3.38
5 1428件
4 124件
3 62件
2 111件
1 931件
合計 2656
読み えーる
放送局 NHK
クール 2020年4月期
期間 2020-03-30 ~ 2020-11-28
時間帯 月曜日 08:00
出演
https://www.nhk.or.jp/yell/
(月〜金)昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而と、歌手としても活躍したその妻・古関金子をモデルに、昭和という激動の時代の中で人々の心に寄り添う数々の曲を生み出した作曲家とその妻の波乱万丈の生涯の物語。
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名前無し

結局、最初から音に「椿姫」をやり遂げる技量が無いのと、時間や予算の関係で降板と共に諸々省略したんだろうが、オーディションまでやって舞台の完成形も見せないで強引に終了に持って行くやり方。曲が聴きたいだけでこの疑問符だらけの夫婦に興味が無い者にとっては拍子抜けでしか無い。「椿姫」を観たかった人も少なからずいただろうし「紺碧の空」を球場で歌わせなかった時も、千鶴子に歌わせないで音が選ばれた時も同じ。音楽を題材にしてるのに最大の醍醐味は必ずと言っていい程省く。要らない脚色に無駄に時間を割いた中途半端で不完全燃焼な脚本と演出に思える。

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名前無し

最終選考の二人に音が選ばれるって?
あまりにも都合の良い展開に引いてしまった。
他の学生の方が遥かに上手いし、千鶴子さんとはレベルが全く違う。
いくら主人公の奥さんだからってこれでは荒唐無稽の漫画のような話だ。
どうせ子供の時のかぐや姫展開になるんだろうね。
苦労とか努力とか全く描けない作品は嫌い。

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名前無し

どうせ歌うならラーメン屋の前じゃなく球場だろう。
当日の朝完成したから観客が歌えないのは分かるが、モノクロにして直前練習までやったなら、球場で応援団の歌唱だけは最低限やるべきだろう。ギリギリ間に合わせた意味があるのか?

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名前無し

どうして音が選考に残ったのかわからない。技術は劣っても何らかの魅力があるってことかと思ったのにそうではないらしい。
どうしても音が苦手で、出てくると本当につらい。頼みごとをするときですら偉そうで、すぐに怒鳴りちらす。リアルな知り合いだとしてもあまり近づきたくない。
主人公も引き受けた仕事を簡単に投げ出す。銀行時代から社会人とは思えない行動ばかりで共感できない。1年間も何の実績もあげてないのに待遇が下がるとなると妻がしゃしゃり出てきて脅しにかかる。同僚があんな人だったら本気でいやだ。
で、あんなに書けなかった応援歌を作れた理由は結局わからなかった。

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名前無し

今日の回は素直に感動した!と言いたい。15分間、大きく心を揺さぶられた回だった。二階堂ふみ、そして窪田正孝の熱演に拍手。

今週のゲストMVPが双浦環なら、陰のMVPは藤丸だ。彼女がのんきな男どもに音の孤独を気付かせる。これはバンブー恵の役割かと思っていたので意外だったが、すごくよかったと思う。藤丸さん、好きだ。
そこからは窪田正孝が上手すぎて急速にドラマに引き込まれる。藤丸に言われ考えているのか自転車にぶつかる裕一。帰宅すると画面に映り込むベビーグッズがもはや音を追い詰める品々にしか見えない。そして音はいない。
音のことを理解している裕一は、音を探してちゃんと学校にたどり着いた。彼なりに考えて、敢えて厳しい言葉を音にぶつけることで、音に自分をなぐらせた(と私は思った)。音の本音を爆発させるには、これしかない。
始めて本音をさらけ出し、自分が嫌になると言う音を、ずっと裕一が撫でている。しゃがんで、帽子をとり、音に語り掛ける。
もうここからは泣いてしまって、記憶もあやふやだが、とにかく感動した。
自分の夢と子供。どちらも大事。わかっているのに諦めきれない。そんな自分が嫌だという音に、何一つ諦めなくていい=君のままでいいと言う裕一は、間違いなく世界で一番音を理解している人だ。
君の夢は僕の夢。二人は出会った時から、いや、出会う前の文通の時からそうやって愛をはぐくんできた。豊橋の小さなホールで歌ったように、今度は世界の大きな舞台で、二人の夢を。
その夢を僕が育てる、と言った裕一に感動。いや、ほんとに、今日のはよかった。

お産シーンは朝ドラお約束の絶叫もの。音のお産はこうでなくちゃ。
しかし撮影が間に合っていて本当に良かった。今後、産後赤ちゃんを抱くシーンはまず撮影不可能かと。これだけいいドラマなのに撮影にかなりの制限がかかるのは非常にもったいなく思うが、この主演二人と今作のスタッフなら様々な工夫で見せてくれるのではないかという期待もある。今週一週間、素晴らしいドラマを堪能させてもらった。

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べえべえ

今日が一番胸が熱くなったかもしれないです。
吟が「この子は?」
と尋ねると、
「俺の..友達だ。」
と、隠しだてもせず、堂々と答える智彦に、冒頭からやられました。
そのあと主題歌になったがその間ずっと目頭が熱くなってました。

さらに、吟がどういう反応をするのだろうと思っていたら、当然のようにその少年ケン君を受け入れ、智彦の何か釈然としない世間の理不尽さと、そんな中での自分の身の処し方に悩んでいる様子に、
「軍人は人のため、だから命をかけて戦えると、あなたは昔裕一さんが迷っているとき、言ったことがある。」
「あなたの誇りは軍人だからじゃない。人のために命を燃やせるのがあなたの誇り。そういうあなたに私はついてきた。」
「貿易会社でも、ラーメン屋でも、どちらでもいい。そういう生き方ができる選択をしてくれたらそれでいい。」
吟の後押しで貿易会社をやめ、智彦はラーメン屋に戻りました。
多分、挫折や色々見てきて、戦争孤児や食にも困ってる人達と共にあって直接に手を取り、力になりたいという気持ちが強くなっていたからなのでしょう。

「うちに住み込みでラーメン屋手伝え。」
驚いて、情けは無用、とばかりに断るけんに、再び「吟も望んでる。頼む」と頭を下げる。
「まあ、飯うまいから、いいぜ。」と笑顔いっぱいの、ケン。

今日の智彦と吟はほんとにかっこよかった。
ベタでもテンプレでもなんと言われようが、涙が出た。自分がやりたくてもできないことを、見せてくれるのがドラマだ。いやー、いいものを見せてもらい、元気が出ました。

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名前無し

久しぶりの男性主人公の今作。
私にとって男性主人公朝ドラと言えば「走らんか!」だ。正真正銘男性一人が主人公。私はおもしろく見ていたが、残念ながら視聴率は悪かった。
今思えば、どこか女性に媚びのある作品だった。出てくる女たちの強いこと強いこと。男の弱いこと。主人公まで弱かった。私がおもしろく感じたのはまだ若かったからかもしれない。

「マッサン」は男性主人公だが夫婦の物語だった。初めから結婚している。夫が天才型の「ゲゲゲの女房」「まんぷく」は夫がドラマを引っ張るがあくまでも主人公は女性。妻が夫を支え、助け、夫は成功する。

この「エール」も、「マッサン」のように夫婦ドラマだと思っていた。ポスターは夫婦だし、窪田正孝も「二階堂ふみがドラマの顔」と言っていた。やはり朝ドラはヒロインが重要という意識があったのだろう。
だが、「エール」は、ここまでは、古山裕一が主人公の男性主人公ドラマだ。
こんなに裕一が堂々とメインでドラマが進むとは、あまり思っていなかった。普通に夫婦二人三脚でいくものと思っていた。が、このドラマでは裕一の天才性がかなり強調されている。天才肌ではなく天才そのもの。
対する音は普通の人の代表だ。凡人よりは音楽の才能をもっているが天才ではない。が、同じ音楽を学んでいることにより裕一の天才性を人一倍理解している。音は作曲に関しては裕一にまだ口出ししていない。今のところ音が出張っているのは契約だけ。最重要課題の作曲については音は無力。
朝ドラで「妻のおかげ」にしないのはかなり忍耐が必要だと思う。脚本家にも女優にも。女に簡単に功を与えない、媚びていないこの姿勢は私は好きだ。

ドラマは裕一中心で進んでいる。引っ張っているのは確かに窪田正孝だ。はっきり言って、二階堂ふみが相手役と聞いたときは負けるんじゃないかと心配したが、それも杞憂だった。二階堂ふみが全力で音を演じているが、窪田正孝も全力で裕一を演じて、けして負けていない。
先週後半から作曲の話になり、一気に窪田正孝劇場になってきた。繊細さ、純粋さ、愛嬌、包容力。彼の良さがこの裕一役で爆発し、男性主人公の朝ドラ成功例となってくれることを期待している。
そして、徐々に音の重要性も増し、やがては夫婦の物語になっていくだろう。最終的には夫婦ものの代表作と言われるくらいになってほしい。

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今日も楽しませていただきました。
と、先日のレビューに投稿しました。もちろん本心です。

でも、昨日からは違います。
真剣に読解しながら視ています。

小説にせよ映画にせよドラマにせよ、きちんとした物語世界が構築されている作品は、読み解いていく喜びをもたらしてくれます。

裕一という人間。ものすごい才能に恵まれ真っ直ぐで優しくて真面目で、でも弱さも甘さも不足もいっぱい持っている人間の葛藤を見せられています。

ひとりの人物がいる。彼について三つの「事実」が分かっている。
①若くして国際コンクールで入賞。クラシック音楽の才能を持っている
②流行歌の作曲家になったが、しばらくはヒットを出せなかった
③『紺碧の空』を作曲し、やがて万人の心を揺さぶる歌謡曲やマーチを数多く生み出す
この三つのことをどのように結んでいくのか。そのとき彼や彼の周囲の人はどのように苦しみ悩み、そして道を切り開いていくのか。どのような人物であれば、物語世界が成り立つのか。

今、ドラマは②への解答(ひとつの人物解釈)を見せてくれています。

「本当だったらイギリスで勉強していたはず」「東京の片隅で流行歌(なんか)を作っているのは『本来の自分の居場所』に戻るための通過点」「最高傑作の『正統音楽』を作れば、大先生が認めてくれるはず」「作曲は客商売の喫茶店と同列ではない」「学生からの依頼は『書けない』と開き直って差し支えない」
裕一の負の面が、今週はどんどんあらわになってきました。
強烈な矜持、思い通りでないと癇癪を起こす脆さ、意地を張って拒んでいたあげくに妻に甘える情けなさ、道義に欠ける傲慢さ、人の繋がりを疑う弱さ、開き直ることのずるさ、「強者」に阿るように笑う卑屈さ。

そしてそれらが、このドラマでは実にうまく表現されています。
これまでの約7週間の中に、それらがきちんと織り込まれていました。

衝動的な豊橋行き、厚かましく強引な求婚、説得を父に丸投げする図々しさ、祖母のたった一言で家族を捨てる蛮勇
それができてしまう裕一だから、人の心を捉える音楽が作れない。

たとえ、『反逆の詩』が最高傑作であったとしても、楽譜は所詮は紙です。それを演奏してくれるオーケストラやホールがなければ、あるいはレコードを出してもらえなければ、何より聴いてくれる人がいなければ、命を吹き込むことはできないのです。

応援団がいてもいなくても、野球はできます。
でも、スタンドの声援が、大きな力を与えてくれるのは事実です。「人の縁を信じる」団長がリードする応援ならなおさらのことでしょう。

明日と明後日で、裕一がこの泥沼をどう乗り越えていくのか。『紺碧の空』がどんなふうに完成するのか。私はドラマ製作陣を信頼していますので、怒濤の素晴らしい展開を確信してワクワクしています。
田中が、久志が、音が、どんな役割を果たすのでしょう。
音は「裕一の最大の幸福」です。そして音は「裕一さんを幸せにする」と誓った女性です。
彼女は「応援なんか役に立たない」という言葉を聞いて、豊橋に向かいました。そこには何かの意図があるはずです。
黒蜜や梅も登場するのか。環さんも関わりがあるのか。

演出のことその他、まだまだ思いが溢れていますが、すでに長くなりすぎました。
読んでくださった方には感謝申し上げます。

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名前無し

梅をメインにし、岩城を出す。こういうセレクトが今作はとにかくうまい。朝ドラファンが見て喜ぶところをおさえている。何をどうしても目立つ光子(というか薬師丸ひろ子)、本編でたびたび出番がある吟の二人ではなく、梅を選んだ。そして視聴者が気になっている岩城を登場させる。
梅にもドラマがあって嬉しかった。幸田文をもじったと思われるあの文学賞をとった女の子、彼女ともつながりがあったとは。もしかして今後出るかも?先を知らないので楽しみだ。
岩城の思いも知ることができて少し安心した。職人・岩城にはこういう人であってほしいと私は思う。最後は親の顔から男の顔になっていた光石研もさすがだ。裕一はあれだけ近くで拝みながら幽霊の存在に全く気付きもしなかったが、岩城は感じとってくれたらしい。それぞれの関係性の距離感も感じられておもしろかった。
梅にかける安隆の言葉の数々。かつて音に導きを与えたように、梅にも前を向き先に進む力を与えている。笑った梅の表情がとてもいい。幽霊だろうがかまわずぎゅっと抱き合うときは音と同じ顔。娘たちの父への思いも、そして父の娘たちへの思いも、最後は残してきた愛する妻への思いと先に逝ってしまった愛する夫への思い。それぞれの思いがあたたかく、本当によいスピンオフだった。

それにしても、安隆の返答が裕一と似ている。光子が梅の友人が受賞した話をする時に、安隆は「友達だろ?嬉しいよ」とか言っていた。裕一もきっと同じ反応をするだろう。光子は「そういう安隆が好き」と言う。音も、そういう裕一が好きなのだろう。
裕一が結婚前に豊橋に来た時、梅とあの部屋で語っていた。今回もあの時と似たような雰囲気を感じた。梅は裕一とのやり取りを通して、直感で裕一を姉の結婚相手に認めたことを思い出す。

スピンオフはキャラが立っていないとできない。この人ならこういう言動になるだろうというわかりやすい個性が必要。今作は脇役まで全員キャラ立ちがすごいので、スピンオフになるとその良さがいきているようだ。光子、三姉妹、裕一と岩城、それぞれの安隆幽霊への反応がどれもその人の個性が出ていてよかった。
そしてなんといっても安隆役の光石研。じっくり見られて嬉しかった。この前後編、実にいいドラマを見せてもらった。

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名前無し

初回は原始時代、最終回はドラマを一日先に終わらせてコンサート一色。最後まで予想の上の上をいった『エール』。裕一は司会といってもちょっと紹介するだけ(笑)。プロの歌手を大勢キャスティングしたことをフルに活かした構成だったと思う。しかも、曲と、歌い手本人と、役とが絶妙にマッチしていて、歌を聞いていると自然とドラマの様々なシーンが浮かんでくるという素晴らしい内容だった。
圧巻は岩城の「イヨマンテの夜」だったが、個人的には昌子さんの「フランチェスカの鐘」も感動した。今作でのど自慢か家族対抗歌合戦があればこの二人は歌うと思っていたがなかったので、最後にこのお二人の歌を聞けて嬉しかった。
さらに嬉しかったのは、ドラマの中で見られなかった晴れ姿を見られたこと。オーディションで敗れたスター御手洗のばっちりきまった歌手姿、福島三羽烏が正装でステージに立ったところ、そしてかなわなかった二人の夢「大きな舞台で裕一の曲を音が歌う」を最後の最後に。二人で見つめ合い、高らかに歌う音に感動。もう裕一なのか音なのか、窪田正孝なのか二階堂ふみなのか、よくわからない不思議な感覚で見ていたが(特に藤堂先生は最初一人で歌っていた時は完全に森山直太朗だった)、もうそんなものを越えて、とにかく名曲と、歌とともにあったドラマを感じ、あっという間の15分だった。

最後まで驚きの作品となった『エール』。最終回は紅白もびっくりな濃厚な歌唱回で終わったが、なぜか吟や浩二も司会にいて(笑)、スケジュールが合わなかったと思われる梅の不在が残念だった。吟や浩二だけでなく子役も集めて皆で歌ったところが『エール』らしい。最初見た時は音の子役が大きくなっていて誰だかわからず、通常の撮影より長い月日が経ったのだと改めて感じた。司会席のバックにはドラマの小物達(鉄男のおでん屋の紙も)、舞台装置は古関メロディーの時代らしく懐かしい雰囲気で、最後までスタッフの心配りが効いていた。窪田正孝は最後まで彼らしく、このコンサートで最も緊張していたであろう鉄男(笑)に声をかけるところなど座長として最後までしっかりと全体を見ていた。二階堂ふみは本編では撮影所で生歌で勝負していたので苦労もあったろうが、今日は立派なホールでマイクで歌い素晴らしい歌唱を聞かせてくれた。最後に裕一と音の後ろに並んだ出演者たちの眼差しの温かいこと。皆で作ったドラマだったと、改めて感じた。私はこの『エール』は、記憶に残る朝ドラとして、令和の朝ドラの代表作として、長く残ると思う。素晴らしい最終回、素晴らしいドラマでした!

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名前無し

思ったよりもずっと真面目なスピンオフだったので驚いている(笑)。
設定こそ奇抜だが(あの真面目なナレーションで最初に断りが入るのが笑える)、中身は大まじめに作られていた。今作は笑いを茶化したりごまかしたりするのに使うのではなく、全力で笑いにもっていこうとするので本当に楽しい。
初日は起承転結が一話の中でばっちりで、その中に『エール』小ネタが満載。もう書ききれないほど。今週はファンにはたまらないスピンオフになりそう。

個人的にもっともツボだったのが、話が転じるときに裕一が華を世話するシーンをもってきたこと。朝ドラなのでこういう夫婦の姿が見たいのだが、今作はテンポが速くてなかなかそういうシーンがない。スピンオフで見せてくれたことが嬉しかった。赤ちゃんをあやしているのかあやされているのかわからない裕一がかわいい。華ちゃんが大きくなって結婚する時、裕一はどうなってしまうのだろうか(笑)。
あと、幽霊が見えない裕一のシーンがうまい。幽霊が画面に映っている時といない時の組み合わせがすごい。役者もうまいし編集もうまい。もっと見ていたかったくらい。

わりとおとなしめだったが、音のよさもたくさん出ていた。赤ちゃんを世話する母の顔と、お父さんの前では幼い顔。一瞬、父・安隆を探すシーンがあったが、あの子供が親を探すような感じがよかった。
裕一も彼らしさ全開で、生来の人のよさと、音との仲の良さ、とくに赤ちゃんを任せても安心だということは安隆を心から安堵させたことだろう。
吟の話は次週以降につながるのだろうが、子供たち全員を思い遣っている姿が父親らしい愛に満ちていてよかった。

安隆は音に歌手の夢を諦めたのかと心配そうに問う。娘は答えない。だが彼女の産んだ宝物と愛する夫を見て察したのだろうか、最後は「音の歌が大好きだ」と告げる。これ以上ない父の愛。「ごめんな」と謝る父を娘はぎゅっと力強く抱きしめる。このために幽霊を完全に実体化させたのかと思った。
二人を包むように流れるのは、父の眠る海で歌った「晩秋の頃」。裕一が作曲して音が歌った思い出の歌。海で歌った時も、今も、そしてこれからも、きっと想いは届く。最後はしみじみとよかった。これは明日も楽しみだ。

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名前無し

結局、裕一も浩二も三郎に似ているのだろう。将来は歌手か役者かと言われたらしい三郎(唐沢寿明のアドリブならすごい)の音楽好きの血を受け継ぎ才能を花開かせた裕一と、悲しいかな商才がない方を受け継いでしまった浩二。いい面と悪い面をそのまま体現しているような息子達に露骨に態度で示してしまう三郎。この親子が初めてそっくりに見えた。

養蚕家の説得に当たる浩二。すらすらと語る姿には賢さと懸命さと誠実さが表れているものの、最後に兄のレコードくらい持って来いと言われるとむっとしてしまう。説得推進に兄のレコードなんか思いも及ばなかったところ、ここで笑って返せないところがやはり商売に不向き。しかしここは浩二の人となりがよくわかるシーンで、ここだけのためだろうか、こんなにも立派な屋敷でロケをしてくれたことに制作の浩二への愛情を感じる。今作は浩二や千鶴子など主人公のライバルにあたる人達にもちゃんと光るシーンを与えているのがいい。

裕一は裕一で、手術をできないかとか東京の医者に見せようとか、胃癌の父に対しても何か食べたいものはないかとか、この期に及んでどうにもならないことばかり言っているのが彼らしい。父からハーモニカを所望され驚く裕一は、自分の音楽の成功がどれだけ父に幸福を与えたかわかっていないのだ。そんな鈍いままの息子を見る父の目がずっと優しい。

音からまさが泣いているのを告げられると裕一は言葉をなくす。音は父を亡くしているのでよくわかっている。ずっとまさに寄り添って励ましているのは、かつて父が死んだ時は幼くて母を支えてやれなかったこともあったからだろうか。もう最後には人の心に寄り添うしかないのだ。今週の音は「紺碧の空」で裕一を見守り続けた時を思い出す。

ラストシーン、三郎が手を合わせて願ったのは何だろう。老いた父のとなりで幼子のままの顔をする息子は。今日ほど子役の裕一の顔と窪田正孝の顔が重なったことはなかった。いつも柔らかい顔しか見せなかった父が初めて真剣な顔を見せた時、何を語るか。明日は正座して見る。

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名前無し

二番手の音がリアル椿姫を見て気持ちを込めて歌うことを知りヴィオレッタ役を手にする。
筋だけでいうと単純な話を、うまくドラマ内の展開に絡めつつ大きく膨らませ、感動のストーリーに仕上げた製作陣が素晴らしい。今作の中でも今週が脚本は一番光っていたのではないかと思う。

開幕はバンブー劇場だったと思う。これまでの中で最も力の入っていたバンブー劇場(これまでの小芝居も今回のためだったか)。コント仕立てにはしていたが、あれで鉄男の恋物語の結末は容易に想像できた。
が、もしかしたら、という可能性がこのドラマには常にある。そこは今作はとても上手いと思う。
このもしかしたら、は音の選考会の行方にも常にあった。千鶴子と音なら千鶴子が選ばれて当たり前。でも、もしかしたら。
そう思わせるだけの魅力を音はちゃんと持っていた。それが昨日の「音は強欲」。音は彼女なりの感性で生き、信念に基づき、彼女なりの努力で全てを手に入れてきた。この大前提がなければ今週のドラマは成立しなかっただろう。

希穂子の話を聞き涙する音。私も同時に泣いた。視聴者は音の気持ちになる。その思いを胸に、音は歌う。切なく悲しく、どうすることもできず、ただ相手の幸せを願って身を引く椿姫。音にはない感情を、希穂子に教えてもらった。
歌い終えた音の目は潤んでいた。その顔に勝敗は無い。千鶴子はうつむく。結末は視聴者にもはっきりわかる。
今週の話は、希穂子役と共に、千鶴子役が重要だった。彼女には音が太刀打ちできないくらいの歌唱力が無いとドラマに説得力がなかったはず。本職の一流をキャスティングした意味があり、しっかり役目を果たせていたと思う。
そして「感性の化け物」二階堂ふみ。歌唱の優劣ではなく、表現力なら勝てるかもしれないと思わせる役者だ。彼女もそれにこたえ、演技で、そしてスタッフは演出で、見事に魅せてくれた。
努力をするという才能をもつ千鶴子。今回のことで気持ちを込めて歌うということを学んだ彼女は、さらに努力を重ね、無敵の歌手になるだろう。いずれは双浦環のようになってほしい。

「紺碧の空」週では内にこもりどん底に落ちた裕一が外へ意識を向ける過程が描かれたが、今週は外に向かう音が人の内面を深く考えるということを学んだ様子がきれいに描かれていた。音の成長とともに、福島にもつながり、大変良い週だったと思う。

最後に。希穂子のバンブーでの言葉は嘘だと思う。縁談の話などないのだろう。鉄男が言ったように、彼女は嘘をつくのだ。そしてその嘘は、いつも誰かのため。最後の嘘は、鉄男のため。鉄男のために最後まで嘘をつき続ける彼女の言葉は、「あなたを愛しています」という告白。私は、鉄男はそこまで理解していると思いたい。が、どうかはわからない。
鉄男に写真を撮ってもらった時の着物でバンブーに現れた時から、彼女の別れる覚悟は決まっていた。ラストシーンで鉄男は新聞社で元気に働いている。鉄男を守って希穂子は去る。美しい東京恋物語。
家族を捨て音を選んだ裕一はどう思っただろう。裕一と音の結婚の顛末を知っている久志は。今日のバンブーでのシーンは、微動だにしない全員をカメラに綺麗に収め、まるで椿姫の舞台をみているような感覚だった。

今週は今作には珍しく視聴者の想像におまかせしますという感じで、最後も余韻をもたせる終わり方だった。これは「福島行進曲」のメロディーと歌詞にもピッタリだったと思う。

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名前無し

後ればせながら、第4週「君はるか」を観ました。
裕一が国際作曲コンクールに入賞し、音との文通が始まるところです。

若き音楽家の快挙は、夢を目指している音の心も高揚させ、かつ曲名の「竹取物語」で自分の幼い頃の大切な記憶ともつながっている縁を感じ、応援したい、いてもたってもいられない気持ちで、ファンレターを送ってしまったところから、文通が始まる。

才能というのは、人を勇気づけるものなのだと思う。想像を越えるものを見せられたとき、感動し、人間の持つ能力に感動する。自分にも今以上のことができるかもしれないという勇気を与えられる。そしてその能力を発揮し続けられるようにその人の力になりたいと願う。
音のファンレターには感謝と応援が熱烈に綴られていた。それはすでに愛だと思う。
「必ず(公演に)駆けつけます。あなたのような才能が同年代にいることに勇気づけられます。いつか私もあなたの曲を舞台で歌えるようになりたいと願います。今後のご活躍を祈っています。」

自分の心を勇気づけるものへの憧れ、称賛、感謝、かつその中に特別に自分との接点、つながりを感じたとき、なんとか自分もその力になりたいという願う。
それは愛の一つの形態だと思う。しかし、その願いが強いほど自分の無力さも痛感することになる。それでもその人に自分の思いを届け、できるなら側で応援し一緒に歩きたい。
音の熱烈な思いと葛藤がよく描かれた第4週だったと思う。

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名前無し

星5は先週に。その前の「栄冠は君に輝く」の方が一般的にはうけるのだろうが、私は先週の音の夢の結末の方が朝ドラらしさに溢れる物語の紡ぎ方だと思った。そして今週は鉄男と浩二week。私はもうこの二人は製作上描くのは無理だろうと思っていたのでこれは嬉しい。メインの鉄男はともかく、裕一の福島問題解決週(三郎が死んだ週)で一応の決着を見たと思っていた浩二もさらにその先をやってくれるようだ。楽しみにしている。

華は看護学校へ進学。華の育ち方から考えて音楽とは全く違う道に進むのが普通だろうし、性格的にも看護師というのはあっていると思う。オープニングあけの古山家食卓のシーンはとてもよかった。それぞれの現状、いまだに娘を溺愛する裕一、古山家は頑張り屋だという鉄男の言葉も自然だったし、鉄男の子供時代の話にうつるのも、親の話になった時に裕一が遮ったのも自然で、それぞれの性格が出ていた。
智彦のラーメン屋もよかった。屋台から店舗に変わっており、智彦の背は曲がり気味になり顔も穏やかになっていて、流れた年月を感じさせる。そしてケンが子役から大人に。このケンが、あれだけ背が高くなっていながら(笑)見た瞬間にケンとわかるくらいで、これはすごい。吟がケンの世話を焼く姿も、鉄男がケンを諭すのも、ケンが素直に聞くところも、そしてケンが「母ちゃん」と言うのもケンが正式に養子になったことも。ああよかった。
今日は話の流れがスムーズで、こういう平時をいかに見せるかに脚本家の力が出るわけだが、今日はどのシーンもうまかったと思う。特に、ラーメン屋で池田が語った裕一評と、最後に鉄男に言った「我々には想像力がある」というシメはうまいと思った。愛されて育ったがゆえの強さ、今風にいうと自己肯定感というのだろうか、これは無意識のうちに裕一に、そして音にもある。しかし一般的な愛情をうける機会を得られずに育ってきたとしても、別のところで温情、友情などを感じることもあっただろう。鉄男に藤堂先生や裕一がいたように。鉄男と池田とおそらく木枯も同じ側のようだが、彼らは彼らで一流の仕事をしている人達だ。鉄男、がんばれ。

さて。秘書からディレクターに昇格?した杉山あかね女史が鉄男の心配をしているようだが、これはどうなるのだろうか。長年低め安定で何度もクビの危機があったのに一度も心配されなかった裕一が驚いたのも無理ない(笑)。

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名前無し

今日は脚本家・清水友佳子の渾身の脚本。そして役を深く理解し愛している役者陣の演技総決算の回。素晴らしかった。
「彼は皆さんが思う以上に色んな引き出しを持った歌い手です」この言葉に裕一の久志への思いが込められている。裕一は久志の歌を信じている。そして彼には歌しかないと信じている。久志をすさんだ生活から抜け出させるために普通の仕事の求人を持ってきた鉄男・藤丸と違って、裕一は最初から久志には歌しかないと考えていた。一番最初に裕一に作曲を勧めたのは子供の頃の久志で、何のとりえもない裕一に君ならできるよと言ってくれた。裕一が曲が書けなかった時に「紺碧の空」の話を持ってきて、曲ができるまで見守ってくれたのも久志だ。裕一にとって大切な友。だから歌手への道がなくなりかけた久志にオーディションを受けさせ、合格できるよう頑張った。やがて久志は裕一と同じく時代の波にのって、戦時歌謡の歌手として有名になってしまった。「久志が戦時歌謡の歌い手としかとらえられていないなら」と言ったように、裕一は久志の現状に責任を感じている。この現状を変えるには、久志に、新しい歌を、希望の歌を歌ってもらうしかない。どん底から見える希望の光を、久志にも見てほしいのだと思う。
もう一人、久志を信じる藤丸もよかった。自暴自棄の久志をどうにもできない苦しさ、切なさ、帰ってきた久志に見せた怒りと、愛情。マイクの前で硬直する久志の腕をつかみ、背中をたたく。もう一度お願いしますと言う藤丸の声が、久志を励ます。
皆が見守る中で歌い始める久志。肩を落とし、ささやくような声からの歌い出し。少しテンポがずれるも、すぐに声は歌に乗り始め、目に光が戻る。自分の歌声に力を得たように高らかに歌い上げる久志。あの輝かしいプリンスからは想像もできない姿、それでも変わらない歌声の深い美しさに、心打たれた。
立ち直ったかに見えた久志だが、「暁に祈る」のポスターを見て色々と思い出し、またも酒におぼれてしまう。勝手にしろといって立ち去る鉄男、そして藤丸も。ちなみにこの二人が冷たいわけではなく、バンブー夫妻や池田が言うように本人の問題だから放っておくのが普通だ、大人なのだから。鉄男・藤丸と裕一の行動が違うのは、前述の持ってきた仕事についてもそうだが、ここで裕一だけ残るのも、この三人の生い立ちや今の生き方が反映されている。そして裕一と久志は子供の頃からの思いがある。愛した父が亡くなって寂しい息子の気持ちもわかる同士だ。裕一は、久志の歌はお金欲しさの歌じゃないと言い切った。何度でも来ると。裕一が諦めはしないと、久志もわかっているのではないだろうか。
今日は池田も効いていた。彼は裕一とはビジネス繋がりで、裕一鉄男藤丸と違うところから久志を見る。だが池田自身すごく人間臭くて味があり、ビジネスだけにとどまらない何かを感じさせた。どのセリフも彼らしさがあり、そして演じる北村有起哉も本当によかった。裕一の話を聞いて久志の現状を見ただけでぴったりの歌詞を書き上げるのはさすが天才劇作家。
最後に大倉がやって来て、本当は戦時歌謡の作曲家・古山裕一を起用するのに反対があったことを告げ、久志の起用にも難色を示す。しかし裕一の頭の中には久志しかいない。裕一が下げていた頭を上げて「それでも僕は」と言った時、私は来た来た来たと思った(笑)。「若鷲の歌」で映画会社の三隅に、いやそのもっと前から、廿日市に頭を下げては自分の願いを聞いてもらってきた裕一。そしてその度に裕一は結果を出してきた。さあ、明日、あの歌が聞けるか。週タイトルからすると聞けると思うが、今週は月曜日に先週の結末が入って来ていたので一日ずれている。カットして週末に収めるか。短縮が本当に惜しい。

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名前無し

負の状態・心情を演じさせたらピカイチの窪田正孝のおかげでこちらまで胃が痛くなりそうな感じ。一向に売れる曲が書けない裕一に小山田が更なるプレッシャーをかける。追い詰められる裕一をそっと見守るしかない音。
夢の新婚生活が始まった頃は音の励ましの言葉を素直に受け止めていた裕一だが、ここにきて廿日市や小山田の発言に混ざって音の言葉までプレッシャーになってきている。華やかな新生活から追われる日々へ。一週間が僅か5回しかない中でも、裕一が徐々に追い詰められていく様子が丁寧に描かれていたと思う。
そしてこの時点では裕一にも音にも「曲を聴く人々」の存在が見えていない。音は裕一ならできると信じており、裕一は自分の中から必死に音楽を紡ぎだそうとしている。この状態に大きな転機を与えるのはプリンス久志。来週、否、明日からいよいよ「紺碧の空」。とても楽しみだ。

先日から裕一が苦しい状態なわけだが、それでもドラマを楽しんで見られるのは音のパートが上向きだからか。音楽学校は各キャラがきれいに役割分担されていてすっきりと見やすい。その中で千鶴子が圧倒的なオーラを放っており素晴らしい存在感だ。
音の堂々とした宣戦布告(本人は報告しただけのつもりだろうが)を喜んで受け止めているような千鶴子。好敵手の登場を楽しんでいるかのようだ。音が遅刻した際にもスッと助け船を出してくれた。ここで久志ではなく千鶴子が真っ先に手を挙げてくれたのがよかった。凛としていて美しく、余計な発言はしない千鶴子。音が一次審査を通ったのにも満足している様子。私は千鶴子が大好きだ。

この週は脚本も演出も丁寧で、場面転換がかなりあったものの話は繋がっているし、一瞬一瞬のキャラの表情を映像にきちんと収めてくれているのでとても感情が伝わりやすく、何度見ても面白かった。後半はさすがにここまで丁寧な撮影は無理だろうが、今作は俳優陣に経験豊富な人が揃っているので、なんとか面白くしてくれるのではないかと思う。
今日の最後のシーン、ズカズカと応援団が上がってきて、裕一に面と向かって大音声でご挨拶。もうあんなシーン撮影できないだろうなと思いながら見てしまった。現場は制約が多く大変だろうが、どうか無事に全話撮影し終えて放送してほしい。今の東京の感染者数を見ていると、初回からの再放送にしたのも結局はよかったように思う。

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名前無し

音の足にカメラがいった時から、くる、と思って待ち構えていた。先を歩く音の足先、床は砂浜になり、音の足取りが軽やかになり、駆け出し、二人手を取り合って砂浜を駆ける姿はオープニングに重なって。見事なエンディング。感動!

僕の中にある音楽を、僕だけで楽しみたい。役目は終わった。そして次世代へ。愛娘・華とロカビリー歌手のアキラという次世代を中心に描いた最終週前週からの流れ。裕一の音楽の集大成ともいえるオリンピック・マーチの完成、絶頂期を共に歩んだ池田の死を経て、裕一の時代は終わり、病に倒れた音とともに裕一の人生も終焉へ。音が最後に歌う歌は、父の眠る海で歌った思い出の「晩秋の頃」。海が見たい、出会った頃のように歌いたいとかすれた声で語る音。裕一は初めて音楽に目覚めた頃のように音楽を自分のものだけにし、音は初めて二人が出会った頃のように歌を歌う。二人の人生の終わり。そして二人は、支え合って、思い出の海へ。
砂浜で戯れる二人は今作の象徴。音が前に、裕一が前に、手を取り合って、並んで歩いて。どちらが先というでもなく、後からついてくるでもなく、二人で一緒に歩んできた人生。そして二人の人生の中心に常にあった音楽。オルガンをひく裕一に寄り添って歌う音。
会えてよかった。音に出会わなかったら、僕の音楽はなかった。私も、幸せでした。一つ一つの言葉が、長い長いドラマの流れとこれ以上にないほど合っていて。こんなに仲睦まじい夫婦が朝ドラで見られて、本当に幸せな気分だ。素晴らしいラストシーンだった。

小山田の手紙。志村けんが生きていればきっともう一つのドラマがあっただろう。本当に残念でならない。今作には主人公夫婦をはじめとして欠点のない登場人物はほぼおらず、主人公夫婦に大きな影響を与えた存在といえる三郎・小山田・双浦環もそうである(例外は登場してすぐ死んだ安隆くらい)。裕一を愛し音楽を与えておきながらその道を閉ざす方向にいってしまった三郎(最終的に裕一が音楽の道に進むのに背中を押す)、愛する人を捨て夢を追いかけ成功を手にした環、そして日本の音楽の頂点に立ちながら音楽に愛された若き天才・裕一に嫉妬した小山田。三郎が死の間際に全てを収め裕一と故郷を再び繋げてやったように、小山田と裕一にも分かり合えるドラマが用意されていたと思う。最後に小山田の鏡の中の笑顔の映像があったが、何かに使われるはずのカットだったのだろうか、そのドラマが心底見たかった。それでも、最後に深々とお辞儀をし顔を上げた裕一の表情からは、自分に作曲というものを教えてくれ、結局は作曲家としての道を繋いでくれた小山田への感謝と、今作に深みを残してくれた亡くなった志村けんへの主演からの敬意とが見え、なんとも胸が熱くなった。

ラスト、タイトルの長写しの後に裕一・音のままで窪田正孝・二階堂ふみがご挨拶。これ、なんか懐かしい(笑)昔のドラマでこういうのよくあったような。しかし朝ドラでやるのは異例だと思うが、これをいれていないと後々再放送する時に真の最終回がコンサートであることに視聴者がビックリするだろうし(笑)。今作も数年後には再放送されると思うが、見るたびにコロナに振り回された2020年を思い出すだろうなあ。『エール』らしい、いい締め方だったと思う。最後まで泣いたり笑ったり驚いたり忙しい『エール』。今作らしさを最後まで保ちつつ、明日、いよいよ前代未聞のコンサートで最終回!

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名前無し

千鶴子から合格の真相を聞き、音はうなだれる。月の光に照らされた青白い部屋に一人うずくまる音。歌手になる夢を断念し、裕一がその夢をあずかると言ってくれた時も、こんな月明かりの夜だった。あの時、裕一が音に言ったのだ、そんな状態で舞台に立つのはお客さんに失礼だと。今度は音は自ら決意し、降板を申し出た。もう若い頃の、頑張れば何でもできると思っていた音ではない。
今日の話はけっこう辛いなあと思いながら見ていた。音楽学校の頃のキラキラと輝いて、努力したら成功すると思い込んでいたような音とは違っている。オペラのメンバーとの経歴の差はそのまま実力の差で、プロとしての覚悟にも差があった。「オーディションまでしか見えていなかった」という音の言葉が刺さる。華を産み、育て、音楽教室を開き、戦争で頓挫し、終戦後も裕一が再び作曲を始め軌道に乗るまでの期間があった。ここに来るまでに流れた月日の長さ。
裕一には時代の厳しさ、音には現実の厳しさ。今作で描かれる才能のある者、ない者。夢を追う者、諦めた者。色々な人が出てきたが、音は実力はあるものの久志や千鶴子のレベルには至らず、これだけのブランクがあったらもう挽回できないようだ。厳しいなあと思う。
約束を果たせなかったと泣く音。ごめんなさいと繰り返す音に、首を横にふる裕一。裕一も、月の光に照らされた書斎で一人考え込む。手には音と赤ちゃんの頃の華の写真。さあ、裕一、どうする。
半月後、裕一は教会に音を連れて行く。話の種は月曜日からばらまかれていた。明日、どう決着をつけるか。今日のラストの音の表情、あの目を見ると、こちらの予測の上を期待してしまう(笑)。

今日は千鶴子が彼女らしさを光らせて、彼女のファンとしてはとても嬉しかった。あなたならどうすると音に問われて「悔しさをバネになんとしてもいい舞台にする」と言ったのはとても彼女らしかったし、その後、音に気休めを言わなかったのもいかにも千鶴子らしかった。
面白かったのは、恵が久しぶりに過去を語るかと思ったら何も言わないままで終わったところと、華と渉の奥でくりひろげられた小芝居(笑)。その恵が、音の話を聞くときは珍しく黙って聞くだけだったのがよかった。恵は保と同じく古山家を見守ってきてくれた人だ。華の言葉からは音が追い詰められて楽しんで歌えていないことが分かったし、音が降板した後にレッスンしないのを責めるようなところは音の若かりし頃を思い出させた。音が降板すると言った時に相手役の男性が「古山さんも辛いと思います」と言ったのはプロらしく、千鶴子と同じ清廉さを感じさせた。従来より一週間のうち一日減った分、わずかなセリフや動きにたくさんのことが詰め込まれているように思う。

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べえべえ

どん底に大地がある。先週、長崎の鐘にちなんでこの言葉が紹介されました。
この歌が短調から長調変わるところの、胸の締め付けられる感じ、あれは地に足が着いた瞬間、地面に立って周りを見渡している様子なのかもしれない。歌を聴きながらそう思いました。
「どん底]とはなんだろうと、あらためて考えてみると説明が難しいです。何処まで落ちたら底なのだろう、どうなったら大地に足が着き、ここが踏みしめられる場所だとわかるのだろう? そういう疑問が湧きます。
今このコロナ禍はまだ泥沼、底無し沼に吸い込まれている途中であって、底はまだ見えてないかもしれない。一方で底かどうかに関係なく、変化に力強く向き合おうとしている人もいる。

結局地について生きられるかどうかは、客観的な状況ではなく、自分の心の問題なのだと思います。周りを見渡して人に何かを与え、何かをもらう。共に生きている、分かち合っているという感覚こそが大地であり、ソコに到達できるまでは苦しい。苦しむしかないのかもしれない。

裕一は、長崎で立ち上がろうとしている人達に力をもらって自分の大地に立つことができました。智彦も、自分の拠り所を失ってもがいていたが、同じように生きる基盤を無くした人々の中で、新たに自分が立つ大地を見つけることができました。

今度は久志の番だと思います。 久志はまだ周りが見えず、泥の中でもがいています。しかし周りを見渡すことができ、周りが自分の仲間だと気がついたら、自分の大地は見えてくると思います。
そしてウィズコロナの今も、今までの様式が通じなくなり、拠り所を失っていても、新な拠り所は共に生き誰かの力になる、というような方向から、必ず見えてくるような気がします。
先週から今週のエールを見ていて、これは我々への応援歌なのだと思いました。

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名前無し

裕一が持って帰ってきた袋の中からバリカンを出した時、ぎょっとした。あまりにも異質な組み合わせ過ぎて。ここから刺さる演出が何度もあった。今日から脚本家は吉田照幸。交代した脚本家の中で唯一スタッフの人だが、この人は演出家なので見せる場面作りがすごく上手い。ただ、筆致はけっこう厳しい。早速今日は裕一と音に静かに厳しい場面の連続だった。今作では「紺碧の空」を担当している。戦時中を彼が書くということで、覚悟して見ていきたい。

召集令状がきて茫然とする裕一。しかし現実として受け止める。受け止められないのは音の方で、ここから音は魂の抜けたような顔になったり吟のところに行ったり、苦しい胸の内をどうしようもなくて悶々としている。これまで何度も自分の力で道を切り拓いてきた音が、どうにもできない現実にぶち当たる。
裕一は戦争に行く気持ちを作ろうとしている。表では少年が裕一作曲の「露営の歌」を元気よく歌っている。書斎で厳しい顔をしている裕一の背中には幼い華が描いた家族の絵が飾ってある。裕一は召集令状を取りだし、その上にバリカンを置いた。響く重い音。裕一の日常に戦争が入ってきた。裕一が手にしたバリカンが異質すぎて恐ろしい。これまで鉛筆か指揮棒かハーモニカぐらいしか握られていなかったその手に光るバリカン。戦いとは無縁の人生を送ってきた裕一の手に、銃が握られる日がくるのか。

今日は五郎の試験合格エピソードがありその中で裕一の「船頭可愛いや」が流れたのだが、あの「船頭可愛いや」エピソードの時にはこんな重苦しい時代がこようとは思っていなかった。裕一の人生に太平洋戦争が挟まれることは知っていたのだが、それでもこういう形になるなんて。これを実感させたいのかもしれない。まさか自分が戦地に行くとは、夫や子供を戦地に行かせることになるとは。その気持ちを。
そして当時の人々は、その現実を受け入れて生きた。裕一は音が悲しんでいるのを見て、自分一人で髪を切ることにする。音はそれを止めて、写真を残したい、あなたを待っていると言うのだった。無理に気持ちを押し付けないこの夫婦らしいやりとり、少ない言葉の中にお互いへの愛情とやるせなさが溢れていて、とても印象的だった。
結果的に召集は解除となるのだが、その報を聞いてホッとする音、反対に険しい表情になる裕一。自分だけが特別なのかと。一度は覚悟を決めた裕一が、それを免れた。その気持ちはどこに向かうのか。ちょっと怖くなってきた。

星は先週の分。再放送期間中に土曜日も放送があったのでまた感覚が戻り、なかなか週5日制に慣れない。今作だけ特別に土曜日も本放送して全話やってほしかったと今でも思う。
そして先週から今日と、この戦争編に入って窪田正孝と二階堂ふみの演技がすごい。特に今日は、裕一が普段通りにすればするほど音の戸惑いや悲しみが強く感じられたし、最後の召集解除を聞いた時の音の抑えきれない安堵の表情、一方で険しさを増す裕一の表情などもとてもよかった。

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名前無し

ソフトな描写ですが、国防なんとか婦人会とか、音の合唱隊の、上の偉そうな人とか、ピリピリした年配の人が出て来て、その時代の重苦しい空気が伝わりますし、食料の不足、戦争に行く藤堂先生、涙をこぼす昌子さん、そういうエピソードの数々が一つ一つ心に残ります。
あの元気な音がどこか小さくなって、悲しそうにしていたり。教室の閉鎖、バンブーの閉鎖、日々、どんよりとしてくる感じ、そういうところをあまり痛すぎずに、うまく見せてくれていると思います。
いかにも悲惨です!みたいなのは、もう消しちゃうと思うので、このさじ加減がちょうどよくて、つい見てしまうんですよね。

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名前無し

五郎を追いかけてきた梅に続いて吟も集まり、関内三姉妹に裕一・五郎師弟が揃った。今日はそれぞれの考え方が語られると同時に、時が流れ成長した姿も感じられ、いよいよ後半の山場へ突入という印象を受けた。

軍人の妻の吟、文学の梅、この二人の考え方はわりとオーソドックスというか朝ドラでもよく見るタイプのものだったが、音がこれまでうっすらと見せてきた微妙な心情を吐露してなるほどと思った。音は裕一と出会った時にはすでに軍が人を殺めるという考え方を持っていた。しかし結婚前は実家が軍の仕事を請けており、現在は夫が軍の仕事をしていて、戦争反対と言う立場にないこともわかっている。だからといって吟ほどに御国のために尽くせというまでには気持ちがいっていない。吟は元々周りの目を気にするタイプなので(安隆が言っていた)そこに疑問はないのだろうが、音は元々自分の気持ちに正直なタイプ。それがバンブーで保に咎められたように、もう自分の気持ちは言えない世の中になっているのだ。我が道を行く音には大親友と呼べるような友達もおらず、集団行動は苦手、婦人会も息苦しいし音楽挺身隊にも乗り気ではない。楽しかった音楽教室も閉めざるを得なくなって暗くなっている。しかし、梅の言葉で動き出すか。明日、音が立ち上がることを期待している。
梅は賞をとり東京での日々で成長したこともあって、力強さに満ちている。時代に負けない若い力を感じる。音にもまだまだ頑張ってほしい。

もう一人、主人公の裕一も今日は印象的だった。関内三姉妹が戦時下のそれぞれの考え方を述べた後、裕一は黙々と作曲を続ける。五郎の問いかけに、裕一はただ求められるものには全力で応えたいと言うのだった。立ち尽くす五郎と机に向かう裕一を複雑な気持ちで見た。
梅や鉄男と違って裕一は開戦よりずっと前から作曲が仕事になっていた。裕一の音楽は自分だけの音楽から様々な経験を経て聞く人の音楽に変わってきている。戦時下で裕一の作曲は人々に喜ばれている。コロンブスレコードのお荷物だった裕一が重宝され先生と呼ばれている。裕一はただ求めに応じて人々に喜ばれる曲を書いている。売れない時代を長く見たので「仕事があるのはありがたい」という裕一の言葉の重みもわかるだけに、複雑な気持ちだ。
五郎が来て切ない思いで裕一を見ることになってちょっと悲しいが、五郎には早く岩城の試験に合格して梅と結婚してほしいものだ。がんばれ五郎。畑仕事も裕一よりずっと似合っていた(笑)。

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名前無し

この時期の再放送ってどうかなー?と思ってたけど、想像以上に良かったです!人物たちに愛着がある状態からの初回放送がこんなにいいと思わなかった!お墓参りシーンや、唐沢お父さんのシーンでは思わず泣いてる自分に驚いた程。前はなんでこんな寸前なのにオドオドしてるんだ?と思っていた祐一も、今ではうなずける態度だし、本当に良い夫婦だなあと感激しました。祐一のキレキレダンスももう一度見れて大満足♡明日からもまた楽しみが続きそうです。面白いドラマって2回見ても大丈夫なんですね。

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名前無し

音が再度歌いだす場面でぱっと画面が変わった時、私は必ず歌唱シーンは見せてもらえると確信していた。最後にみんなで海に行った時、ここで歌うのかと思ったらやはり会場で披露した映像も見せてくれた。のびやかな二階堂ふみ、否、音の歌声に感動した。気持ちが高揚して、御手洗ティーチャーが泣くのも大袈裟には見えなかったくらいだ。とてもよい回だったと思う。

今作は多くの視聴者が見たいと思うシーンを惜しみなく見せてくれていると思う。必ず歌唱シーンはあると確信させたのは、ここまでのドラマ作りがしっかりしているからだ。個人的に今週は非常に濃密で、通常の朝ドラなら数倍の時間をかけて放送されるほどのものだったと感じた。が、必要なシーンはしっかり見せてくれている。編集もとてもレベルが高いと思う。

初回で裕一は緊張のあまり動転していたが音に引っ張られるように立ち上がった。今回は意外にも音の緊張を裕一が包み込み成功に導いたが、それにもしっかり説得力のある筋書きだった。この夫婦はこうやって、互いのピンチを互いに支え合って生きていくのだろう。一方の献身ではなく、二人で困難を乗り越える。そういうドラマの方向性も見える、素晴らしい一週間だった。

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名前無し

今日の智彦の話は全く予想外の展開で感動した。私はとてもよかったと思った。子供がいなかった智彦が戦争から無事に帰ってきたので、戦災孤児を養子にする話になるかなと予想はしていた。朝ドラではわりとある話なので、同じ予想をしていた方はここにもいたと思う。しかし智彦とケンは親子というより同士(仲間)のような感じだった。対等という言葉で書かれた方がいたと思うが全くその通りだと思った。確かケンがネギを切ってみせながら家族をなくした話をした時に「死んだ家族に申し訳ないだけだ」と言ったのが、軍人なのに生きて帰ってきてしまった智彦の気持ちと同じなのではないかと思った。だから智彦が吟にケンのことを「俺の友達だ」と言った時に、すごく納得できた。
吟は智彦の許可を得ないまま、ケンを家に連れて帰ってきてしまう。智彦は何も言わない。明らかに智彦は変わってきている。吟は自らも酒を飲み、智彦を驚かせる。まだ知らないことが多かった夫婦。だが、二人は変わろうとしている。
智彦は吟に気持ちを吐露した。同期がラーメン屋なんて恥ずかしいと言われ、怒りがわいたと。前は自分も見下していたのに。なぜこんな気持ちになるのかわからない。しかし吟は答える。「人のために命を燃やせるのがあなたの誇り」。常に自分の身を正し、国のために命を賭して働いてきた智彦を理解してくれていた妻。敗戦により自分の全てが無価値となっても、吟は智彦を見捨てずついてきてくれた。あなたらしい生き方ができる選択をしてほしいと言う妻に、想いが溢れる智彦。この時の智彦の表情、本当によかった。
頭を下げて智彦は貿易会社を辞める。そしてラーメン屋店主に土下座して再修業。変わったなあ。結局は智彦も『エール』の住人らしく、不器用な生き方しかできない男なのかもしれない。
智彦はケンに住み込みでラーメン屋を手伝うように言う。ケンは一度は断ったが、智彦はここでも頭を下げた。肩を組んで歩く二人がとてもいい。屋台で裕一一家にラーメンを振舞う時、智彦と吟の間にケンが立っていた。向かいに座る裕一と音夫婦の間にいる娘・華と同じ位置。今は友達のような智彦とケンだが、いずれ親子になる日もくるかもしれない。吟は最初からケンに対しては母のようだ。この三人が家族になるのもいいと思う。

今作は諸事情で複数の人物のストーリーを並行して描くことが難しくなっている。しかし今回は裕一と智彦がきれいに並んで描かれ、恐らくかなり短くされていたが(本当に残念)、それでもとてもよかったと思った。智彦のどん底からの立ち上がりは裕一と同じく感動したし、吟も音と同じように夫を精神的に支えていたこと、固いところのあった夫婦がお互いを理解しあえたこと、戦時中に緊迫した状態になった吟と音が再び笑える状態になったこと、そして初めて智彦一家と裕一一家が談笑する風景が見られたこと。色々とよかった。
そしてこの智彦とケンの話を親子ではなく「辛い立場を理解しあった者同士」としたことで、次の裕一と久志のドラマに繋がるのかなとも思った。ラストに随分と姿の変わってしまった久志が登場したが、さあどうなるか。今週も大いに期待している。

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今日は感動した。静かな感動、涙、涙。長崎の回想シーンでクリスマスに鐘がなったところから既に泣いていたが、その後の永田医師の言葉、「あなたは戦争中も人々を応援していた」。そう、裕一の曲はいつも人々のためのものだった。彼が誠実に心を込めて作った曲たちは、人々を励まし、喜ばれた。戦争が終わっても、裕一にできることは変わらない。「応援する歌を作り続けます」。この言葉が聞きたかった。本当によかった。
永田医師は言う。希望を持って頑張る人にエールを送ってくれ。作中で「エール」という言葉を聞くのは久しぶりな気がする。「お互いにエールを送りあおう」というのが裕一の音へのプロポーズ。今作にずっと貫かれている「エールを送る」というテーマが、どんどん大きな意味を持ってきて、どん底から立ち上がる裕一の目の前に再び示された。

ここで一つ戦争編が終わったかと思うが、改めて振り返って、今作は朝ドラの長い歴史の中でも珍しい戦争の描き方だったと思う。もちろん主人公のモデルが男性で実際に戦地に行ったことがあるという経験も大きいのだが、珍しいと思ったのは社会全体が戦争に反対していないことをはっきり描いたことだ。朝ドラではたいてい主人公は薄ぼんやりと戦争に疑問を持っていたり身近に反戦派がいるが(今作では音と梅が担当)、今作は堂々と裕一を反対側に置いた。これは『ごちそうさん』のめ以子の戦争初期と似ている。
そして制作の本気を見たのは、裕一が精魂込めて曲をどんどん作っていくように描いたことだ。裕一は歌詞に心動かされ「露営の歌」を書き、藤堂を思って「暁に祈る」を書いた。予科練を体験し若い人たちの国を故郷を家族を思う心に触れ「若鷲の歌」を書いた。この間にニュース歌謡という裕一の才能が最大限に発揮できる曲作りが求められ、裕一はなくてはならない作曲家になっている。裕一の社会的地位の上昇、裕一の音楽が大衆に求められたこと、幼少期に自分を見出してくれた恩師に報いる歌作り。長年低め安定だった裕一の数々の成功と才能の発露を、戦争と同時に見せた。裕一の顔や動きがしっかりとした成人男性らしくなっていくのもこの中で演じられていた。裕一はこの戦争で一気に大人になった。そしてそれが、あの戦場で、そして終戦で、全て崩壊する。
しかし作られた歌は残る。人々の心に残り、生き残った多くの人がその歌を残した。だから戦後生まれの私も知っている。私は死んだ祖父や父が酔った時にそれらを歌っていたのを聞いていた。歌は人々が愛して残したのだ。それは彼が曲を書いた時の気持ちは、純粋に人々を思って書いたその気持ちは本物だからだろう。制作が実際の歌を尊重してくれたからこそのドラマの流れだと思った。

どん底まで落ちて、大地を踏みしめ、仲間がいて、初めて希望は生まれる。吉田医師の言葉。裕一の心には希望が芽生え、新たな一歩を踏み出した。もう一人、戦後止まっていた時が少しずつ動き出した智彦はどうなるか。どん底に落ちた智彦も、大地を踏みしめ、仲間を得て、再び歩もうとしていたのだが。彼にも、そして少年ケンにも、希望のある未来があることを期待している。

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戦争が終わって抑圧された人々が解放されて新たな楽しい時代が始まる。といきなりならないのが『エール』。戦争が始まってから丁寧に見せてきた、人々それぞれの戦争。一人一人に戦争の意味合いが違っていたように、終戦の意味合いも違う。今日の終わりの方、智彦の職探しの辺りからあやしくなりだし、ラストは道行く人の裕一への恨み節。智彦や裕一は終戦で価値観がひっくり返された。コロナの撮影休止期間中に脚本は再度変わったらしいが、この二人の今後にはコロナや災害で何もかも失った人達と重なる部分があるかもしれない。

音は裕一に挨拶して豊橋へ行く。裕一は平気そうに振舞っているが中身がそうではないのは音にも鉄男にもわかっている。音との距離が遠い。今日は裕一も例のガラス越しの映像が多く、その本心が見えない様子。
バンブーは復活の準備。夫婦の口から「バンブー」の単語が出て嬉しい。次は店名もバンブーに戻っているだろうか。鉄男も再び詩作に入る。

岩城の最期。感謝の言葉は幻か。現実でも幻でもいい、岩城の心からの言葉だと思う。助かったと思っていたので本当に悲しい。こうやって、終戦後に命を落とした人も多かっただろう。岩城が守ってくれた梅、育ててくれた五郎が、光子と共に関内馬具店の再建を目指す。グローブはあの曲への予兆を感じさせる。
豊橋の関内家の廃墟からの復活の兆しと共に、また戦前の明るい雰囲気に戻るかというところで、吟と智彦の登場。智彦は危険な予感。一瞬だけ見えた彼の履歴書、輝かしい経歴が、終戦で無価値になってしまった。裕一も戦時中は子供達にまで先生と呼ばれていたのに、今度は恨みや憎しみを浴びる立場になっている。この二人がどうなるか。
しかしこの二人には吟と音という妻がいる。自分なりの生き方で力強く生きる関内家の娘達。特に吟はここからが正念場。音も裕一との距離ができてしまっているが、これからどう動くか。
そして劇作家・池田が裕一の家にやって来た。彼はいきなり裕一の聖域ともいえる書斎に入っている。ガンガン本音をぶつけてくるこの男、廿日市と似たような底知れなさがあっておもしろい。これは楽しみだ。

またもオープニング曲がなくて驚いた。10日も短縮されたせいかもしれないが、早く聞きたい。待ち遠しい。しかし今日のタイトル『エール』には色が付いていた。日常はこうやって少しずつ戻ってくるのかもしれない。後半になって、劇伴がずっと印象に残る使われ方をしている。音楽の力、見せてもらいたい。

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今日は昨日に続いて大事な回だと思った。昨日は三姉妹の三者三様の考え方プラス裕一の現状が示され、今日は戦時下における音楽の状況が描かれる。音楽は戦力増強の糧であり、国のために音楽を捧げるものであると。再放送されている『純情きらり』では従軍画家の話がある。芸術が戦時においてはこういう形で使われる。

音楽挺身隊に行ってみると国防婦人会よりずっと軍に近いことを感じ取り、怖気づく音。裕一にそれとなく不安を伝えるが、裕一はまずは慰問に行ってから考えたらと言う。やらずに後悔よりやって後悔の音、まずはやってみることにする。良くも悪くも裕一は変わっておらず、この二人の関係は出会った頃とほとんど同じままだ。裕一は音が歌うことが好きでずっと応援しているが、音に歌えと促したり歌うなと禁じたりもしない。あくまでも決めるのは音の意志。音も同じで、裕一の作曲には踏み込まない。
音は慰問先で歌う。慰問先の人々が笑顔になって、だんだんと笑顔で歌う音。喜ばれ感謝され、音は満足している。次も頑張ろうと仲間と言い合う(懐かしい音楽学校の友人が登場してくれてよかった)。この感覚は裕一も同じなのだろう。「戦力増強」のための音楽挺身隊の一員だが、音は目の前の人達の笑顔のために歌う。作った曲が「国威高揚」のためと言われても、裕一の曲はあくまでも聞く人のために作っていた。
浩二からの手紙で福島の様子。まさは裕一のレコードを聴き、裕一の活躍を喜んでいるという。この時点では、裕一の周りには裕一が売れていること、その才能が発揮されていること、裕一の曲が人々に喜ばれていることといった「いい方」の声しか聞こえてこない。

裕一と弘哉のハーモニカのシーンはとてもよかった。親子のようで、師弟のようで。弘哉がメロディーを、裕一がそれに合わせて伴奏を。楽しそうな弘哉と、弘哉を見守る裕一もとても楽しそうで。この時期の裕一にとっての音楽を象徴するよいシーンだったと思う。

一方で最後は緊迫したシーン。吟が音を国防婦人会に誘うが音は音楽挺身隊参加を理由に断る。吟のあんたはいつも好きなことしかしないという言葉に、音がついに反論。音楽教室がうまくいかなくなった時も吟はかなりきついことを言っていたが、その時は音は黙っていた。今度は音にもお国のために奉公しているという大義名分がある。が、「向いていないことを無理してやるよりいい」という言葉は、今の吟にはグサッときただろう。それは吟も無理をしているという自覚があったということでもある。
吟は自分が育った家とは真逆の冷え切った家で、出征する夫と別れの盃。どうぞご無事で。自分を押し殺してきた吟が最後にこぼした本心だろうが、智彦からは責められてしまった。吟が哀れでたまらなくなる。

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五郎の不器用な生き方に胸が痛くなる。何日も通い詰めて弟子入りがかなって、理想を絵に描いたような古山家で大事にしてもらって、でも尊敬する古山裕一の天才的な作曲風景に自分の才能の無さを自覚し、それを言い出せずにいる裕一や自分を好きだと言ってくれた梅の前からさっと姿を消す。華や梅が泣いて、私も悲しかった。彼が幸せになることを願わずにいられない。明日、よい結末が見られるとありがたい。

廿日市が五郎に突き付けた言葉からすると、やはり彼は裕一には才能があると評価していたのだろう。一に才能、二に才能、三に才能。これまで木枯や双浦環など一流が評価していた裕一の才能が、いよいよ花開く時が来る。その時に廿日市はどうするか。先が楽しみだ。
五郎に作曲は無理だと告げるのは、裕一には辛いことだった。音楽を心の支えにしている苦労人、居場所がないと言った五郎に、裕一は音楽の道も居場所も与えてやりたかったのだと思う。音楽の才能がないと告げるのは、その両方を失うことになる。だが、これは鉄男が考えているように、才能がない者にはそう教えてやることも大事でそれが本人のためなのだ(廿日市も似たような考えと思われる)。それでも優しい裕一は悩んでいる。その姿に気付いて、五郎は自ら去ることを決意。五郎に何もしてやれない裕一は、在りし日の三郎を思わせる。二人が抱き合って裕一が五郎の大きな頭をよしよしと撫でてやる姿は、師弟というよりも兄弟、否、親子のようだった。

五郎と梅のシーンはどれも初々しい二人のまっすぐな気持ちが伝わってきてとてもよかった。五郎が梅の小説に感動し、もっと自分を好きになってほしいと言ったこと。梅は自分の太陽は文学だと言い、五郎の太陽は何かと問いかけるところ。二人がそれぞれを駄目な人間ではないと励まし合う。ときめきの恋心というより、人の本質に惚れこむ、五郎らしく梅らしい恋心だと思った。
今作の週ゲストの応援団団長、希穂子、ゲストに近いサブキャラのミュージックティーチャーや千鶴子。彼ら彼女らは皆、人がもつ一生懸命さを様々な形で見せてくれて、だから応援したくなるのだと思う。同じように五郎も、そして今週のもう一人のメイン・梅も、自分の生きる道に一生懸命で、応援したくなる。明日を楽しみに待つ。

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