方になれば、他の女給のみんなも集まってくるから、荷物があるなら今のうちに持っておいで、と監督は言う。カフェを出た時、階段の下から空を見上げると、気の早い星が四角い空に輝きだしている。階段を上がりきると、夕刻の空の下には沈殿するような紫色の夕焼けが滲みだしていた。
 千代は公園の傍らを通った時、昼間の男の子を探してみた。「随分とお気に入りの男の子だったのね、いいわね」と真理がいう。千代も、そうなのかなあ、と何故気になるのか、自分でもわからず他人事のような返事をした。
 「あ、忘れた。ハンカチ」と真理は言う、ちょっと待っててね、と真理はカフェに走っていった。

 紫の夕焼けが足元から滲んできて自分の体に濃い紫色の夜が染み込んでくるようだった、眠気が液体の様に体を浸してくる・・・。千代は公園のベンチに座ると、疲れが出てうたたねをした。そうすると昼間の男の子がベンチの横から頬にキスしてくれる一秒間の夢を見た。この夢は千代をたいそう幸せにしたが、千代は実はまだ誰からもキスされたことがなかった、頬にすら。
 千代、千代、と姉のように心配する真理の声で目が覚めた。そんなところで寝て風邪ひくわ、と言われ、千代は妹のように、ウン、と返事をした。真理と居て少しづつ素直になる自分が嬉しかった。
 さて、荷物をもってカフェに取って返し、部屋に入ると、小さなお婆さんが部屋の掃除をしていた。支給された制服を着て、何もかもが新しく、この不思議なカフェの一員になったのだと思った。

    <面白ければ、幸いですが・・ by星★>

131
芳根杏子
ID: dWx2XpckGy 
2021-01-18 08:42:42

おちょやん異聞6 by星★さんへ

すごい!すごい!
普通の小説読んでいる感じ。
素敵です。楽しませてもらいました。
次があったらもっと読みたいです。

132
名前無し
ID: Q6HgLR5Tzr 
2021-01-18 16:36:18

by星★さん
おちょやん異聞6、メチャ面白かった。
続きが読みたーい。

133
■後、2話程度は・・ by星★
ID: fFeFhOyJNx 
2021-01-18 17:53:13

 芳根杏子様、「132」様
   本当にありがとうございます。投稿する時は、うまく描けているかどうかで、UPした翌日の午前中半日ぐらいは心配しているので、・・・今は、ああ、よかった、状態です。
   以前書きましたとおり、「女優になります」迄は、何とかアレンジできる話なので、それに該当する分として、後、2話程度は投稿できると思います(伏線も回収する必要があるので)。
   これも楽しんでいただければ嬉しいです。

134
夏菜子
ID: dWx2XpckGy 
2021-01-18 23:02:23

by星さん
次回作品も楽しみにしています。

135
名前無し
ID: szHPBoR/pD 
2021-01-19 00:30:20

綾瀬はるかさんと高橋一生さんのラブコメを
日テレノリのドラマで観たいです。

136
名前無し
ID: 6Hh6YkDMpI 
2021-01-20 01:11:27

日テレで観たい😊

137
■おちょやん異聞7 by星★
ID: P3UxOtmlk. 
2021-01-20 17:19:03

■おちょやん異聞7   ~女優宣言編~ 
 新しいサーカスが始まると、それまでの不安が夢のようにかき消える。物事が、「平穏」に始まるように見える。誰も傷つかない様に見える。しかし、ロープが切れるかもしれず、猛獣は暴れ出すかもしれないのだ。
 夕方の営業開始の時間まで千代と真理は不安だった。自己紹介の時に現れた女給達は美しい子ばかり。ただ、真理の美しさは別格だった。しかし、その美しさは、は女優志願の少女たちに賛美より嫉妬心を起こしてしまった。
 「女優」意識の強い若崎洋子が、真理の自己紹介の時、真理のナマリを軽蔑した目くばせし、小さな風の様な笑い声が起こった。真理の唇は美しいが美しい言葉の為には作られていない、と言わんばかりに。笑い声は、千代のいら立った咳払いで収まったが、真理の小さな「ごめんなさい」という言葉は、唇の上で震えていた。
 情の強(こわ)い自分はともかく、傷付いた真理の心を思うと腹立たしかった。そうして、その夜、真理に、自分も真理と同じように女優になりたいと急に言いだしたのである。
 この決心には、舞台好きも高城百合子も関係無かった。
 夜、千代がそう宣言した時、真理は小さな声で「何故?女優?どうして今そんな事を言うの?」と聞いたが、千代は自分も大阪で芝居に憧れていたのと、ありきたりの説明をし、本当はあの嘲笑の為だとは言えなかった。
 真理を守りたいという本音を言うのは、何故か恥ずかしく口ごもった。人は、純粋に思えば思う程、それの心を隠そうとする。人の心は、純情というガラス細工用には作られていないからかもしれない。貧乏だった引け目が千代をなおさら臆病にするのかもしれない。
 ただ、ふと、・・真理が、私の言葉って本当に・・・と呟くと、千代は怒りが込み上げてきた。・・真理、あなたの言葉って、今まで真理が生きてきた証じゃない、と怒った。恥ずかしいなんて!それでいいの?千代は恐らく自分も、なけなしのプライドをも持って生きてきたことを思いだしているのだ。・・・ね、だから、そんなこと言わないで頂戴、嫌なら一緒にここを出よう。そして一緒に女優になろう。今までの真理でいて欲しいの。そうでないと、もう私、貴方と口をききたくない、と、大人しい姉に焦(じ)れる妹のようである。姉思いの駄々をこねる妹のようなものでもある。
 千代が口をきいてくれないのは・・困る・・・私、とっても困ると哀しそうな顔で呟いた。
 じゃあ、一緒に、悲しんでくれる?当然よ。一緒に、笑ってくれるの?すると、千代は無理に笑う顔を作ろうとした、すると、真理も涙目のまま無理に笑おうとした。二人はお互いのその変な顔が可笑しくてクスクスと笑い出した。二人の部屋には勝手に住み込んだ猫がいたが、その猫も二人の顔を見て、いつものようにじゃれついてきた。
 千代は、以前から愛されることが遅いと思っていたし、今も思っている。ただ、そうこうする内に、こうして、真理の愛が静かに自分の中に根付いてゆくのをまだ知らないでいる。

 ・・・こんな経緯から、女優希望のことは他の女給たちには話さなかったが、後日、監督にはよもやま話のついでに話した。すると、こんど劇団を推薦するよ、と冗談のようなことを言ったが、千代は余り当てにしていなかった。

 嫉妬する女達を除けば、真理は誰にも好かれた。それは千代の好かれ方と違った。千代は人が何を考えているか考えて気を遣う、それで好かれる。ただ、時々それが自分でたまらなく嫌になる。それは貧乏が育んだ自己防衛だと思えたから。けど、真理はそのままで好かれるのである。真理はここの家政婦にも好かれ、にこにことその話を聞いたり喋ったりしている。三田という小柄で少し派手な化粧をしている年配の女性で、真理ちゃん、しっかりしないとダメよ、と言われても、ニコニコして、はいと答える。会って日も浅いのに、もう親し気に部屋で談笑している。

 この日ごろ、京都に来ての出来事は、道頓堀と違う、今までの「子供の領分」を抜け出した何か違うものが始まった様な気がした。千代は「大人」という言い方は嫌ったが・・・それは娘、そして、女としての領域なのかもしれない。なお言えば、・・これは埒(らち)もない言い方だが、それは女優というサーカスなのかもしれない。
 そんな時、ふと、先日の公園での姉弟のようなじゃれあいを、今日の事のように思い出していた。ある夜、千代の夢に公園の男の子が出てきたのである。
・・おねえちゃん、「今、思い出さなくて良いよ」という。よく見ると、その顔は弟のヨシヲに変わって、周りはヨシヲとよく遊んだ竹林になっている。ヨシヲ!と千代は叫ぶ。するとヨシヲは言うのだ。
「来ないでお姉ちゃん、僕、お姉ちゃんの悲しい顔を近くで見たくないんだ、僕の事思い出すといつも寂しいんでしょう?」と悲しい声がヨシヲを包んでいた。だって、今のつらい経験より、つらい思い出の方がやり切れないみたいみたいだ。
お姉ちゃんって泣き虫だから。だから、もうしばらく思い出さないでいいんだ、って思って欲しいの。いつかきっと会えるから。その時はまた公園の時のように遊んでね、といって手を振って小さくなって消えてしまった。翌朝、千代は夢の事を何も覚えていない。頬のあの個所に少し泣いた後があるような気がしたが、理由は思い出さないほうが良いのだと、何故かそんな気がした。

 < ちょっと長いかな・・・。  ~おちょやん異聞8へ続く~ >

138
夏菜子
ID: esogLOv0r4 
2021-01-20 18:34:44

by星★さん
決して長くはないです。
一気に読みほすには、ちょうどよい長さだと思います。

情景が頭の中で思い浮かべれます。
杉咲花が出てきますよ😊

139
名前無し
ID: gPrP64sReJ 
2021-01-20 22:21:09

■おちょやん異聞7 by星★様

面白いです。
立派な小説になってますよ。自信持ってください。
続き期待してます。

140
名前無し
ID: p93OubbZDC 
2021-01-20 23:11:05

ドラマからインスパイアされた小説を書くスレを立ち上げられたらいかがでしょう?
決して嫌みでいっているわけではありません。

141
名前無し
ID: NkxHfw0PZx 
2021-01-21 05:55:24

自分で、思い通りの朝ドラ作るって、素敵なことだと思います。

142
名前無し
ID: VSNqQclLh3 
2021-01-21 06:47:42

あと一話で、本当に終わってください。

143
芳根杏子
ID: yZRMH7Zelh 
2021-01-21 09:17:51

by星★様
すごくよくできたストーリーだと思います。
真理さんの活躍も楽しみですね。

144
■ただいま作成中 by星★
ID: UumK2Y6IRF 
2021-01-22 15:36:22

 皆さま、「おちょやん異聞」いつも色々とご意見ありがとうございます。「余り面白くないかな」という回にも親切にご意見を寄せて頂き恐縮しています。最終部分を作成中ですが、長くなってしまって、削ったり修正したり、雑文とは言え、私なりに納得した上でと思うとついつい・・
 さて「140」さんの「スレを立ち上げられたらいかがでしょう?」のご意見ありがとうございます。正論かと存じますし、ご配慮の滲む表現に、感謝しております。
  私も色々考えながら進行し、その中で今回のような形を取りましたが、心苦しいとも感じています(立ち上げても、最後まで継続するには困難が大きいかも、等々の心配も)。
  他方、当「こんなドラマ・・・」も、せっかくの良い発想なのに、自分の思いだけで投稿が単発になり勝ちかもと思い、なら、色々なバリエーションがあった方が、にぎやかにもなりお茶の間らしい面白さも生まれるのではないかと、まあ、これは、自分に都合の良い考えで納得しているというところなのですが、そう恐縮しながら投稿しているというところで、ご了解いただければ嬉しく思います。

145
名前無し
ID: y1Bf3op7Q. 
2021-01-22 16:12:17

by星★さん、楽しみに待ってまーす
頑張って下さい!

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146
140
ID: I7/SyM/y0b 
2021-01-22 18:40:48

星★ 様
140です。
私の書き込みにご返答有り難うございました。
星★さんのお考え、よくわかりました。

147
■おちょやん異聞8 by星★
ID: 5cK4IIND6o 
2021-01-25 00:03:01

■おちょやん異聞8     ~女優決意編~  
 千代の人生はやっと海原に出た小舟のようだ、曲がりくねった細い川からの船の航路はやっと海原に通じ、爽やな声を上げる鳥が寄り添う。鳥達は羽の風切りを振るわせて飛び盛っている。千代は鳥の心を感じ幸福だと思う、そんな日々である。
  ある日、千代ちゃん、と真理は言う。私の荷物、触ってない?え、触ってないけど。何が見当たらないの?私と母の写真。それなら置き忘れよ。お金は大丈夫なんでしょう?お金はね、・・増えてる気がする。お財布に入れていた写真がなくなって、お金が増えてる気がする。え?しっかりしてよ真理ちゃん。そういって、余りにとりとめもない話に二人供、屈託なく笑い出した。
 「俳優カフェ」には、「監督」の親の七光りで映画関係者もやってきたが、怪しげな人間も多い。のんびり屋の真理にスカウトが二人連れでやってきた。真理を主演に映画を撮ろうというのだ、真理は確かに美しかったが、余りに都会慣れしていないおっとりさに話が進まなかったのか、沙汰止みになったのだろう、すぐに来なくなった。
 直後、刑事達がやってきた。実は、刑事たちは、真理をスカウトに来た二人を詐欺師で追っているといい、最近何か無くなったものがないか、と千代と真理に聴いた。・・実は、私の写真が・・とピントの外れたことを真理が言うのを、千代は呆れながら見ていた。
 とこうする裡に、千代は、急に、監督から推薦され女優の面接を受けることになった。活動写真でなく舞台である。義理半分、興味半分というのが本音で、ただ、人生の可能性を試したかった。
 鮮やかな雨後の晴れの日に山村千鳥一座の座員面接日である。新京極の劇場に出かけると、雑踏は、まめまめしく人が行きかい無害な声で溢れている。

 さて、面接の場に現れた千鳥は、あの日、街角で会った、「栗子」だった。最初、驚いたが、真近に相対峙すると別人とわかるのだが、蜃気楼の様な逃げ水の不思議がある。どこかに蜃気楼の反映の元になる事実がある筈だが、それがどこからの乱反射かわからない・・・。
 そう思う間もなく、面接での、千鳥の言葉遣いの傲慢さ、ヒステリックさに驚いた。面接の後は舞台に立ってセリフを読むのだが、紙を渡し「さっさとお読みなさい」「やるの、やらないの」と舞扇を膝に打って乱暴な言いざまである。
 千代は、あきれて、少しからかってみたくなった。それで、セリフを抑揚なく素人そのままに棒読みした。すると「酷すぎる」と聞えよがしな傲慢な声が聞こえた。その傲慢さは、また「栗子」を連想させた。・・さて、面接はそれで終わり、千代はあっけにとられたが、帰って、監督に採用はされないだろうと報告した。
 
 虫は幼虫である間、日常はあっても運命と呼べるものはないだろう。だがある日、我知らず蝶に形を変える時になって、運命を感じ、そうしてあの葉をそしゃくした日常も運命の一部だったと知るのかもしれない。
 面接からニ三日すると、放物線が弧を描いて地に落ちるように、ある考えが千代に落ちてきた。あの栗子と千鳥を「似ている」と感じた事についてである。それは、あの二人が、かって美しく「憧れられた」女達で、しかし今は、その「美」は衰え「憧れられる事も無」い、という事である、その投げやりな退廃、倦怠、そして傲慢さ、そんな雰囲気が「似ている」と千代は感じたのだ。ただ、その「衰え」に、千鳥は芸にしがみつき、怒鳴り、他方、栗子はしがみつくものすら失く、人や運命におもねり、テルヲの様なろくでなしと暮らしを選択したのだろう。
 「千鳥」と言う反面教師に会い「栗子」への嫌悪を思い起こし、千代はこの二人のように敗北したくないと思った。今まで自分を翻弄したした過酷なもの、自分がずっと「運命」と呼ぶことを恐れていたものを、今「運命」と呼び、それに勝ちたい、と思う。その運命の新たな顔が真理の前で宣言した「女優」というものだと思った。ただ、「女優」になるにしてもヒステリックな千鳥にも、家庭を不幸にした栗子の様にもなりたくない、とも思う。自分は、運命に勝って、失った「家族の寄り添う団欒」を取り戻したい。そうして、後日、劇団に加わる時、千代は「茶の間に親しまれる」女優、お母ちゃんのように月の様な優しく美しい女優になりたい、と思う様になったのである。

 しかし、そんな意識的な考えとは別に、千代が女優になりたいと思うのには、無意識で単純で、もっと強烈な「もう一つの理由」があった。・・俳優への希望が千代にのしかかってくると、一平の顔が思い浮かぶのである。千代は一平のあのいつもの、意地の悪い言い方を思い出した。一平も今頃、自分を思っているだろうか、あれから一平は自分のことを何度思い出してくれたろう?自分の女優になりたい、という気持ちを聞いたら、どんなに意地の悪いことを言うのだろう。ああ、そんな言葉でも良いから聞いてみたい・・。
 そうして、女優になりたい、という希求の根っこにある一平の影に、千代は、自分自身、気づかないふりをした。・・・ただ、そんな日の夢で千代は一平に再会し、幸福な少女になった。

 そういう日頃を過ごしながら、千鳥の採用試験は不合格に決まっているが、惜しいことをしたかもしれないと思いだしていた。

148
■おちょやん異聞9 by星★
ID: 5cK4IIND6o 
2021-01-25 00:11:07

■おちょやん異聞9     ~千代と真理~
 ある日、千代が朝食を取っていると、山村千鳥一座に合格した、と、監督が小鉢の花に小さなジョロで水をやりながら新聞を読むような声で千代に告げた。
 あんな面接で?そう思ったが、概して試験の結果は、本人の思惑とは別の結果になるものかもしれない。さっそく出かけてゆくと、劇団員は気の毒そうに色々と劇団のこまごまとしたことを話してくれた。まあ、テイの良い雑用係である。千代は大阪で多くの芸人を見てきた。弟子入りはそういうもんだと思っている。かえって気が軽くなった。

 そうして、千代がカフェに帰ってきた時、そこに刑事が来ており、真理から一緒に警察に来て欲しいと言われ、驚いた。刑事の話はこうである。
 二人のスカウトが詐欺師だった事は述べたとおりだが、そこには別の首謀者がいた。それは意外にも、二人の部屋の掃除をしたり、真理と楽しく話をしていた家政婦のあの年老いた三田である。
 父が嫌で家出した時に、秘密で母がまとまったお金を真理に渡していた。それに気づいた三田は、あたしが探りをいれ、それから手引きしてあげると、子分二人に言ったそうである。ただ、その後、三田は、色々と口実をつけグズグズし、挙句、二人の前から姿を消した。二人は三田が金を持ち逃げしたと思い、京都から逃げるように列車で出ようとした三田を見つけ、持ち逃げしたものを要求した。ただ、三田は真理の写真しか持っていなかった。どこに隠した?とケンカ口論になった所を、警察に通報され、京都駅近くの警察で取り調べを受けていたのである。

 三田は心変わりしたのだ。それについて、最初、何もしゃべろうとしなかったが、やっと話したことは、真理の荷物を探っている内に、母親と真理の一緒に映った写真を見て、その子供の頃の真理の服の柄が、死んだ子の為に自分が選んだ服の柄と同じだったったらしい。・・・若いころ火事で夫と子供を失くし、その後は、世間に背を向け、恨み、その悲しみに耐えられず、気を紛らす事、お金になる事なら何でも良いと思うようになっていた。ただ、写真を見た時、その愛した子供の服の記憶がすべてを引き戻た。三田は、服の感触を知りたくて写真の上を指でなぞってもみた。そうして、ただの、悲しい母親に戻ったのである。私の、子供、私のアカリ・・アカリとは娘の名前だそうだが・・そう言ってまた黙り込んだそうである。ただ、真理の財布に少しだけお金をしのばせたことは刑事たちには決して話さなかった。内緒で子供にお小遣いをあげる優しい母になりたかったのかもしれない。

 警察の殺風景な建物の入り口には、やけに長い廊下があり、その窓際に小鉢があり赤い花が咲いている。その花の名前は不明だが、一年草、の何かだと思われる。一年草とは、一年の内に、芽を吹き、花をつけ、実を結び、しぼみ、短い命を足早に過ごしてしまう。・・・花を見つめ、誰からも聞かれてもないのに、真理は答えるような口調で言った。
 ただね、花粉はどこかに運ばれているんだって。そこでまた、次の年に知らない場所で花を咲かせるのね・・。この前、監督がそう言っていた。監督は、以前、花の様子をフィルムにした事がある。

 千代と真理が来たのを知って、三田はふて腐れた顔をした。人は心の動揺を隠す時に、よくそんな顔をする。よく見ると、化粧をしていないと、タダの小さな老いた女だった。目の縁が少し紅いのがのぞき見られ、千代はそれは涙の跡と思った。その涙が、この不幸な女の目から流れた赤い花粉の様な気がした。しばらくして、真理は、母の写真を返して欲しくて、お母さん、お母さんの・・、とつぶやいた。
 すると三田の下を向いた顔が急に突っ伏して声を出して肩を震わせて泣きだした。真理は「私と話す時も、いつもそんな悲しい思いをこらえていたの・・」と呟き、悲しくて切なげな顔で近づき、その母の肩を抱いて、二人して泣きじゃくった。

 千代と真理は、それぞれの形で傷つきながら、滞(なず)みながら、また笑顔になりながら、女優を目指してゆくのである。
  <「女優になります」:完>

149
名前無し
ID: 0tY75XjKAX 
2021-01-25 05:59:16

147■おちょやん異聞8 by星★さん
148■おちょやん異聞9 by星★さん

すごい!おもしろくて、一気読みしました。
「おちょやん」に似てるけど…ちょっと、そこに違うものを感じました。
物語が終わってしまったのが、もったいないような感じがします。

150
芳根杏子
ID: tDMwTOTfPJ 
2021-01-25 08:37:00

by星★さん
素晴らしいですね!
読んでいてワクワクします。
できれば、まだ続けてほしいです。

151
名前無し
ID: jyzFdmXBC2 
2021-01-25 21:07:06

by星さん
人物の細かい描写もあり、素晴らしいと思いますよ。
「おちょやん」が土台となっていますが、立派な小説になっていると思います。

152
■感謝とお礼と by星★
ID: 2Eioyn.zKO 
2021-01-26 23:24:09

 「149」様、「芳根杏子」様、「151」様
 どうも「おちょやん異聞」に声を寄せて頂いて有難うございます。結局は、私的な趣味の文章と思いつつも、「おもしろくて」「読んでいてワクワク」「人物の細かい描写」等、書いていただくと、言葉半分としてもとても嬉しいです。
 一旦、気持ちとしては終わりにしたのですが、さて、困ったことに、(特に真理の話が)フンギリがつかず、書き切れなかった感が残ってしまいました。もし、それが形になるなら、どの程度の物語かはわかりませんが、また投稿するかもしれない、出来ないかもしれない、という気持ちです(-_-;)。・・・少し朝礼暮改的曖昧さで恥ずかしいのですが、
 (以前書いた様に、今の朝ドラの「山村千鳥一座の舞台」「活動写真の撮影エピ」等の展開はアレンジしようがないという気持ちはそのままなのですが・・・)
 また、そんな「おちょやん異聞」的なものとはガラリと変えて別に「こんなドラマあったらいいな」を投稿できれば面白いかな、とも考えています。

153
夏菜子
ID: tovb8aO7H4 
2021-01-26 23:28:20

by星★さん
また、楽しい投稿お待ちしています。

154
■右京さんは取扱い注意by星★
ID: 8uTaqDWtbz 
2021-02-08 02:19:37

 「相棒」と「奥さまは取り扱い注意」コラボ企画。(私は、「相棒」も「奥様は・・」も真面目な視聴者ではないが、以前、時々、「相棒」を見ると面白かったのに、最近の相棒は可なりマンネリで残念に思う。ならば、コメディ風ドラマとのコラボが「こんなドラマあったら・・」面白いのではというのが考えの趣旨。
 ただ、考えていると、以下のような物語が思い浮かんだ。下らない悪乗りだが、思いついたら書き留めたくなる。時間のある方のみ「ご笑読」いただければ幸いですが(>_<)・・・。

CAST 杉下右京(水谷豊)、冠城亘(反町隆史)、日野警部補:スナイパー(寺島進)。
    伊佐山菜美(綾瀬はるか)、伊佐山勇輝(西島秀俊)

 1)右京撃たれる 右京は、ビルの屋上で狙撃され重傷を負う。集中治療室。一命は
         とりとめたものの、予断を許さない状況。面会謝絶。
 2)日野警部補  が、特命係の部屋で冠城(カブラギ)に会う、これは、何かの
         警告で、現場の正面のビルから狙撃されたのでは、と言う。
 3)謎の女登場  冠城は、そのビルを調査。そこに主婦が来る(伊佐山菜美)。
         その物腰、目つきからただの主婦ではない。
 4)公安の夫婦  冠城は悟られないように写真を撮った。それの写真を見て
         日野は黙込む。翌日、日野から連絡、あれは公安警察官の妻との事
 5)二重スパイ  冠城と日野は公安に行き状況を説明。伊佐山は取り調べられる。
         以前から、妻が二重スパイではないか、という疑惑があった。
 6)黙込む伊佐山 黙り込む伊佐山。けど、伊佐山勇輝は、どうしても妻の潔白
         を証明しきれない(いつもの夫婦喧嘩が始まる)。
 7)冠城と伊佐山 が菜美の後を追う。冠城と伊佐山は隠れている。某国スパイ団の前で、
         菜美「私が右京を撃った」と公言。聞いて苦悩する伊佐山。 
 8)妻を愛している伊佐山 は、確認の為、再度、冠城と一緒に妻の後を追う。
 9)ビルで囚われる二人。 菜美が入った部屋の廊下で隠れていると、鉄の格子で囲まれ
             二人は取らえられる。
 10)菜美が言う 「さ、これでご希望の警視庁と公安もそろったわ。」。すると
        某国のボスが姿を現し「君も良い芝居だった」と菜美加え三人捕らえられる。
        すると急に右京が現れ、「集中治療室から駆け付けました」と、
        右手でピストルの形を作りボスを狙う。ボスは足をおさえ倒れた。
 大団円)SAT隊員 が一斉にあらわれる。伊佐山夫妻も大活劇で、結局、某国スパイ
         たちは一網打尽。ボスの足を窓を通して撃った日野警部補も登場。

 元々、右京が狙撃されたのは、日野と組んだ芝居だった。右京は最近、不穏な雰囲気を感じ、日野に相談。右京がオトリになってスパイを誘い出す事にする。
 右京が撃たれればスパイ団が表れると思った訳だが、狙撃事件を聞きつけ不審に思った伊佐山菜美が現れた。右京は集中治療室でのんびりしていたが、菜美の事を日野から聞き、
 接触してみると、菜美「スパイではない、ただ組織の当てがある」という。菜美、右京、日野がチームを組む。菜美が狙撃したと嘘を言いスパイに接近。
 併せて「公安と警視庁の人質」をエサにする。
 SATを配備し、窓の外からは日野が室内を狙う中、スパイ団に接触し、何も知らない冠城と伊佐山をオトリに仕立て上げた。そうして、スパイ団トップが姿を現した。
 菜美が捕まったのは計算外だったが、隠れていた右京が姿を現し、日野にサインをおくる。同時にSATも乱入。ボスを含めスパイ団は捕まった。
 冠城は右京に文句を言おうと思ったが、そこで伊佐山夫婦の夫婦喧嘩が始まったので、二人でいさかいをやめて逃げるように帰って行った。私には夫婦は謎ですね、と言って。

155
■おちょやん異聞10 by星★
ID: 8uTaqDWtbz 
2021-02-08 02:26:16

■おちょやん異聞10    ~宇野真理のこと1(憧憬)~
 宇野真理と竹井千代は二人で眠る時に一日のことを語る。京都に来てからのこの習慣は大部屋の道頓堀でもなかったことで、千代にはとても素敵に思われた。
 その眠気にまどろみ、やがて二人は寝入ってしまう。その後、道頓堀に帰って、千代は眠りに入る時間が来ると、隣に真理が居ないのを寂しがりながら真理の事を思い出した。
             
 真理は子供の頃、二つの世界に住んでいた。地球儀に似た心の世界、天球技に似た外の世界。海も山も、太陽も星座も、天文学的関数に自分の感情を代入して回転している。
 子供の真理は、父と母の間で手をつなぎ両親に顔を向ける。すると体は浮遊し、宙に浮いたり足先が地に着いたり、その曖昧な浮力の感覚が好きだった。少し大きくなって遊園地でブランコをこぐ時、体が地球の表面で弧を描いて上下する浮力で足を延ばせば、天球技の内側の空気を蹴上げるようだ。
 自分の体の軌跡が地球儀や天球技の弧の一部に触れるようなその「至福」は、真理のふんわりとした「のんびり屋」の感覚に反映しているかもしれない。両親の掌に篭絡(ろうらく)される浮遊感の幸せが、ずっと掌に残っている。
 仲の良い親子で、ちょっと「別れる」時も、両親は真理の目の高さにあわせて膝を折って座り、「ね、ニギニギしよう」と掌を広げたり握ったりした。六つの掌がニギニギし「バイバイ」するのである。
 父が事故で死んだのは四歳の終わりの時だった。だから、四歳と五歳で真理の記憶にはぎごちない断層がある。真理が五歳の時、母が再婚した。
 経済的な理由からだったが、これは母に真理への後ろめたさを抱かせた。逆に、娘は自分の存在で母が肩身の狭い思いをしていないかと気遣った。
二人はお互いの心配を知られないように生きていたが、真理は、自分の「何も知らない」ぼんやりとした様子が母を安心させていると信じている。
 
 新しく父となった男は、男の連れ子があった。両親とも連れ子同士だったのである。新しい家庭での、真理の心の隙間を埋めたのは新しい父でなく、この新しい兄である。
 真理はこの背が高くて痩せギスの、初めての兄が大好きで、その後を追って遊びにいった。真理は兄と手をつないで公園に遊びに行くのが好きだった。
 ただこの兄は微笑みながらも時々煩わしく冷たい表情で真理と母を見る時がある。この家庭には二つの領域があった。男同士、女同士。あたかも動物園と植物園のように別の生き物の世界が。
 この頃、真理は自分の好きな事ばかりを考えていた。。私お兄ちゃんのお嫁さんになる。そう言って、真理は兄に結婚を申し込む手紙を書いた。
 イイナズケという言葉をどこからか仕入れてきて、兄のイイナズケだと嬉しそうに言った。

 お祭りの夜店での話である。真理は小さなかわいいヒヨコを買ってもらった。家で鳥かごにヒヨコを入れて飼っていると、兄はそれはカナリアだと真理に教えた。
 ヒヨコは大きくなって、外で放し飼いになり、爬虫類のような不気味な目で周りを睥睨(へいげい)した。真理は長い間、それをカナリアだと思っていた。
 この兄は、嘘をつくのが好きだとやがて母は気づいた。人が自分の嘘を信じ、真実と嘘のほころびで、とまどう姿を見るのが好きなのである。
 真理の兄への行為は、本当の心だったのだろうか?それは兄が何も知らない真理に吹き込んだニセの花のように感じる、「結婚」も「イイナズケ」も。
 小さい女の子は約束をすることが嬉しかった。しかし、この兄は約束を破ることに優越感を覚え嬉しいのだ。

 親戚が真理ちゃんはお兄ちゃんと結婚するの?と戯れに聞いたことがある。真理は嬉しそうな顔をしたが、兄は不満そうに、結婚?兄妹で結婚できるわけがない、と冷たく言った。
 真理は「何故?」という冷たい感覚が体じゅうを襲ったのを覚えている。それが兄の温度だった。自分が冷たい嘘の歯車に組み込まれているように感じた。

 この時以来、真理は、優しく嘘をつかないイイナズケが欲しいと思った。

156
■おちょやん異聞11 by星★
ID: X0IJ9X9TwU 
2021-02-10 00:32:51

■おちょやん異聞11     ~宇野真理のこと2(出会い)~
 思いもよらない折折に、この子は嘘をついているのだろうかと母は思う。真理の事である。
 家庭での男たちの言葉は最初だけまばゆく思えても、やがて軽薄に人を傷つける。傷つけられても真理はもう「何故?」と心の中で呟かない。ただ、体のどこかはその傷の痛みを覚えている。ちょうど、手折られた花の痛みのように。そうして、手折られ花は花瓶で質素に輝き笑顔で人を慰める。その笑顔は嘘と言い切れるのかとも母は思う。それは一時、母を慰さめ、やがて母は切なくなる。・・そういえば母は、再婚以降、真理の泣いたところを見たことがないのに気付いた。
 兄は真理を子ども扱いし相変わらず嘘をつき、真理がもう騙されなくなったのがわかると、真理は素直じゃなくなった、と言うのだった。

 といって、真理は暗い少女ではなく、むしろ明るく利発で、そして性格が穏やか過ぎるのは相変わらずだった。真理のあだ名はアントワネットだったが、歴史の時間にマリーアントワネットという王妃の少し現実感の乏しいエピソードが紹介された時からである。同時に真理の目鼻立ちが日本人離れして整っていたのも原因して、大人びて見えた。よく男からも女からさえも好きだと言われたが、真理はどうして良いかわからず、「おっとり」と微笑んだ。・・・後年、京都で「おちょやん」の竹井千代が好きにならずにいられなかった微笑である。

 子供が活動写真に行くのは父兄同伴が原則だった。稀に学校から指定された映画なら複数の子供達で行くことは許された。教育的、子供用娯楽映画である。
 真理に好意を寄せる男の子が、他の子も来るからと映画に誘った。駅前に食堂街があり、映画館があった。雑踏には人さらいがいそうな気がしたが普通の商店街である。暗い映画館の館内は冒険談のようだった。男の子は真理の隣に座ったが、何も言いだせず、帰りには他の子と遊んでいた。真理は活動写真に夢中になった。
その時にもらった広告チラシの女優に憧れた。自分が「夢」を持つことは似合わないと思い込んでいたので、この「夢」は後ろめたかった。一緒に映画に行った中の、ヒデオという年長の男の子が真理を好きになった。彼の初恋だった。彼は声をかけたいと思ったが、急に弱気になってしまう。ただ、恋心は腹ばいになった夏の砂浜のように少年の胸を焼いた。

 学校の帰り道、ヒデオの心は転覆した船のように彷徨っている様だ。
 声をかけたのは真理である。真理は人の顔の覚えが良く、活動写真館の記憶が旧知の仲のような錯覚を起こさせたのだ。少し打ち解け、ヒデオは母の自慢をした。私も、と真理も言った。母の事を人に語ったのは初めてでとても嬉しかった。
 やがて、短い道すがらを二人は心待ちにし、少し遠回りするようになり、遠くの地平線が何かの予感を秘めているように感じるようになった。
 ヒデオは、横暴な父への不満を話し、母がかわいそうだとも言った。僕は役立たずなんだ、と小さな声で言う。真理は年上のヒデオを弟の様にいとおしく感じ、守ってあげたい、と思った。 
 二人はお互いの出会いを偶然の奇蹟のようにも、必然の運命の様にも思う様になった。静かな狂おしさ、二人だけの静かな舞踏会・・・。小さな田舎のことで、噂になるのは嫌だったが、新鮮な現実と用心深い空想の敷居がよくわからない。母はどう考えるだろうという事すら真理は思い至らない。

 心が通い始めると、二人の授業の終わる時間の「すれちがい」が真理を苦しめたが、待つという事に真理は大人びた誇りを感じたりもした。当初、思いもしなかった事だがヒデオが学校を卒業する頃には、真理は寂しくてたまらなくなった。
 
 ヒデオが卒業する時期、ほとんどの子が地元で就職するか家の仕事を継ぐのだが、優秀なヒデオは少し遠くの街の工場の事務員として雇われた。富山にはこの頃、いくばくかの工業地帯が広がりつつある。
 真理は離れることを寂しがった。汽車に乗ればすぐ会えるのに。車窓からは果樹園が見える。逢瀬はその果実のように酸っぱく甘かった。
 そうこうして過ごす内に、今度は、真理が卒業する時期になった。卒業祝いは何が良い?というヒデオに真理は真剣な顔をして、イイナズケ、になって欲しいと言ってヒデオを驚かせた。
 その頃には、その言葉の意味することもわかっていた。

157
■奥さまは吸血鬼 by星★
ID: dO54/BaEmQ 
2021-02-13 14:54:42

 以下の雑文は「書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の・・・」のアレンジです。書いた経緯は、私(by星★)が、このドラマのレビューで
(02-07 18:14:56)「奥さんが吸血鬼で、子供たちがゾンビで、この家庭では旦那だけがそれを知らない「人間」で(略)ツルツル君は奥さんに横恋慕する妖怪人間で・・・そんなことを(仮に)考えてしまう」と書いたところ
(02-09 11:00:45)「それ、書いてください」との投稿があり、それに、
(02-09 22:43:44)「悪乗り・悪趣味で掌編を書いてみるのも一興」と調子に乗って書いたばかりに、具体的物語のアイデアのないところで無理にひねり出した雑文ということになります。

■奥さまは吸血鬼
 朝、7時77分、流行小説家、吉丸奈美は朝食とトマトジュースを飲んだ。今日は新鮮なB型血液が入っている。奈美は吸血鬼だが夫には秘密である。愛しているのでこの秘密は後ろめたい。
 学校ではゾンビごっこが流行っている。奈美の子供たちは本物のゾンビだが、秘密にしている。この秘密には自分は本物だという誇らしさがある。
 吉丸圭佑は自分がペットとして飼われているようなものだということを知らない。圭佑の食事には、造血剤とプロテイン(タンパク質)がたっぷりと入っている。
奈美は夫にハグされながら、こっそりと首筋から血を吸うのに幸せを感じていた。

 圭佑は最近、大きな脚本の仕事が入ったが「書けない」で焦っていた。しかも妙なツルツル頭の男が出てくる。これも流行作家の悩みかと思い、心理コンサルタントに相談した。
すると、ツルツル君は圭佑自身のストレスの作り出した幻影だと言う。「それは貴方自身です」という。「君は僕だ、僕は君を受け入れる」と言えば消えるらしい。
次に出てきた時に「君は僕だ」というと、ツルツル君は「そうだ俺は君だ。だからこの家にいる権利がある」といって、部屋に居座るようになった。逆効果だ。
それからはツルツル君がいるのでますます書けない。
 思い余って「書けないこと」を妻に相談するとベストセラー作家の妻がアドバイスをくれた。その通り書くと、第1稿はあっさり決定稿になった。会議ではロケの打ち合わせなどが進む。圭佑は取り残された感がした。

 ある日、「パパ、あの人だあれ」と妻が言う。ツルツル君が圭佑の部屋に居座りっているのがバレたらしい。しかも窓辺にたたずみ奈美に笑顔を向けてくるという。
 「パパ、あの人だあれ?」と今度は子供たちが言いだした。「君たち大人しいね、まるで死んでるみたいだね」っていってるらしい。
「あれは僕の心理的ストレスの幻影らしい」というと、「その幻影が私たちにも見える訳?」という。それは確かに、妙だ。

 ツルツル君が家にいるので、妻はストレスが嵩じ、トマトジュースが、血液90%の赤ワインに変わり、酒におぼれ始める。子供たちは、顔色が死人みたいに顔色が蒼く夜の街を徘徊しだした。
 そんな家庭のいざこざ、とツルツル君の居座りで圭佑はノイローゼ寸前。
 ツルツル君は、実は妖怪人間で、心理コンサルタントは、この妖怪人間とグルなのだ。ツルツル君は人間界での居場所を探していて、そこにやってきた圭佑に「あなたの分身だ」とコンサルタントが嘘を言い、居座わるように仕向けたのだ。ツルツル君は圭佑の分身でも何でもない。
 居心地の良いツルツル君は、あわよくば旦那がいなくなればパパとして住み込めるかもと、ますます圭佑の描けないことをナジりだし、そして、妻・奈美と子供達には、一転してゴマをすりだした。

 そうすると、頼りない圭佑よりツルツル君の方が頼りがいがあるように見えたのか、ある日、圭佑が帰ると、妻と子供とツルツル君と家族の様に談笑している。恐らく、正常な判断を失くした家族は、人間より、口の上手い妖怪人間に親しみを感じ出したのかもしれない。
 ベランダに何か大きな箱が置いてあるのを見ると、圭佑の名前の書いてる棺桶だった。「どういうことだ?」というと、もうすぐ来るハロウインの余興だという。
ますます取り残された圭佑は楽しそうな家族から離れ、その夜、棺桶で、すねたように眠ってしまった。

 さて、ハロウィンの当日、妻は吸血鬼になり、子供たちはゾンビになった。そうしてもう主人気取りのツルツル君は笑いながら圭佑の名前の入った棺桶に入ってみた。
すると、急に吸血鬼は恐ろし気な表情に豹変、合図を送るとゾンビの子供達は素早く棺桶のふたを閉め、銀の釘で蓋を閉じ固定してしまった。ツルツル君はただこの家に「寄生」しようとしただけなのを見透かされていたのである。
そうして、棺桶は吸血鬼である妻の知り合いの、妖怪専用の葬儀屋により葬られたのである。
 その後、圭佑は、造血剤とプロテインで体力を取り戻し、脚本はほぼ妻が代筆して、楽しい家族生活を送るのだった。・・が、これって圭佑もパラサイト(寄生)しているようなものなのだが・・・
                   以 上

158
夏菜子
ID: eOz2xw2cGu 
2021-02-13 15:51:15

by星さん
メチャメチャ面白いです!
goodでーす

159
名前無し
ID: lCGfcb2FYj 
2021-02-13 16:29:22

☆星様☆
02-09 11:00:45)「それ、書いてください」と投稿した者です。
早速応えていただき、有り難うございます。
楽しく面白く拝読させていただきました。
ツルツルの顛末がブラック(×_×)でしたが、圭佑氏は家族に受け入れられ、☆星様☆の描く世界でも幸せな結末だったのが、良かったです。

そして、このサイトの存在を私は初めて知りました。
興味深いサイトです。
しかも、☆星様☆は何度もご投稿なさっているご様子。
時間はかかっても、☆星様☆の作品は必ず全部読み終えます。今後、☆星様☆とお呼びする者がおりましたら、おそらく私です。(お星様とお呼びしようかと思ったのですが、違う意味にもなりそうで)
それが、安易に「それ、書いてください」と投稿した者のすべきことかと。
誠意を感じる御対応、本当に有り難うございました。

160
名前無し
ID: lCGfcb2FYj 
2021-02-13 19:07:09

☆星様☆作品拝見しました。
おちょやん関係⁉️が多いのですね。
私は数回しか見ていないので、比較できないのですが、
岡安にいる時にテルヲに売り飛ばされそうになった顛末は見ていまして。本編は女将が話しをつけたけど、
☆星様☆のアイデアはヤクザを出し抜く感じがスカッとして良かったです。
スゴいです。

レビュー投稿の長文は飛ばしてしまうことの多い私ですが、
これから☆星様☆の投稿は、熟読させていただきます。

161
名前無し
ID: dz2mprwdjr 
2021-02-13 23:06:28

by星★さん、また素敵な物語をありがとう。

162
■おちょやん異聞16 by星★
ID: i.cX3qTD4l 
2021-05-13 00:48:27

    最終放送週にあたり、記憶に残ったエピを、「こんなドラマ、あったら・・」と、
    書いてみたもの(12~15は都合により欠番)。

■おちょやん異聞16  万太郎と千之助
 ある午後、千之助は、「万太郎の死とその最後の舞台」を評価した新聞の一片を持って道頓堀の芝居小屋の横の川岸に降りた。万太郎の死から七日後である。その小さな新聞の紙片は、掌の大きさの折り紙の船に折られている。

 夜になって、その船を川に浮かべ、「兄やん」と呟いた。折からの雨である。千之助は二つ傘を持っていて、自分の傘以外の傘は、腕を伸ばし、その船の上にかざした。
 雨で早くなった川の流れとは別に、岸に沿った流れは緩慢で、千之助も遅々と進む船に沿って傘をかざしたまま、少し歩いた。
 新聞紙の船はやがて水がしみて沈んでゆくが、不思議なことに、千之助にはタイトルの「万太郎」の文字が新聞紙から離れ、道頓堀の流れにのって大阪湾の方に流れてゆくように見えた。
万太郎の文字が川の流れに浮いて見えたのは、千之助が泣いていたからである。
「兄やん、メリケンに行きや、そして喜劇王チャップリンに会うて来いや・・」


 万太郎は、子供の頃、気が小さく泣き虫な少年だった。多感であり、傷つきやすかった。
 万太郎の兄弟には二人の男がいて、万太郎は長男であるが、母も父もその長男の泣き虫ぶりに呆れた。愛されない少年は、身を守るすべとして、口達者になった。それは、両親への恨み言から始まり、長じて誰をも否定し嘲笑できる武器になった。
 かって遠い国、遠い時代の神話の英雄イカロスを絵本で知った。
この神話の少年は、ロウの翼で太陽に向かって飛翔したものの、ロウが太陽の熱で溶け失墜する。自分は、言葉という翼をもったイカロスで、言葉という溶けない翼をつけた、失墜しないイカロスだと万太郎は信じた。

 万太郎の弟は、太陽に向かう兄の飛翔を信じた人間である。この弟は「兄やん」といって万太郎を慕っていたが、若くして喉の腫瘍で死んだ。
 ヒリヒリとのどの渇き痛みを訴え、最後、兄やん、兄やん、とかすれた声で連呼しながら死んだのである。
 両親からも愛された弟はあっけなく死に、誰からも愛されない万太郎は生き残った。「笑える悲劇と笑えぬ喜劇」という万太郎の口癖は、この弟を憐れみ、弟と自分の運命の皮肉を思っての自虐の言葉だった。

 万太郎は、やがて、弟のいない田舎を捨て、喜劇一座を作り、そして、そこで自分を慕う才気あふれる千之助を見出した。千之助は万太郎を「兄のように」思い、最初は、万太郎も弟のように思っていた。
 さて、万太郎は、自分を「言葉で作った翼」をもつイカロスだと思っていたが、ある時、千之助は「本物の翼」をもっているのではないかと訝(いぶか)った。
 ある舞台中、地震があった。観客は浮足立った。すると、千之助は、空を飛んでいるのに地震を恐れる小心な鳥を、必死で羽ばたく真似をして表現した。その地震を恐れる滑稽な鳥に客席は笑いころげ、面白がって自分たちも鳥のように羽ばたく真似をした。
 万太郎が恐れを抱いたのは、千之助は客と一緒に劇場ごと大きな笑いの渦を作るからである。それに比して万太郎の笑いは孤高であり、人と和することはない。
 万太郎は千之助を嫉妬し厭わしく思い、理由も言わず千之助を破門した。一座の英雄は自分一人で良いのだ。道頓堀の笑いの帝王は自分なのだ。
 切り捨てられた千之助は酒におぼれたが、天海天海一座に拾われた。それを聞いて万太郎は千之助を飼い殺しにしておくべきだった、と後悔したが、しかし、天海という若き天才は早世してしまった。
 万太郎は自分の強運を感じた。そして、千之助はつくずく運の無い、落日のような男だと思った。その後、千之助は家庭劇というところでクスぶっているように思われほとんど忘れていた。

163
■おちょやん異聞17 by星★
ID: i.cX3qTD4l 
2021-05-13 00:56:57

■おちょやん異聞17  精霊流し
 万太郎が「のど」の異変に気付いたのはその名声の絶頂の時である。喉元がヒリヒリとし、そこから声は切り取られ、舞台の表現が崩れてゆく。
 万太郎は、言葉を失ったイカロスになったのである。そうして、その時、再度現れた千之助は自分に復讐するつもりかと思い、おびえた。その顔はかっての泣き虫な子供だった。
 しかし 千之助は「兄」の病気の事を知って駆けつけたのである。そんな情をすら万太郎は理解できないぐらい傲慢になっていたのである。千之助は本気で怒ってまくし立てた「何やってんだ兄やん、あの万太郎程の男が、こんな大変な時に!」
 二人は、かって言葉のいらぬくらいの仲である。千之助は、万太郎の手振りと仕草だけで、その心が読めた。
「笑える悲劇と笑えぬ喜劇」・・・自分は笑えぬ喜劇を演じてきたのかもしれない、それは笑える悲劇であったかもしれない、と自分の人生を万太郎は顧(かえり)みたが、それは自虐ではない。今は、笑いの帝王と呼ばれた頃より幸せだった。万太郎は死んでゆく自分を必死に助けようとする千之助に、小さな頃の弟を見たのである。

 万太郎の引退興行は、千之助のまき起こす笑いと、万太郎の無言劇のような厳粛な雰囲気が「笑える喜劇と悲しみの悲劇」の織り成す稀有な人生ドラマを作り出し、大成功だった。

 既に死期を悟った万太郎は病院のベッドの上にいた。傍らで、千之助は「兄やん」と悲痛な声を絞り出した。兄やん、兄やん・・・。
 万太郎は意識が混濁し、過去と現在がないまぜになり、弟が迎えにきて声をかけてきたのだと思った。
・・・「兄やん」やっとまた会えたね。嬉しいよ。そうか、待っててくれたのか。兄やんこっちだよ、これからは一緒に行こう・・・万太郎は満面の笑顔で死んだ。

 死ぬ前日である。万太郎は言葉の出ない口で「千之助、感謝している」と言った。
 千之助は、「どうした、万太郎。弱気でもう今にも死にそうやないか?あの傲慢な万太郎が」と叱ったが、その言葉は悲しさで震えていた。それをを嬉しそうに見て、・・・お願いだ。この舞台の新聞記事を道頓堀に流して欲しい、そう千之助に託したのである。

 その日は雲の流れが速い様に感じる一日でやがて向こうの雨雲から雨が降るだろうと思われた。そんな川岸に千之助は半日もうずくまって、やがて夜の闇が千之助を取り巻いた。その掌の中で、切り取られた新聞記事は小さな四角い船に折られていた。
 千之助は傘を二つもってきた。一つは万太郎、一つは自分の為で、かって雨の日には、千之助はよくそうしたのである。
 糸雨(しう)の中で紙の船を浮かべ、一つの傘の影で船を雨からかくまった。
「もう、やせ我慢せずにな。風邪ひくなよ」そして、待ってろよ、待っててくれよ。・・一人になった子供のような、弱弱しい声で言った。  
 千之助は夢と現実の間で体が浮遊するように感じたが、自分は万太郎の船に乗って揺れているのだとも思った。
 異国では焼いた骨の粉を海に流すということを読んだことがある。文字は遺骨の粉のように流れ浮いてゆくのかもしれない。それは一人の劇団員から聞いた死者を送る精霊流しという弔いのようなものかもしれない。

164
■おちょやん異聞18 by星★
ID: DyfU7OXsNw 
2021-05-14 02:32:54

■おちょやん異聞18  ヨシヲ
 万太郎の死後、鶴亀新喜劇の旗揚げ興行がまじかに迫っていた。
 千之助は既に「お家はんと直どん」という台本を書き上げた。
それはいがみ合っていた古い世代がやっと和解しながらも時代の表舞台から去ってゆき、新しく若い世代が育ってゆく様を男女の恋愛に託して描いたものである。そしてそれは、「戦後」という世相を背景にしたものだった。

 実は、先日、寛治が満州から無事に帰ってきてのだが、喜んだのおつかのま、満州でたまたま知り合ったヨシヲの死を知らされたのである。
それから、「新しい世代、新しい時代」というものが千代にはよくわからなくなった。
・・・ヨシヲが死に、寛治は生き残ったが、「新しい世代」とは、ヨシヲや寛治にとってどうかかわり、どういう意味があるのだろう?

 稽古に来て、新しい舞台の祝いに花籠がテーブルの上にのっているのに千代は気付いた。明日はもう、新作の初舞台である。
 稽古場の横の食堂の心安い子が、お茶をもってくる。
 その湯気が湯飲みの縁の唇をくすぐる。暖かさを感じながら、その食堂の子が言った言葉を千代は反芻していた。

 「綺麗なお花ですね、何か話しかけたそうな・・・朝はいつもそう感じるんです」
  花は孤独な心に語り掛けるという話を千代も聞いたことがある。ぼんやりと千代は誰かの声を聴いた・・・それは弟のヨシヲの声のような気がした。
 「あの花籠贈ったのは俺やで。」そう、ヨシヲの声が言った。それは嘘であることは千代にはすぐわかる。ヨシヲは簡単な花の名前すら知らない弟だった
 「・・そないな嘘、・・けどな、私、この間、面白い夢見たん。お父ちゃんがな、花籠もってくるねん。・・千代、ほんと、すまんかったな、って」
 「そらないわ、」「そうなんやけど、・・・・けど、とってもうれしゅうてな・・花なんて似合わん人のに、わざわざ現れてくれただけで」
「ほんと、得やな。ふだん悪く思われてる人間が稀に良い事をすると・・」

 そんなヨシヲの思いが去来するせいか、千代は最近舞台稽古に身が入らない。ちらちらと寛治の顔にヨシヲの表情が浮かんで消える。寛治がヨシヲの死のことを語ったあの日以来である。
ヨシヲは、女性の身代わりに銃弾を浴びて死んだのだという。そうして自分のことを姉に知らせて欲しいというのが最後の望みだったという話だった。

165
■おちょやん異聞19 by星★
ID: DyfU7OXsNw 
2021-05-14 02:38:40

■おちょやん異聞19  千代
 舞台初日、まだ時間がある。千代はぼんやりと腰掛けていた。稽古の時から時間が空くと部屋の裾に千代は腰掛け、ヨシヲの姿が現れるのではないかと考え待っているのが習慣になっている。
 そして、窓の外からのぞく懐かしい子供の幻があった。しかし稽古場に笑顔であらわれたのは青年になったヨシヲだった。

 ヨシヲは、穏やかな表情で言った。
「俺のことを思ってぼんやりしてるの?俺のことがそんなに大事だったの?それは意味のないことだと思う。俺は、この通り人間のクズだから」
「人を助けて自分の命を失くすなんて、・・・そんなこと。あんたらしくなくて・・最後まで何やの。何やってんの・・」
「姉やん、褒めてくれよ。俺、人助けしたんだぜ。身を挺してってやつさ。クズが消えて、可愛い少女が生き残ったんだぜ。出来すぎだろう?お釣りがくるぐらいさ」
「何で行方をくらまして、満州に行くなんて」「儲け話があったんでね、それにヤクザ稼業も肩身が狭くてね、色々と」
 千代はヨシオの眼を見ることはできない。そうして、悔しくて天を向いて、腹立たしさで思い切り憎まれ口をきかないと気が済まない。
「そうよね・・・。あんたみたいなクズなら、・・クズにしちゃ・・。」
それだけ悪口を言っても、ヨシヲの笑っている表情ばかりが浮かぶ。「けど、クズでも・・・生きていれば・・また、会えたのに」
「また姉やん、そんなこと。こんなふうに会ってるじゃないか。褒めてくれよ、花向けだと思って」
「死んだ弟の花向けなんて、誰が何を言えるの?・・バカにして・・本当に何言ってんのよ、姉ちゃんの知らないうちに勝手な事ばかり・・・、勝手にヤクザになって、勝手に満州に行って、勝手に死んでしまって。まるであのテルヲみたいに死んでしまって・・姉ちゃんは・・情けない。」
そう言って、千代は急にヨシヲが消えたように感じて慌てて「こっちに来て!お願いだから。」と言った。
 「会えるのを、ずっと、ずっと、ずっと待ってたのに、これからもまたずっと待つなんて・・きっと、もうすぐ一緒だと・・」
「姉やん、ちゃんと俺を見てくれよ、嫌な奴を見るみたいにでもいいからさ、いつものように俺を見て怒ってくれよ。」
 「けど姉やんは、悲しい時にも怒るんで、本当に怒っているのか、悲しんでるのか、どっちがどっちかわからねえ。ひょっとすると、こんな俺でも、弟が死んで悲しんでくれてるの?ねえ、姉やん。」

 「・・・何でもないけど・・。ただ、とても幸せだったの知ってた?。子供の頃、二人で、竹やぶで遊んだことを覚えてる?」
 「いいや、忘れた」
 「いつもかくれんぼ、して。あんた勝手にどこかに行ってしまって。本当にくやしかった。忘れてるんなら、あの時間、かえしてんか」
 ヨシヲは言いよどむように言った。「あの時間は・・・返せへん。・・・姉やん・・・悪いけど・・・いまがすべてなんや」
 ヨシヲは言葉を継いで「そして?今度は本当のかくれんぼ・・・、姉やんは、いつも鬼」
 千代は泣きそうな人がするような笑顔をつくった「うん、怖い、怖い、鬼・・・」
 「・・・姉やんは、小さい事を覚えてるんだな。あいにくオレは何も覚えてないんだ。オヤジと栗子の憎たらしいことぐらいしか」 その時、ヨシヲが花籠をしみじみと見たような気がした。

 千代はヨシヲの記憶にあるその二人に嫉妬を感じていた。人は嫌なことは覚えているのに、私との事なんか、やすやすと忘れてしまう、・・・本当に、悪い人間は、得だ・・。」
 そうして、ひょっとすると、自分も誰かの何か大事なこと大な人をを忘れているのかもしれない、と思った。・・・

 さ、姉やん。幕が開くぜ。それを楽しみに来たんだ。姉やんにとって一番大切なものだろう?・・・俺の次に・・・。
 あんたが一番大切なもの。そしてその次に芝居、・・・今回は、だからあんたに見てもらうため・・千代は訳もなく独り言を言った。
 ヨシヲは、「そうだな、俺は天井桟敷にでもいてるさかい。」といって消えてしまった。

 舞台では、千代は客席に自分を熱心に見つめてくれる視線を感じながら役を演じていた。
 舞台が終わり、先ほどの椅子のところに花籠がおいてある。ご苦労さん、お疲れだったわね。やっと帰ってきんだねヨシヲ、と思った。千代は自分でもよくはわからないが、ともかくも、何かが終わり何かが始まったように思ったのである。
                      

166
名前無し
ID: ZrJExfVHYF 
2021-05-15 05:31:23

なんかぁ、ミニ小説書くスレみたいになってますが、普通に こんなドラマ、あったらいいなでコメント書いてもいいでしょうか?

そろそろ「AI」に脚本書いてもらう。
ついでに出演者もCGで。でもアニメじゃないよ。生身の俳優はスキャンダルや病気で降板するでしょう。病は仕方ないとして、スキャンダルでドラマや映画がお蔵入りになるのは、製作側はもう、懲りごりじゃないの?

もう、監督がひとりいれば、ドラマ創れる時代が来たんじゃないのかな?

167
名前無し
ID: XBe5CgTTNW 
2021-05-15 09:06:56

by星★さん、あったかいお話、ありがとうございます(^.^)

168
■ほっとhot・・ by星★
ID: EZjQtS4POK 
2021-05-15 20:06:32

2021-05-15 09:06:56 NO167様
 有難うございます。反応がありほっとしました。
 (顔文字の笑顔がとてもうれしいです)。

2021-05-15 05:31:23 NO166様
 私の投稿が、投稿しがたい印象を与えたり、ということが少しでもあれば、心苦しく存じますが、「お茶の間」は色々な考え、色々な表現が可能な自由な場だというのが持ち味かなと考え、「こんなドラマあったら・・」の1パターンとして試させていただいています(通常の「こんなドラマあったら・・」も投稿しているのですが・・)。
 私の投稿以前は投稿数がほとんどなく、勢い私の投稿が目立ってしまうのは、心苦しい、ということになりますが・・多くの個性的な投稿・ご意見があればと思っています。

169
■参考:AIの物語 by星★
ID: EZjQtS4POK 
2021-05-15 20:42:45

2021-05-15 05:31:23 NO166様
 「AI」での物語創作について私も興味があるのでテレビの2つのバラエディーショーで特集した分を参考に少し紹介させてもらいます(ご存じかもしれませんが)。
 現在のAIにより「消える職業」ではないとも思うので、関係者ももっと大胆に「AI」を活用すれば、良いのに、・・独創的・創造的になる面も多いのではと思うのですが、・・
 (「監督が一人いれば・・」という発想には、冨田勲さんの音楽を想ったりします)

■手塚治虫さん風の「パイドン」という、AIで作成したマンガについてです。
 (「TEZUKA2020」プロジェクト 栗原聡教授(慶應義塾大学理工学部教授)指導、手塚治虫さんのご子息、手塚眞氏が協力。)
------------------------------------------
「ビーパップハイヒール」(2020年3月26日の最終回で「パイドン」を紹介)
  ・「AI」でプロットを自動作成し作り込めば「手塚治虫」的物語を無尽蔵に作り出せる、という肯定的なスタンスの番組でした。
   (また、お笑いの「ギャグ」などを参考に、こういう創作に疑問の声も上がっていましたが)
------------------------------------------
「1億人の大質問!笑ってコラえて」(2020年4月29日&8月5日で紹介)。

(4月29日:キャラの画像作成)
(「気まぐれ人工知能プロジェクト」でAIでレンブラント等の絵画を描いた例がある事など紹介した上で)
 ・キャラクターの絵(顔)は、複数のコンピュータでチェック・付け合わせ(実際の人間の顔写真も参照)することで作成可能と紹介。
 
(8月5日:物語作成)
 ・プロットは、金子満「シナリオライティングの黄金則」で提唱した13の展開を参照したとのこと(まず、ここで手塚の物語を分析したわけでないので私はガッカリ)。
 しかもその展開に手塚マンガを分析し当てはめる作業をした手塚プロの方は、とても大変だった、と評価。
 その分析を元に「自動シナリオ生成システム」を作成し2000の展開を作り、それで、AIがプロットを自動作成。
 しかし、突拍子もない単語が多数表示され、しかもAIはそのどれが面白いのか判断できないため、それを手塚眞氏が選択。
 その選択を元にAIがキーワード等の並びを作ったのを、さらに手塚眞氏が具体的事例を考案し発展させた。
   ・・・・・・・・・
   <例>キーワード:問題に立ち向かうー>姉妹への父親探しに主人公が協力を決める 
      属性:   役者      ー>主人公が姉妹の父親に変装する
    (この「左」のキーワードや属性から、「右」の具体案を考案したとの事だが・・・
     もう、AI作というより手塚眞氏作と私は感じてしまう)
    ・・・・・・・・
後は、、人間が作画する(マンガ制作と同じ)。

その作業での評価で栗原聡教授が番組で語っていた評価は、
    ●人間「9」:AI「1」の割合で創造(1より少ないかもしれない、との事)

この評を受けて、もっと創造的な部門でAIが活躍しているものは他にないか、ということで番組は俳句など17文字、文字だけなので対応しやすいのではないか、とのことで北海道大学の川村秀憲教授の「AI一茶くん」を取材
 (1秒間に400をつくり、番組取材では、1億以上つくった、と紹介。なお、たくさん作っても、玉石混合で、良い俳句を選ぶのはむつかしく、人間が必要。)
 そうして、例えば「かなしみの 片手ひらいて 渡り鳥」というAIの作った句などは「プロの俳人vsAI」で人間をおさえベスト俳句に選ばれたとのこと。
(私は「白鳥はかなしからずや、空の青、海の青にも、染まず漂う」という若山牧水短歌を、思い出しました・・・)


「ビーパップハイヒール」を見て、私も大いに期待したのですが、「1億人の大質問!笑ってコラえて」を見て、今の状況ではかなり難しいと思っています。その分、人間の才能の偉大さというものも感じます。
 「パイドン」は私もPCで読みました。手塚治虫的で「普通に面白い」のですが、私が感動する手塚治虫的な奇想天外なラストの「考えもしなかった意外性」は感じられません。
 CGなど色々な技術の進化は侮れないと思いますし、創造サポートでも活用できればとも思いながら、人間の創造性の尊厳に期待したいような、という気持ちもあります。

170
■鉄の旋律リメイク by星★
ID: PUOLCfLMtv 
2021-05-27 00:00:40

 先日、クローズアップ現代(5/25)は「脳科学と機械」を結ぶ研究で新たな能力開発の最前線を紹介していた。
 具体的に紹介されていた事例は、脳卒中で腕の指が動かなくなった人で、脳波を受信する機械を腕に装着し訓練することで指を動かすという能力開発の話だった。
 「脳の働きの強化」という研究テーマらしいが、発展形として、さらに、「機械の腕」をも動かす研究も進んでいるらしい。

 これって手塚治虫の「鉄の旋律」に極めて似ている、とびっくりしてしまった。
 -------------------------------------------------------------
 「鉄の旋律」という物語は、マフィアにより手を奪われた男が、ある研究家の理論化したサイコキネシス(念力で物を動かく能力)の訓練で、鉄の義手を操るようになり復讐を進めてゆくのだが、最後は大どんでん返しが待っているという物語だった。
---------------------------------------------------------------
 クロ現をみて、この「鉄の旋律」は、現代科学で肉付けしてリメイク(ドラマ化)ができるな、と思った。サイコキネシスって、脳科学やコンピュータ技術で、現代風に考える要素があると思う。
 この手塚の「鉄の旋律」は、サスペンス風、ホラー風な味付けもある物語で、ドラマ化も作り方によって色々と面白い作り方ができるのではないか、と思う。
 (これって、手塚治虫の作品のベースの論理的な組み立てがしかかりしている為かと思うが、フアンとしては「時代がやっと追いついた」感がありとても楽しい)
 



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