4.31
5 250件
4 20件
3 2件
2 0件
1 49件
合計 321
読み めいたんていぽわろ
放送局 NHK BSプレミアム
クール 2020年4月期
期間 2020-04-04 ~
時間帯 土曜日 17:10
出演
https://www4.nhk.or.jp/poirot/
2020年はアガサ・クリスティーの生誕130年を迎える。
節目の年に、彼女が生み出した大人気シリーズ『名探偵ポワロ』ハイビジョンリマスター版の第1シーズンから第6シーズン(全45回)を放送。
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このシリーズでは、舞台演劇が挿入されることがしばしばある。ここでは冒頭にシェイクスピアの戯曲「マクベス」が上演されている。初めに映し出されたのはマクベス夫人を演じている女優ジェーン。劇終了後に、演劇中に拍手をして彼女を侮辱した夫であるエッジウェア卿と早速の仲たがい。これから起こることは何となく予想できた。

そして、お馴染みのポワロのオフィス。やはりポワロには隠遁生活でガーデニングするより探偵業が似合っている。過去の事件ファイルの置き場所を指示するミス・レモンも生き生きしている。現役復帰を決めたポワロの片腕として再び活躍することが期待される。

ベラ(ゴルフ場殺人事件の後に結婚したヘイスティングスの妻)の故郷であるアルゼンチンからの帰国したヘイスティングスが衝撃告白。嘘の投資話に引っかかって財産を失ったということ。でもジェーンがしたように妻から離婚を切り出されるということもなかったらしい。妻ベラの包み込むような優しさを称えるヘイスティングスが愛おしく思えた。

そして、招待されたカーロッタのものまねショーで気晴らし。その中のヒトラーの風刺劇は楽しかった。このカーロッタの声には聞き覚えがある。「ドラゴンボール」の孫悟空の声でもあり、古くは「銀河鉄道999」の鉄郎でもあり、さらに遡ると「いなかっぺ大将」の風大左衛門である。美しい女優からわんぱく小僧の声まで幅広いアテレコをする野沢さんは凄い人だと思う。このショーでジェーンとポワロが初対面。ここでジェーンがポワロを巻き込んだことが身の破滅につながった。

離婚がうまくいきそうでジェーンがポワロの頭にチュッ。ポワロも男。まんざらでもなさそう。「ポワロは惚れません。観察するだけです。」と言いつつも内心はホクホクしている。しかしジェーンは偽りの仮面を被っている。離婚の手紙をエッジウェア卿から受け取っていないことも嘘だし、このジェーンのはしゃぎようがお芝居だということも、ここでは全く知る由もないポワロ。上手く騙されている。そしてヘイスティングスが泊っているホテルのフロントで、謎のヴァン=デューセン婦人とニアミス。この婦人がアリバイづくりのためのジェーンの変装だったとは誰も気が付くはずがない。さすが女優である。

コーナー邸の晩餐では、ジェーンの顔がちらっと映ったが、まさしくジェーンを演じている女優だった。入れ替わってはいない。でも電話でしゃべっているときは顔が映らなかったし、電話ボックスの相手の女性も後ろ姿だけだった。そこからエッジウェア邸にジェーンとして戻ったときも顔がわからなかった。このときは自宅に戻った女が偽物ではないかと思っていた。使用人たちを騙せるものなのかな?と不思議だった。まあ旦那と別居中ということであまり交わりがなかったことから、それもありかなと感じた。しかし違っていた。本物のジェーンが戻ってきたわけだ。これまた不可思議だった。

エッジウェア卿と前妻との娘であるジェラルディンの犯行当夜のアリバイが、ロナルド・マーシュとともにオペラ鑑賞。演目はモーツアルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」。つまり女たらしの「ドン・ファン」だ。このオペラのエピローグにおけるドン・ジョバンニの地獄落ちは、女性をないがしろにするエッジウェア卿の死と重なる。ただ、実はジェーンも男ったらしだった。性は違うが、ジェーンとも重ね合わせるとができた。

カーロッタがものまねのプロで犯罪に深く関わっているということは、常人では閃かない。でもポワロの頭脳ならば容易であった。しかして彼女も殺された。つばが斜めの帽子を求めたことがわかり、ブライアンが前に帽子デザイナーのペニーのところに行っていたので、彼が共犯なのかなと思っていた。ところが、ポワロ探偵事務所からの帰り際にジェーンの本性を暴露したことで、「どういうこと?共犯ではないのか?」と思わざるを得なかった。この時点ではポワロもジェーンを疑っていなかった。ポワロよりジェーンが怪しいと言っていたジャップ警部の感が当たっていた。

その後、ジェーンを陥れるためにブライアンとペニーが何かを画策していたり、使用人の2人がジェーンがまだ捕まらないのかという話をしていたりして、十分に怪しい素振りをしている。ここがクリスティのうまいところだ。見ているものの頭を混乱させるテクニックに長けている。カーロッタから妹に宛てた手紙にジェーンになりすますいたずらをロナルド・マーシュと示し合わせたことが書かれてあった。でもこれはSheのSを破いてheに見せかけた偽装工作だった。妹はまんまとひっかかった。また、金を盗んだ執事オルトンの逃避行からの転落死も話を紛らわせるためのクリスティの作戦。こうなってくると、何が真実で何が虚偽かわからない。

また、「パリスの審判」の誤解は、前の晩餐会で話をしている映像がないので、ドナルド・ロスの疑念がどのようなものだったかは、見ている者にはわからない。しかし、これらバラバラに思える出来事が一本の線でつながるのだ。点をつなげて線にできるポワロの頭の中身はどうなっているのか見てみたい。

謎解きのシーンでは、ポワロはいつものように「全員が容疑者だ。」というカマをかける。ヘイスティングスの「本当はその逆だった」という言葉がヒントになり、多くの登場人物の中から真犯人を言い当てた。犯行の一部始終もまるで見ていたかのように解説した。離婚するとカトリック信者であるマートン侯爵とは結婚できないというのが動機。ま~、本当に複雑怪奇で手が込んだ犯罪だった。そういえばこの物語の冒頭の「マクベス」第1幕の魔女たちの予言の場で、「綺麗はミニクイ」という言葉を繰り返すシーンがある。まさしくジェーンの美貌とは真逆の心の中を表していると感じた。うまいプロローグだったのだと、後になって感心させられた。

ラスト、ポワロたちの投資話を断わり「銀行に預けますよ」というヘイスティングスの笑顔で終わったのが洒落ていた。愛すべきキャラたちがいるからこそ、ますます惹きつけられるのだ。

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名前無し

犯人の殺人動機としては、遺産目当てが一番多い。今回もそうだった。自分が育てられなかった子に自分が母だと打ち明けられない女のその子を思う気持ちが動機につながった。少し前の≪謎の遺言書≫の犯人も母の思いからの犯行だったが、それよりも切なかった。

大鏡のオークションで、90ポンドまでしか出せませんと言いつつも、110ポンドまで頑張り見栄を張ったが、さすがに120を出されてはポワロでも引き下がざるを得なかった。ポワロのオフィスに似合うと感じたので、残念だった。それを競り落としたシェブニックスはポワロを相手にしても有無を言わさぬ傲慢っぷり。きっとこの人が殺されるだろうなと、この時点でわかった。

一転して、ルースとレイクの極秘結婚式の式場。え?なになに?この成り行きは?すごい唐突だったので戸惑った。式場外の物陰からのぞき見するご婦人はだれ?という思いもあったが、このシーンではわからない。後にシェブニックスの秘書のミス・リンガードだとわかった。そして、これが犯人の殺人動機につながるシーンだった。

汽車に乗ってシェブニックス邸に向かうポワロとヘイスティングスの座席に来て、いきなり親しげに話しかけ、シェブニックスの態度を愚痴る娘スーザンとは何者?またまた頭の中大混乱。人物の初登場のときには、名前と職業と主要人物との人間関係などをテロップ表示するとよいと思った。そうするとわかりやすくなると思う。

汽車から降りて合流したヒューゴの仕事は何?前衛的な金属家具の開発者かな?金属のソファーに座らされたポワロが「これは座り心地がよいですね」ではなく、「とってもよくできていますね」という感想を述べたのは、ポワロのヒューゴに対する気遣いかと思われた。

シェブニックス邸での事件当夜、事件解決へのヒントが満載で、逆にパニックになるパターン。ほんとうに視聴者泣かせだ。

・8;08に最初のドラ、8:15に2度目のドラを鳴らすことになっていたが、8:06にドラが鳴ったと主張するヘイスティングス。
・泥が付いていたルースの靴に目が行ったポワロ。
・書斎前でミス・リンガードが何かを拾ったのを見逃さなかったポワロ。
・内側の掛け金が、外からドアを閉めて下りることを発見したポワロ。
・瓶が開けられただけで中味が減っていないシャンパンに疑問を持ったポワロ。
・シェブニックス氏が左手に拳銃を持っていて利き手はどっち?と問いかけたポワロ。
・真鋳の置物についた鏡の欠片を発見したポワロ。
・ピストルの弾はどこ?と疑問を持つポワロ。

これらがどうつながるのか、事件直後では「大いなる謎だ。」というしかない。

その後、
・ルースが私生児であり、母から分かれてシェブニックスの養女になったという事実。
・ミス・リンガードが母子を描いた絵画を撮影していて、自分と母の絵を重ね合わせている様子。
・遺言書が2通あり、署名をされてない新しい方には、ルースとヒューゴが結婚しない場合は、遺産のすべてがシェブニックス夫人のものになるという内容であったこと。
・ルースがレイク夫人になったことを知り得たということ。

これらのことから、思考回路がピピピっとつながり、犯人も動機も犯行方法もわかってしまうのだからすごすぎる。皆を集めての謎解きシーンでは、例の如く、無実と分かってる人々にも動機があるといたぶる。でも今回は真犯人をあぶり出すためにルースを犯人と断定する。それにひっかかったミス・リンガードは、フェブニックス夫人に罪を被せるべくサフラのお告げにかこつけて自殺を強要した。そこを現行犯逮捕。先を見通したポワロの何とエゲツナイ作戦であろうか。

後日談がなかったので予想するしかない。レイクは資金調達の役目だけで詐欺の意図はなかった。また最初の遺言書が有効なのでルースにも遺産が渡る。愛ある2人は幸せに暮らしたのではないのかな。ヒューゴにも遺産が渡り、スーザンとも結婚し、この2人もより良き人生のパートナーになったのではないか。そして、シェブニックス夫人にも遺産が渡り2組の夫婦とともにより良き老後を送ったのではないか。願望を含めてこんなことを考えた。

とすると、ミス・リンガードは自分の身を犠牲にして、シェブニックス氏以外の人たちを幸せにしたということになる。これはもしかしたら、娘を立派に育ててくれたシェブニックス家への彼女なりの恩返しだったのかもしれない。

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名前無し

今回は、若き日のポワロの犯罪捜査の様子と、ほのかな恋心が見られる過去と現在が交錯する物語であった。この物語は、これまでのポワロシリーズの中でも、良い意味で異色で魅力的な作品であると感じた。

初めから夫婦の言い争いの真っ最中。カトリック教会への信仰か、リベラル思想の旦那ポール・デルラールへの忠誠かどちらかを選ばせるとは、なんというトンチンカンな選択を妻にさせるのだろう。イケメンなのにもったいない、と感じた矢先、部屋を飛び出した妻マリアンヌが長い階段を転げ落ち亡くなった。初めから波乱含みである。生々しい落下を演じたスタントウーマンの方、怪我しなかったかなと心配になってしまった。

ジャップ主任警部の≪黄金の枝のコンパニオン≫の受賞は、かなりの部分はポワロのおかげ。でもポワロはジャップ警部を立てることを忘れない。以前にはジャップ警部がポワロを称賛する講演を行った(EP16二重の罪)。この2人は、時にはおちょくり合うが、深い信頼関係で結ばれている。

会食の夜、ここでもドイツの専制君主批判を交えたカトリック教会論争。就寝前にカトリック信者であるマダム・デルラールは十字架を握りしめ、神に向かって何を祈っていたのだろう。「不遜な息子を死に追いやろうとしている私をどうぞお許しください。」だったのかもしれない。

ポールの書斎の机上には緑とピンクのチョコレートの箱。色が異なる本体とふた。犯人が毒を仕込んで戻すときに間違えたのだ。これは、ふつう誰しもが見過ごして気にも留めないこと。しかしポワロは注視した。一視聴者としては、このことがどのように事件解決につながるのかは、この時は思いもつかないことだった。

ポールの検視法廷では、事実は解明されなかった。現場に残っていたチョコレートの欠片さえ調べなかった様子。上層部のだれかがプシェール警視に隠蔽を命じたと思われるが、はっきりとしなかった。一時は、マダムと同じ保守的な考え方を持ち、ポワロに敵対心むきだしだったサン・タラール伯爵だったのかもしれないと思ったが、後の流れで、それは違うことが分かった。

それにしてもビルジニーの悲哀を含んだ笑顔にはまぶしさを感じる。そして彼女が登場するときにピアノが奏でる音色がロマンを醸し出していた。ポワロはご執心の素振りは見せなかったが、内心彼女に惹かれていたのだと思う。それは、彼女から贈られたブローチが一生の宝物になっていて、肌身離さず身に着けていることが物語っていた。

マダムが毒をチョコレートに仕込んでいる姿は何かに憑りつかれていた。それはたぶん、独裁国家の属国にならないための公的心情によるものであったと思う。つまり私的な血縁関係よりベルギー王国の平和な未来を選んだのだ。このマダムの行為が称賛されるべきかどうかは、現代人にはわからない。でもビルジニーやポワロは、大勢の民を一時の困窮から救ったマダムの行為をかばった。それには、息子の罪に対するマダムの世間へのしょく罪意識への同情や、命が長くないということからのマダムへの温情も含まれていたのかもしれない。結果ポワロは、マダムのために自分の非礼な態度を正当化しなかった。自分の名誉を犠牲にしたのだ。これがポワロだ!と感じた。普段は誠実だけれど、やむを得ず罪を犯してしまった人を思いやる気持ちを持ち合わせた探偵であると改めて認識した。後の「オリエント急行殺人事件」の苦悩の決断にも見られるような人間味あふれるポワロの内面の一端がここでも感じられた。

ビルジニーとの再会は、感慨深いものだった。母になったビルジニーはますます気品に満ちあふれていた。ポワロは昔を懐かしむように襟につけたブローチに手を添えた。そして、彼女が差し出した手にキスをした。これは「良き思い出をありがとう。」という感謝のキスだったに違いない。

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久しぶりに、ヘイスティングスとミス・レモンに日が当たるストーリーだった。そして、わかりやすい内容でもあり、楽しく拝見させてもらった。

冒頭のオフィスでのピッツィーニとアスカニオとのやりとりは、この時点では何のことだかわからないが、後々に「ああそういう場面だったんだ。」とわかる筋書き。

ヘイスティングスが、7週間通い詰めても新車購入を決めることができなかった理由は、揺れを緩和する装置スタビライザーが付いていなかったことに懸念を抱いていたんだ。やはり根っからのカーマニアだ。ポワロに「優柔不断」とやり込められていたが、このヘイスティングスの長らくの躊躇は納得できた。

午後の出勤時間に遅れてきたミス・レモンのお洒落とソワソワ感に何かあるなと思ったら、やはりね。ミス・レモンの恋バナは初めて。ここでは良い方向に進むといいなと思っていたが、しかし……

グレイブスの初登場シーンでは良さそうな人柄に見えたが、ポワロのドラマでは人は見かけによらず、である。自前の船を所有していることを写真を見せて自慢げに話したり、重要書類が盗まれて恐喝されているとか並びたてたりしたのも、すべて嘘八百であった。

鏡に映った自分自身を見ても凡人ではなかなか思いつかないことをポワロはハッと気づく。その像はまさしく虚像。フォスカティーニが被害者というのも虚像であり、実像は恐喝者であった。ファブリ嬢が叔父と言ったのも、主人がその人に恐喝されていることを知られたくなかったのであろう。

グレイブスが2人前のディナーを自分で食べてしまったのは大失敗だった。被害者の胃の内容物を検査すればわかることで、これに気づかないとは大まぬけというしかない。

犯人追いかけてヘイスティングスの愛車クラッシュ事件は以前にもあったが、今度もカーチェイスの末、新車の前方がぺしゃんこ。本当についてない。でもヘイスティングスの怒りの一撃は、もてあそばれたミス・レモンへの友情の証。ヘイスティングスはこの事件で男を上げた。

一方のミス・レモンは、グレイブスに未練はなかった。理由は、既婚者(結婚詐欺師?)であったということより、犯行を見ていたシャム猫を始末しようとしたからだ。もしかしたら強がって見せていただけかもしれないが、ポワロは彼女の様子に一安心。でも猫好きのミス・レモンはこのシャム猫をポワロのオフィスに連れ込んだ。案の定、ポワロとは犬猿の仲になりそうな雰囲気だった。シャム猫の威嚇に対して、ポワロも負けじと「シャッ」と威嚇したのには、笑い出したくなった。物語にはなかったが、この後ミス・レモンは、以前天国へ旅立った愛猫(EP35「負け犬」で紹介された)の代わりに、家猫として飼うことにしたのではないかと想像した。

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名前無し

「犯人は最初に登場する」「犯人はポワロの傍らにいる」「犯人はもっとも犯人らしくない人物である」このアガサの3原則を地で行く作品である。人間関係が複雑でミスリードネタが多く、いい意味で視聴者泣かせの物語だ。そして、犯人の手記をもとに進行するというこれまでにはなかった手法になっている。

ポワロは引退し、キングズ・アボット村に居を構えた。川に石橋が架かっている風景は、スタイルズ・セントメリーで戦時訓練をして歌を歌いながら行進していた橋に似ていた。そう思い「スタイルズ荘の怪事件」を見直してみたが、少々形が違う橋だった。同じ場所での撮影でないことがわかった。

およそガーデニングなど縁のなかったポワロだが、巨大に育たなかったトウガンに対してムキになって「殺してやる」怒っていたのを見て、引退しても拘りのあるポワロは健在だと思い笑えた。

例のごとくアクロイド殺しにかかわる人物が次々に現れる。その中でもドロシーの死は本当に自殺?ということと、ラルフと女性(壁の陰で姿が見えない)の遺産相続の会話を立ち聞きするキャロラインの「フローラでもおかしいわよね」「フローラが別人だともっとおかしいわ」というセリフが気になった。視聴者に「どういうこと?」と疑問を抱かせるシーンやセリフの挿入はうまいと思った。

アクロイドとドロシーが恋仲であり、ドロシーが犯行に及んだ亡き暴力夫殺しを誰かに嗅ぎつけられゆすられていたと告白したことが、アクロイドの命を縮める原因だったのかと感じた。フローラのパーカーに対しての「おじさまは今夜は邪魔しないでほしいと言っている」は何か含んでいる感じがしたが、どのような経緯でここにいるのかはわからなかった。ドクター・シェパードが受け取った電話はパーカーでないとするとだれからか?この時点では謎だらけだと思った。犯人の足跡がはっきりつきすぎていることが作為的であったので、外からの侵入者ではなく、この夜アクロイド邸にいた人物が犯人であることが予想できた。フローラの証言が曖昧だったのは、アクロイドの死体を見つけたフローラが、ラルフが殺ったと思ってかばっていたのだろうとこの時点では思っていた。しかし実際は違っていた。

ポワロとジャップ警部との再会はおもしろかった。ハグしようとしてぎこちなく握手に変えたのは、友人だが心を許せるまでではなく、ライバル心を持っているということを印象付ける演出だったのではないかなと感じた。布の切れ端を見つけた2人を少し離れたところからパーカーがのぞく。パーカーも怪しいと臭わせる行動をする。本当に上手いつくりになっている。でも封筒が1通減っていることに気づいたパーカーも命を奪われる羽目になる。ということは、その場にいた人物が犯人だとわかり、真犯人が絞られる。

池の中の婚約指輪、小間使いのエプロン、観察眼の鋭いポワロの本領発揮だ。小間使いアーシュラの身元を調べ始めたが、この意図が見えなかった。ポワロの頭脳の行き先は及びもつかない。後々、ラルフとアーシュラが夫婦だとわかったとき、この2人は犯人ではないことを確信した。もちろんこの2人はパーカーの封筒紛失発言のときにはいなかった。

ポワロが「犯人は明日わかります」で関係者を帰したのは、逃がすという意味だったと後でわかった。ポワロの気配りにはいつも感心させられる。真犯人自らが、犯人の心情や行動を予想しながらおのずと自白に導く手順はお見事。だれがドクターに電話を掛けたのかもわかり「なるほど」と思った。瞬時の出演者にも役割を持たせていて、本当に凝ったつくりになっていた。そして、わかりやすい謎解きでスッキリした。妹のキャロラインが車にあったピストルを自分のバッグに忍ばせた。ドクターに渡すつもりだったわけだ。案の定ドクターは自ら命を絶った。これは妹の罪を犯した兄に対する温情と捉えたい。

今回の視聴で、「アクロイド殺し」は、小説のみならず、映像作品の中でも傑作中の傑作であることを確認できた。

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名前無し

このシリーズはプレミア級だ。特にポアロ役のスーシェが良い。自信家のポアロを見事にこなしている。遊び人のヘイスティングスも適役。ただミスレモンはもう少し若ければ良かったかな。

数々ある「オリエント急行殺人事件」中でも、このシリーズ中の作品が最高傑作だと思う。できればラストエピソードの「カーテン」まで放送してほしい。

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名前無し

リー家はみんなうさん臭くて誰もが犯人になり得る。しかし実際は、意外過ぎる犯人像。この犯人はポワロにしかわからない。というか、ポワロがいなければ迷宮入り確実の事件であった。

冒頭から、クリスマスなのになぜか南アフリカの荒地が映し出される。タイトルと内容を取り違えているのではないの?という疑問が湧く。若い男2人が、何か採掘している様子。これはダイヤモンドか。そういえば昔、地理で習ったことがある。とすると、ここはダイヤの名産地キンバリー付近かな。

相棒を殺し傷を負ったシメオンを助けた女ステラが、メインストーリーにおける真犯人の母親だと明かされるのはラストまでお預け。そこで初めて、なぜ南アフリカの過去シーンを挿入したのかわかる設定。

南アフリカ採掘シーンの40年後の世界にポワロは名探偵として生きている。車いすに乗っている老人はだれ?ああ、なるほど40年後のシメオン・リーか。彼は爺になっていて、大邸宅に住んでいるのだな、と頭の中では時空を飛び越えるのに少々時間がかかった。

ポワロがクリスマスで事件に巻き込まれるきっかけは、セントラルヒーティングの故障。ポワロの冬はこれなくしては過ごせない。だからこれがあるところに出向く。≪盗まれたロイヤルルビー≫でもそうだった。まあこの成り行きは定番。

事件当夜のあのおぞましい大音響は、二度と耳にしたくない不思議な響き。後で死んでいく豚という風船の音だとわかるが、この時点ではどのような殺され方をしたのか、想像もつかない。

ジャップ警部の奥さんの実家?に集って、みんなで≪ディンドンメリーオンハイ≫の合唱をしている。ということは、人々の中に、ジャップ警部の奥さんが混じっていたのは?もしかしたら、ピアノを弾いていた女性かな。

サグデン警視が頻繁に画面に映る。警官なのに少々出過ぎ、セリフあり過ぎ状態だったことで、変だなと思い始めてきた。そして、偽ピラーの、シメオンの若いころはサグデン警視に似ていたのでは…という発言を聞いて、警視は逃げるように場を去ったことで、さらに疑わしく思えてきた。しかし、警察官がまさか…という思いの方が強かった。

ときどきちらっと出てくる黒いヴェールを被った老婦人は何者?という疑問を持ちながらも、わからないまま物語は進行する。教会での合唱隊のクリスマスソングをどのような気持ちで聞いていたのだろうか。後で「してやったり」という感情が勝っていたことがわかる。

ミニチュア日本庭園の石に紛れさせて盗んだダイヤを置いておくとは考えたもの。リディアをはじめとするリー一家を陥れる犯人の罠だった。

「犯人は家族の一員でよそ者」というポワロの発言は意味深。かなりのところまでわかっているが、まだ確証はない。

謎解きシーンでは例のごとく、全員が容疑者と豪語し、それぞれの痛いところを突きカマをかける。「あなたがたの仲が悪いことは筋書きで…」という推理は≪スタイルズ荘の怪事件≫で学んだことを生かしていると感じた。

ステラの家へ全員で出向いて、最後の種明かしをする。ポワロたちが訪ねてくると、ステラは「何てこと」と観念した様子。その後に帰ってきたサグデンも白状した。でもこの母子にはやり遂げた感があった。最初の南アフリカシーンでは、ステラが誘っていたように思えたが、映像にないところで、シメオンが愛の言葉をささやいたのかもしれない。そして金を持ち逃げされたということも大きかったのかもしれない。この親子にとっては、復讐心こそが生きる糧になっていたのだろう。本当に怖いものだ。

今回は、ジャップ警部からのクリスマスプレゼントのお返しを買いに行ったグッズ店のいたずら用品から、犯行の手口を思いついたポワロ。ジャップ警部は間接的にポワロの頭脳の回転をアシストしたことになった。

そしてイギリスの少年少女合唱隊によるクリスマスソングが、惨い殺人事件の中に清涼感を与えていてホッとした。

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このエピソード37は、アンドルーを中心にした人間関係がまったくもってわかりずらかった。「だれがどのような立場?」「だれとだれとがどのような人間関係?」「だれとだれとが親子?」などの疑問を持ちながら、5回リピート視聴してようやく全貌がつかめた。

まず、新年パーティーでの財産分与のトークシーンで、「バイオレットにはあげないの?」と言っているのは、マディングリーの学長であるミス・カンピオン。彼女がなぜバイオレットに肩入れしたかは、謎解きシーンで納得した。そして「後見人として溺愛しているのに何もあげないんですか?」と援護射撃しているのは、マダム・シダウェイ。このときは、犯行の意思は持ち得ていないことがわかる。

そしていきなり10年後のケンブリッジ大学での激論会。そこにかつて遺言書したためたアンドルーが参加している。そして「導くものは男性、従うものは女性、これを推奨したのは女性なのです。彼女の名は母なる自然です。」と男尊女卑発言を連発。「これって、どういうシチュエーション?」と思わざるを得なかった。

アンドルーの死に際して、医師のプリチャードは「検死の必要はない。私が死亡診断書を書く。」と言って「心不全」という曖昧な死因を記す。そして2年前にマーガレット・ベーカーとアンドルーが手を握るシーンを見て2人が親密で「2人の間には息子がいるのでは?」とポワロに告げ口をする。このことの真偽はこの時点ではわからないが、「プリチャード怪しいぞ。」とも思えるようなシーンだった。

遺言書の紛失発見シーンでは、「バカなことを言わないでよ。あなた。」はマダム・シダウェイ。この言葉からは「彼女は真っ当な人物か。」と思えた。「ないはずはないでしょう」とにやにや顔のベーカー巡査部長の方が怪しかった。

後で発見されたプリチャードの薬瓶はマダム・シダウェイが置いたわけで、ジャップ警部が早合点してプリチャードを拘束しに来た時点でプリチャードの容疑は自分の中では晴れた。

ミス・カンピオンの後ろに立ち、エスカレーターから突き落とした人物は、男性用のコートを着て骨格がよかった。顔が見えなかったので、犯人は男性かな、と思わざるを得ない。視聴者を欺く巧みな演出であった。カンピオンがポワロに会いに行くと聞いていたロバートの犯行かと思わされたが、彼は犯人にミス・カンピオンの行先を報告しただけだったわけだ。

今回ミス・レモンは活躍しないのかなと思っていたが、治療記録保管室で出生の秘密を探り当てた。有能な秘書としてだけではなく、ポワロの助手としての才気が見られてよかった。彼女の勝利の微笑は有頂天の満足顔だった。

ロバートにカマをかけて、マダム・シダウェイをあぶり出したいつもながらのポワロの手法は見事。マダムがあの治療記録保管室のある病院で働いていたことが自白によってわかり、大いに納得した。

ラスト、孤児ではなかったということがわかり、母親の車椅子を押すバイオレットの満面の笑顔に救われた。

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「きっと、この人が被害者になる。」という直感は、視聴を重ねるごとに養われる。ポワロが言う潜在意識が蓄積されるということなのかもしれない。それが当たったときは、ちょっとした快感にもつながる。でも犯人は当てることができない。ポワロの犯人当て推理は常人を超越していて思いもよらない。

今回はイギリスの化学メーカーでの殺人事件。最初に出てきたのは研究室のトレフューシス。同社の研究員かな?まだ事件は起こっていないが、人柄は良さそうなので、犯人には見えないなあ、というのが第一印象。

そこへ書類を盗みに来たネイラー。でも火災のため盗めない。こういう人は、犯人というより、何か別の恨みを晴らすための行為をしていることが多い。トレフューシスが「君は…」と言ったので、以前面識がある様子。その経緯は今のところわからない。そしてこの書類はいったい何? という疑問が残る。後にこの書類は書斎に移される。

ドイツに自社製品を売り飛ばそうとするルーベン社長。金儲けのためなら戦争に使われても構わないという強欲さ。「戦争は失業者を助ける。」とか「ドイツは最初ベルギーを押さえる。」とか言う社長にポワロはカチンとくる。戦争のためにベルギーを追われた彼の気持ちは痛いほどよくわかる。

社長夫人の話し相手であり、書斎の書類を探す美女リリーの正体は?
彼女が木に引っかけ破れたレースの切れ端は何か意味がある?
社長と意見を異にする社長の弟ビクターの苛立ちは真の正義感から?
そのビクターと情が通じている社長夫人に後ろめたさはない?

人間関係の描写から、さらにいろいろな疑問がわき、登場人物全員が怪しく見えてくる。そして、リリーと仲が良い社長の甥チャールズはだれかのシャツに何かがついているのを見て必死で洗う。その後狼狽し逃げて捕まったが、その時点では「ん?今の何だったの?」と思うしかない。

みんな書斎で社長と口論したが、怪しい行動をした人物は犯人ではないことが多いとポワロは感じていたようである。じっと身を潜めていた人物が犯人であると…

その後、テーブルにめり込んだナイフの刃で手を切ったメイドにハンカチを差し出し、メイドの血がついたハンカチにレースの切れ端をくるみ、血を染みこませた意味。これはリリーの真の目的をあぶり出すためにポワロが仕掛けたワナに使う道具となった。しかしテーブルに刺さったナイフの刃は事件には関係はなかったらしい。ここら辺の解釈は難しかった。

ポワロの地図を片手のアナログナビゲートはよかった。リリーが汽車で行くのとほぼ同時に目的地に着いた。乗り物に弱いポワロも車上では役に立つ。そして「おお、そういうことだったのね。」とリリーとネイラーの真っ当な身元が分かり納得。

最初みんなは負け犬でしかなかった。しかし、最終的に犯人と殺害された社長以外は幸せになった。多分、社長の後任には弟のビクターが就任し、合成ゴムはネイラーが開発者となりアストウェル社に採用されたのだと思う。ナチが君臨するドイツには売り飛ばすこともない。これはポワロの尽力以外の何物でもない。

前回までにオカルトパワーに目覚めたミス・レモン🍋は、今回は催眠術を駆使して、社長夫人からカーテンの陰に誰か隠れているという証言を引き出した。それで、ポワロには「口論していない人物はあの人しかいないな。」と目星をつけることができたのだろう。ミス・レモンの大手柄であった。

ラスト、ヘイスティングスのTショット場面で、「ヘイスティングスは理性的ですから、暗示にかかりませんよ」というのは。どうせホールインワンなんかできっこないという、ポワロのヘイスティングスに対する皮肉。でもヘイスティングスは暗示にかかってしまった。見事にホールインワン。ヘイスティングスが理性的ではないということが証明されたシーンで、「なるほど、今回はそうきたか。」と物語の〆にふさわしいエンディングに感心してしまった。

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この小説がつくられた同時期に、ツタンカーメン王の発掘における怪死事件が発生したとされている。当時は≪ファラオの呪い≫として話題になったようだが、アガサはこれにヒントを得たものと推察される。

したがってこのドラマでは、至る場面で無表情のスフィンクス像、アヌビスの目のアップ映像、王が被る黄金の仮面などが映し出され、全体的に古代エジプト王の呪いというイメージづくりに一役買っていた。

ジョン・ウィラード卿(発掘隊のリーダー)➡フェリックス・ブライブナー(発掘隊の資金提供者)➡ルパート・ブライブナー(フェリックスの甥)➡ヘンリー・シュナイダー(メトロポリタン美術館員)の4人が立て続けに死亡したが、1人は病死で、1人は自殺、2人が殺された。特にエジプトから遠く離れたニューヨークにおけるルパートの自死は、呪われ心を病んでのものだと感じてしまう演出であった。それを含めてやはり遺産目当ての犯行であった。犯人は、自分の身体に危険が及んでも、絶対に死なない人物であることが多いとされている。自分も被害者だという意識を周囲の人にうえつけるためだ。そう考えると「多分この人かな」という予想もできた。でも動機を含めた犯罪の全体像は、やはりポワロの口から出るまでわからない設定になっていた。聞いてみると「なるほどね」と納得した。ポワロの洞察力、推理力にはいつもながら感心させられる。

そして、久しぶりのミス・レモンの登場。しかし今回は少し雰囲気が違っていた。タロット占いやテーブルターニング占いを披露し、ミステリアスな一面が見られた、そういえば、「エンドハウスの怪事件」でも、交霊術師に成りきり、謎解きの場で重要な役割を果たした。このようなミス・レモン役には、占星術師であるポーリン・モランが最適であると考え採用した制作者サイドの勝利かな、と思っている。

またミス・レモンが、霊になっても交信したいほどの猫好きということも明らかになった。未だ独り身のレモンにとっては猫が1つの慰めだったのだろう。その意味では飼い猫の死はショックだったに違いない。ラスト、ポワロが発掘現場から持って来たと嘘をついて猫の像をプレゼントしたとき、レモンが正常な判断ができる状態ならば「まあポワロさん、盗掘はいけませんね」「早く返してらっしゃいな」とたしなめたと思う。しかし、それをしなかったのは、よほど猫に飢えていたのではないかなと思い、レモンを可愛らしく思えた。

これからのエピソードで、猫🐈がレモンに癒しを与える場面があってほしいと、願わずにはいられなかった。

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「1、2で靴のバックルとめて…」というマザーグースの歌に合わせてのけんけんぱ遊びは、不気味なプロローグだった。横溝正史の猟奇ものを彷彿とさせた。そしてこの歌が何度も繰り返された理由が、バックルがこれから起こるおぞましき殺人事件の解決への手がかりになることを暗示したものだったと謎解きシーンを見てわかった。

12年前のインドの舞台公演にいた3人が犯罪者と被害者だった。初めの方に登場した人物が犯人であることが多いというアガサの法則は健在だった。

何度もセインズベリー=シールという名前を連呼して、顔のアップの画像を見せたのは、このシーンから別人になったと視聴者に気づかせるためのサービスだったのかなと思った。歯医者を訪ねてきたときに初めて入れ替わったわけだが、初見では「えっ?この人って、ちょっと顔違ってない?」と思った程度だったが、2度見して「やっぱり違っている。」と確認できた。

ポワロ➡フランク=カーター(クレーマー)➡アリスティア=ブラント➡偽セインズベリー➡アンべリオティス➡ピナー婦人という診察順がなければ、この物語は成立しなかった。特にアリスティアと偽セインズベリーは連番でないと犯罪は成り立たなかった。2人で示し合わせて同日の隣り合わせの時刻を予約したのだろうと想像した。他の犯人候補たちも怪しげに振舞っていて、上手につくられていると感じた。

アリスティア=ブラントの秘書ヘレンは変な髪型で、厚レンズのメガネをかけていた。「猟人荘の怪事件」や「雲をつかむ死」でもそうだったが、素顔を知られまいと不細工メイクをしている女性が真犯人か共犯者であることが多いと感じている。

複数の登場人物の別々な生活、行動を見せておいて、どこかのスクランブル交差点でそれらの人々が一斉に交わり同一事件に関わるようになる。今回は、モーリー歯科がその場所だった。このような手法は、多くの推理作家が小説で取り入れていて、事件をよりミステリアスにさせるのに有効で、面白さが増す。

今回、ポワロ(Poirot)をポイロットと英語読みした歯科ボーイが滑稽だった。

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「全員が疑わしい」というポワロの言葉の通り、容疑者が大勢いる上、だれがだれとどのような関係であり、どのような殺人動機を持ち得たのかも、なかなかわかりずらい。リピート視聴をしてようやく「なるほど!」と感じ、理解することができた。

セーヌ河~モンマルトルの丘で、ポワロがジェーン・グレイ(スチュワーデス)と知り合う。後にジェーンは、事件解決のためのポワロの良きパートナーとなる。このシーンでは、ポワロが初対面のジェーンの落とし物を拾ってあげた後に気軽に話しかけ、サクレクール寺院を「巨大なバースディケーキのよう」と表現したりして、気さくな一面が見られた。

ポワロの宿泊しているホテルのロビーでは、セシリー(ホーバリ卿夫人)、スティーブン(ホーバリ卿)、ヴェネシア(夫妻の友人)、マデリン(夫人の小間使い)の4人が登場する。ここでは、セシリーが高慢な性格であり、ホーバリ卿とヴェネシアがなだめ役に回っていることがわかった。また、独特な髪型のマデリンは、不愛想にうつむき加減で階段を降りてきて、「この人、なんかあるのかな?」と思えるような態度だった。まだ事件は起きていないが、怪しいと思える人物の第1号がホーバリ卿夫人、第2号がマデリンであると感じた。

全仏オープンテニスのクレーコートでの試合は、当時をかなりリアルに再現してると思われて、とても良かった。ここでノーマン・ゲイル(歯科医)とジェーンが隣席に座り、知り合いとなる。ゲールは「あなたに、あやまらなくっちゃ。僕の応援うるさかったでしょ。」と心優しい紳士の一面をのぞかせた。また、ホーバリ卿夫人とマダム・ジゼルとが顔見知りであることも暴露された。後になってジゼルが悪徳金貸しとわかるので、このシーンでは、「このおばあさん何者?」というぐらいにしか感じなかった。

その後、ホーバリ卿夫人がギャンブルにハマっているシーン、ホーバリ卿とヴェネシアが手を組んで歩いているシーン、ホーバリ卿夫人がジセル宅に乗り込んで暴言を吐くシーンが挿入され、頭の中は大パニック。でもこのこま切れシーンの連発が、人間関係を複雑にし謎解きを難しくさせるアガサの巧みな前振りテクニックだと感じた。

様々な人間関係を「これでもか」と見せつけておいて、犯行現場の飛行機内ではジャン・デュポン(考古学者)とダニエル・クランシー(探偵作家)を初登場させ、さらに犯人候補を増やす手の込みよう。これには「何してくれるのよ」という思いが沸々とわいた。

漠然としていてとらえどころがないさまや、到底実現できないさまを「雲をつかむような話」と言う。ふつう飛行機内という密室の中での殺人は不可能な犯罪である。しかも機内での犯罪は、自分が容疑者となる大きな危険をはらんでいる。しかし犯人はそれをやってのけた。ジャップ警部がポワロに良いことを言っていた。「犯人は心理的瞬間を選んだ。」と…この言葉によって、ポワロの目の前が開け、事件解決につながったのであろう。

さらにジャップ警部は、犯人の所持品の中に白衣、脱脂綿、空のマッチ箱を見つけた。これらがポワロの頭脳の中で1つにつながった。いつもはポワロに出し抜かれるジャップ警部だが、今回は重要な役割を果たした。

新聞記者に変装させて芝居をさせたのは、犯人を特定するためのポワロの見事な手口。実はポワロの掌の上で上手に踊らされていたわけだ。これは≪エンドハウスの怪事件≫で幽霊役を買った真犯人がポワロに一杯食わされたのと同じ。ポワロは演出家の才能もあるのか、と思わざるを得なかった。

ラスト、はかなく消えたジェーンの恋心。ポワロの「好きだったのではなく、愛していたのです。」は、ジェーンへのせめてもの慰めの言葉。でも、自分を愛していたからこそ、共犯者の殺害を躊躇しなかったと気づかされたのであろう。純情なジェーンはこの言葉によって、うれしさと悲しさが入り混じった複雑な想いを抱くことになり、さらなる涙があふれてきた。見ている側も切なくなってしまった。

いやはや、前回といい今回といい、長編のミステリードラマの推理は入り組んでいて難しい。でも犯人らしからぬ意外な人物が犯人であると確信することができた。

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よく言う「大どんでん返し」が味わえるクリスティの不朽の名作である。思いもよらぬ殺しのテクニックは、他に類を見ない。

このドラマのMVPは、何と言ってもアリス・アッシャー婦人を演じた女優。不謹慎な言い方と承知の上だが、これは本物以上の出来栄え。後にも先にもこれほどお見事なご遺体はないだろう。本当に魂が抜けているとしか思えない。大ベテランの俳優は、極悪非道な悪党か立派な遺体を演じられれば一人前というが、これは正にそれが実った最優秀ご遺体大賞である。

次点は、ベティー・バーナードを演じた女優。これもどう見ても殺されたご遺体である。天国に逝っている目のつくり方が非常にうまかった。このストーリーの演出家は異常なまでにご遺体演技に拘っていたとしか思えない。

さらに、アレクサンダー(A)・ボナパルト(B)・カスト(C)を演じた男優。本当に印象に残らないセールスマンを上手に演じていた。悪人の巧みな誘いに騙されやすく、洗脳されやすそうなオドオド感もよい。吹き替えをしていた人も上手だった。

ただ真犯人だけは異質な存在に思えた。目立ってしまっていた。一見落ち着いているようで、内心けっこう舞い上がっている様子が表れていた。ポワロに積極的に話しかけたり、ポワロのサポーター隊の結成を提案したりして、「この人怪しい?」という想いが出てきてもおかしくない設定であった。初登場場面から、もう少し一般人の考え方やもの言いをしてくれれば、怪しむことはなかった。ここがマイナスポイントである。

話の中では、ヘイスティングスのカイマン仕留めの自慢話をポワロとジャップ警部に遮られ、「ありゃあ可哀そうに…」と思ってしまった。でも最後にカストと馬が合うことがわかり、笑えた。

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男女共謀しての犯罪は、「スタイルズ荘の怪事件」の他いろいろあったが、単独犯のときよりより手が込んでいて推理が難しい。このストーリーも例に漏れなかった。

ヘイバリング夫婦は2人とも「ミドルトンさん」という名前を多くの場面で口に出す。これは、猟人荘にいる人々に、夫人のゾイ・ヘイバリングと家政婦のミドルトン夫人は別人であるという意識を植え付ける印象操作であった。特にライチョウ猟の後のパーティーにおいて、夫のロジャー・ヘイバリングが、ミドルトン夫人に変装した妻ゾイに向かって、
「ミドルトンさん、家内はどこです?」
と話しかけ、その後変装した妻が
「お部屋においでです。耳鳴りがするとおっしゃっていました。」
と返した。これは人を欺く夫婦の巧妙なお芝居であった。

以後も偽りの夫婦演劇が続くが、皆が騙される中、ポワロだけが真実を見抜いた。ただ今回も、怪しいと見抜くまでのポワロの灰色の脳細胞の動きは直接TV映像では見られなかったので、個人的に解釈してみた。見つかった本物のミドルトン夫人の口から、「素敵なアイルランドの婦人が迎えに来たとき、突然家政婦はいらないと断られた」という旨が語られた。そのときのポワロの頭の中では、

【なぜ本物のミドルトン夫人は、そのご婦人がアイルランド人だと思ったのか?⇒アイルランド人の女性の特徴は何?⇒そうだ!グリーンアイ(緑色の目)だ!⇒猟人荘にいる緑目の女性はだれ?⇒あっ、ヘイバリング夫人のゾイだ!⇒ミドルトン夫人はアイルランド人とわかっているからグリーンアイを持っている可能性が高い。⇒もしかしたらゾイとミドルトン夫人は同一人物か?】

こんな感じだったのかなと推測する。画面をよく見ると、ゾイを演じている女優さんの目はグリーンアイである。このことは自分の憶測にすぎないが、もしそうならば、実在する家政婦のミドルトン夫人の名を語ったのが、この夫婦の命取りになったのかな、と思った。

そして、偽ミドルトン夫人が置いていった洋服に目をつけ、かわいく賢いワンコの鼻を頼りに、まずは自転車探しでその能力を試した。そして本番の犯人特定も大成功。ポワロの策は見事に当たった。

ラスト、自転車を見つけてあげた恩につれない仕打ちで返され憤慨しているポワロを、ジャップ警部がおちょくったり、ヘイスティングスがポワロの言葉に同調したりして、3人仲睦まじい様子が見られて心和んだ。3人が立ち去っていく後姿に彼らの心の絆が垣間見えた。

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ポワロさんとヘイスティングスが興じている≪モノポリー≫ゲームと現実に起こっている殺人事件とのコントラストが見事でした。特にプロローグシーンでは、ゲームで使う革靴やシルクハットのコマを動かした直後に、実際の革靴とシルクハットがズームアップされ、映像の妙を感じました。また、スコットランドヤードでジャップ警部が最新式の中央指令システムで容疑者を追い詰めるシーンでは、動かすコマが車であり、こちらは何となく≪人生ゲーム≫が頭に浮かびました。

ポワロさんは、頭取が怪しいと薄々気づいていたのだと思います。でも確信がありませんでした。そこへ、ヘイスティングスが「ダブル(ぞろ目)だ」という助け船である一言が入りました。このときのポワロさんの灰色の脳細胞の動きは、

「ダブルだ」→「同じ数字が2つ」→「同じ人が2人」→「ウー・リンが本人自身と偽物の2人いると辻褄が合うぞ。」

だと思います。もしそうだとしたら、やはりポワロさんの頭脳は明晰ですね。でも預金ではポカをやらかしてしまうなど失敗もあるので、ポワロさんは可愛く思えます。

今回、ミス・レモンのデコピタカールが増えていました。彼女のお洒落にも注目です。

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いつもはスーツでビシッと決めているポワロさんが、コソ泥に入るために鍵屋になりすまし作業着姿で自転車をこいでいる様子、そして警官につかまり独房に収監され囚人服を着てシュンとしている様子が何とも言えず可笑しかったです。牢屋の中のポワロさんを見たジャップ警部の「この男は凶悪犯で狂犬と呼ばれている」というような発言も機知に富んでいて面白かったです。また、そのジャップ警部も泥棒一味の通報でミュージアムの警官に不審者と間違われ拘束されそうになったり、今回はポワロさんやジャップ警部の思いもよらない受難の回でとてもユーモラスでした。犯人が捕まった後の物語のラストで、ポワロさんたちが池に浮かべた帆船の模型には、「これからの探偵業、順風満帆でありますように…」というポワロさんの願いが乗っかっているように感じました。

今回、レディ・ミリセントになりすました女泥棒ガーティの声役は、のび太(ドラえもん)やペーター(アルプスの少女ハイジ)や未来少年コナンの声でお馴染みの小原乃梨子さんでした。男の子の声役にぴったりな声優さんですが、レディの声もなかなか魅力的だと思いました。

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ポアロさんの一番身近にいて、もっとも犯人らしくない人が犯人であることが多いと聞きました。今回は正にそうでした。「えっ、うっそ~、本当に?」と思われる人が真犯人でした。この犯人の嘘はふつう見破ることはできません。そのもっともらしい物言いは、全部真実に聞こえました。3度の死をまぬがれたという嘘から始まり、ポアロさんが飛行機を見上げている間に付近に銃弾を投げ捨て(この場面は映っていない)、蜂が飛んできたという2度目の嘘。そして弾穴の開いた帽子もわざと置き忘れました。自分は命を狙われているということを会う人ごとに巧みに印象付けさせているということがわかりました。最初はポワロも騙されました。ただ、ライス夫人の「大ウソつき」という発言から、少しずつ「おかしいな」と思い始め、ラブレターの内容で疑問がわき、ミス・レモンのちょっとした発言が大ヒントになりました。手の込んだ仕込みから、レモンの交霊芝居により犯人を暴く解決方法も面白かったです。最後に、真犯人に麻薬入りの時計をわざと持って行かせたのは、ポワロさんのささやかな温情だったのでしょう。

今回、ポワロさんに小馬鹿にされ「どうせ、僕の言うことは的外れですからね。」といじけているヘイスティングスが可愛かったです。これって、冒頭で高所恐怖症のポワロさんが、飛行機に乗っているときに目をつぶって怖がっている様をヘイスティングスにおちょくられた仕返しだと思いました。

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アーサー・ヘイスティングスの遍歴

1 第一次世界大戦前、ベルギーへカモ猟に行き、そこで殺人事件が起きる。
2 鉄砲を持っていたので、ポワロに犯人と疑われ、知り合いになる。
3 その後、英国軍人として戦争に行き、足を負傷して戦争中途で帰還する。
4 退役軍人として年金生活を送り始める。
5 その矢先、英国に亡命していたポワロと偶然再会する。
6 そして、ポワロの最初の事件「スタイルズ荘の怪事件」に協力する。
7 その後もポワロの助手として活躍?し続ける。(現在放送中の事件)

したがって、このドラマシリーズは時系列の通りには放送されていません。第20話の「スタイルズ荘の怪事件」の冒頭で、ヘイスティングスの軍服姿やポワロとの再会が描かれています。

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人物評は人それぞれ。その中から正確な発言を見分け、正しく筋道立てられることがポワロの魅力であり、最も信頼のおける探偵として名をはせている理由である。今回もそうであった。

最初から密売人を絞殺するシーン。首を絞めている男がこの物語の犯人と思われる。しかしこれがミスリード。初っ端から視聴者がうまくだまされる。

調査隊の車を運転している若者が「アーサーおじさん」と言った。したがってヘイスティングスの甥である。後々姉の養子であることがわかる。このビルがどのような役割を果たすかはここではわからない。さすがに彼は犯人ではないだろうと思われる。そして「ロザコフ伯爵夫人から呼び出された」とヘイスティングスが暴露。一瞬「ロザコフ?だれ?」と思うが、「二重の手がかり」で、ポワロが犯罪を見逃して列車で別れを惜しんだあのご婦人だということを思い出した。彼女が再び登場するのかなと期待するが、実際は名前だけの登場であった。

その後、馬に乗ったシーラ、ライドナー博士、バグダッド警察の署長、ライドナーの助手のミス・ジョンソン、ラヴィニー神父の順に登場する。多分この中に犯人はいるだろうと予想できる。ライドナー博士は妙に明るく人なつっこい。こういう人が自分を装っている偽善者であることが多い。警察署長であってもポワロシリーズでは除外できない。ラヴィニー神父が円筒印章が見当たらないことを告げる。これが本筋の犯罪に関わることだと思い込まされる。

全員そろってのディナーで、マーカードが急に不機嫌そうに立ち上がったのには何か理由があったのだろうけれど、ここではわからない。ヘイスティングスが陰気くさい場を盛り上げようとして、メソポタミアの語源について発言したが、最初何のことやら?と思った。調べてみると「メソ」は「間」、「ポタム」は「河」であった。河の間に間違いはない。ただ、河馬(ヒポポタマス)を引き合いに出し、「ヒポ」が河だと勘違いするから聞いている方も混乱した。みんな呆れて笑っていなかったが、ポワロとビルだけ慰めのニコリを贈った。ヘイスティングスの心優しい一面が見られたシーンである。リチャード・ケアリーが遅れて入ってきたが、そのときにマダム・ライドナーが注意した。これが2人の偽装仲違いの最初の映像であり、殺人の動機にもなった。

窓に不気味な顔が映った後、音がした隣の保管室はラヴィニー神父がいた。これで十分ラヴィニー神父が怪しい。ポワロも彼の考古学者としての身分を疑っている。でも怪しい振る舞いをしている人は十中八九犯人ではない。そして脅されている人は殺されることが多い。この出来事で、マダム・ライドナーが殺されるのではないかと想像できた。

発掘現場のアラブ人の一人が「殺してやる」といってマーカードに飛びかかってきたが、古代人が憑依したのかなと一瞬思った。後になってから「ああこのことが、冒頭のアラブ人殺害からつながっているのだ」と気づいた。上手な編集だと感じた。

マダムが脅迫状を受け取ったことを告白したが、ポワロがその手紙の筆跡をまねて文を書きビルに見せたところ、マダムの筆跡だと指摘した。でもポワロはマダムが自分自身へ脅迫状を出したのだとは思っていなかった。違うことを考えていた。

ポワロがホテルに戻るたび、ロザコフ伯爵夫人が居るかどうか聞く。あの芸術的な別れからポワロの頭に夫人の面影がこびりついて離れないのだろう。本当に印象に残るポワロの恋バナだった。

馬に乗ったシーラが草むらで何かを探しているビルに遭遇。ビルも怪しいと思わせる制作者。しかし最近その手に乗らなくなってきた。

そして、白昼堂々の犯行。「上がようやく片付いた。ルイーズ(マダム・ライドナー)に知らせてあげないと」と言わなくてよいことまで語って、マダムの部屋に入るライドナー博士。そして「何てこと。ルイーズが」と大げさにふらつきながら部屋から出てくる。ここで彼が容疑者の一番手だ予想できた。

アリバイを聞かれているときのマーカードの様子がやはりおかしかった。ポワロは作業員に襲われた後遺症と言っていたが、多分ここでも違うことを考えていたと思った。

ミス・ジョンソンが泣いていた理由は「おれはきたぞ。情事はやめろ」という脅迫状を発見して、ルイーズのアメリカでの遍歴を疑い、ルイーズとライドナー博士に復讐に来た人物がいると勘違いしたからかなと最初は思ったが、後の謎解きのシーンを見て、ここですでにミス・ジョンソンには真犯人がわかっていたというポワロの推理だった。看護婦のレザランは犯人はミス・ジョンソンだと言っていたが、マダム・マーカードもマダム・ライドナーを嫌っているという発言をした。以前マダム・マーカードの口からマダム・ライドナーは大好きという発言があったが、それとは完全に食い違っている。

ケアリーはマダム・ライドナーに冷淡だと看護婦は言っていたが、シーラはケアリーがマダム・ライドナーに夢中だったと言っていた。若いシーラの方が鋭い観察眼がある。

発掘現場で、ポワロはマーカードの腕をわからないようにしてチクッと刺す。腕まくりをさせるためだ。案の定、注射痕があった。ポワロはマーカードが麻薬中毒だと確信する。これでマーカードの息づかいの荒さの原因がわかった。「まだわかりません」と言っていたが、ポワロの頭の中ではマーカードの容疑は薄くなったのではないだろうか。

マダム・ライドナーの叫び声の聞こえ方を実証する役を頼まれたヘイスティングスが、窓が開いていると聞こえることを発見した。これが犯行方法を見つけ出す手がかりになった。犯行現場は窓は閉まっていた。犯行時開いていたとすると、閉めることができる人物はだれ?と考えたのだろう。そうすると必然的に犯人がわかる。

マーカードがホテルの一室でピストル自殺。これは本当の自殺なんだろう。アラブ人を絞め殺した贖罪によるものか。

屋上のミス・ジョンソンが犯行方法を発見し確信するが、ライドナー博士がいたため「考えてみますわ」と言って、話すのをためらった。これが彼女の命を縮めた。

就寝前に蚊と格闘するポワロは真剣だった。悪戦苦闘の末、コップで捕まえて外に放りだして「やれやれ」と思ったのも束の間、ぷ~んともう一匹。これはアルアルで共感した。

そしてミス・ジョンソンが塩酸を飲み死んだ。真犯人にやられてしまった。でも「窓」というダイイングメッセージがポワロの思考回路をつなげた。すかさず、偽ラヴィニー神父が怪しい男と一緒に逃げ出した。しかし、ポワロは彼が真犯人だとは思っていない。。

皆を集めてのポワロの推理は、相変わらず冴えていた。ビルの挙動不審の原因と円筒印章が紛失した理由が判明した後、犯行の一部始終と犯人フレデリック・ボズナーが調査隊の誰かを言い当てた。犯人を油断させておいて一気に貶める手法はえげつないが凄いと感じた。

ラスト、ロザコフ伯爵夫人の宿泊代を肩代わりさせられるはめになったポワロが可哀相だった。彼女の小悪党っぷりは健在だった。ヘイスティングスが支払いをしているポワロに声をかけなかったのは以前慰められたお返しだったのかなと感じた。

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いつも一度の録画では「ん?」ってなる私です。
細かい考察をされていらっしゃる方の投稿を毎回拝読するのが楽しみ!
再度視聴すると「なるほど!」と多々ある見方も変わって面白い。ありがとうございます。

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不実な顔を覆い隠すいかにも誠実そうな顔。いつもこれにだまされる。今回もそうだった。「最初の方に出てくる人物=犯人」というアガサのルールを知りつつも、オープニングで黄色いアイリスを墓前にたむけ、「君のためだよ。必ずやる。」と、復讐を誓ったシーンが、よもや偽善の演技だとは思いもよらない。こんな良さそうな紳士が犯人だとは思いもつかない。

よく、男女が仲が悪いことを周りに見せつけるためにわざと喧嘩するシーンがあるが、これもそうではないかと思っていた。はじめは、アイリスの妹のポーリンと、彼女の恋人で新聞記者のアンソニーが言い争いしていたので、2人の共犯かと考えていた。ポーリンの涙も嘘八百かと思っていた。でも違っていた。

犯行は実に巧妙。バートンがテーブルを離れてウェイターに成りすましてグラスにもバッグにも青酸カリを入れた。店内のライトが消され、ステージ上だけスポットライトが当たる時間帯をねらったわけだ。ドリンクを注ぎまわっているウェイターの顔は見えないゆえの犯行。ということは事前に「ル・シャルダン・デ・シーニュ」に偵察に出向いていたのかな。彼が歌の文句通りに言った「君を思い続ける。命あるかぎり。」というのは、アイリスへの愛の言葉ではなく、死への旅路の前の餞別の辞だった。何と残忍な男だと思った。

そして、同じ犯罪が再現されなかったのは、ポワロのおかげ。暗い中でポーリンに耳打ちしているのが見えた。ポーリンの毒死演技は真に迫っていた。これではポワロ以外全員だまされる。

関係者を集めての謎解きでは、いつもながらのポワロの毒舌が冴えていた。皆に犯行動機があると思わせておいて、しかし○○が真犯人である、と言い当てる。これで見ている方はスッキリする。

でも、アイリスへの殺人動機は口封じのためとわかるが、ポーリンへの殺人未遂の犯行動機がイマイチわかりづらい。ポーリンの信託財産の管財人であるバートンが、ポーリンを殺せば、相続人であるアンソニーに渡る財産がないことがわかり、使い込みがバレてしまうではないか?ん?なぜ?という感じ。ここだけしっくりこなかった。

ストーリーの出だしで、ポワロは「イギリスには料理はない。あるのは食物だけです。」とイギリスの食文化を批判していたが、事件解決後のすきっ腹には勝てず、イギリス独自の「フィッシュ&チップス」をバクバク食べている姿が愉快だった。

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「そして誰もいなくなった」や「ポケットにライ麦を」に見られるアガサお得意の見立て殺人かと思いきやはずれてしまった。イタリアのヴェリズモオペラの代表作であるレオンカヴァッロの「道化師」の中でもコメディア・デラルテが見られ、コロンビーナが登場し劇中で刺殺される。今回もコロンビーナに扮したココが死亡した。でもクロンショー卿が扮したアルレッキーノはオペラ中では死なない。したがって、この歌劇をモチーフとしたエピソードではないと感じた。

今回、歌劇「道化師」の他、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「プルチネッラ」やアルフレッドリードの「パンチネルロ序曲」のCDを聴き直すきっかけになり、個人的な趣味の充実ができたのがよかった。

ただし、左利きということで犯人と断定するのは証拠としては弱いかなと思ったこと。ポワロがフランス語訛りの発音を視聴者に指摘され、その腹いせにジャップ警部のせいにしようと大人げない発言をしたことが自分内評価を下げてしまった。

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このエピソードでは、中世の決闘やオペラやダンス、チェストの外観など、クラシカルな雰囲気の中で行われた犯罪がディープであった。

ジュゼッペ=ヴェルディのオペラでは、ピュアな愛を描いた「椿姫」ではなく、愛欲と陰謀がうずまくドロドロ劇「リゴレット」が格別であるというポワロの嗜好は、前回の「犯罪に乾杯!」という好尚に合致していると感じた。一貫したポワロの人格表現はいつもながら感心させられる。

清楚なクレイトン夫人の登場シーンに優雅なピアノ曲「トロイメライ」を被せたのは、なかなか良い趣向であった。BGMもその物語に欠かせない大切なパーツであると思った。

今回初めて気づいたが、ポワロご愛用の携帯灰皿がとてもオシャレ。こんなところにもポワロの拘りが感じられた。つま先をつけたままで、かかとだけを動かすチャールストンもポワロに似合っていると感じた。スーシェさんのそれは、どちらかというとアップテンポなもので、特訓の跡が見えた。

昔、先がとがったフェンシングの剣でやられた経験から、「目には目を…」の精神で、目を一突きという残酷な殺しの方法に身震いした。この犯人に自分自身で墓穴を掘らせたポワロの作戦は見事であった。多分マルゲリートはポワロに全幅の信頼を寄せていたので素直に捕まったのだろう。

ラスト、ナルシストであるポワロの「たいしたことでは…」「ついていた」という謙遜に「ふふ」っと笑ってしまった。

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かつて、アガサ・クリスティは神ではなかろうか、と驚嘆した作品がこのポエムがかった「二重の手がかり」であった。この作品を見るにつけ、ポワロに人間的な魅力と類希なる才気を与えたアガサに敬意を表さずにはいられない。

「結婚はNONE」というように、生涯独身を貫いたポワロではあるが、まったく女性に興味がなかったわけではない。今回も、貴婦人の趣のある伯爵夫人に対して、第一印象でほのかな恋心を抱いた。お互いが亡命者という共通点もあり、触れ合いの中で惹かれ合っていった。しかし彼女がすべての宝石盗難事件の現場に居合わせたことを知り、彼女がやっと確信したポワロは、3度目の盗難でたまたま現れた浮浪者をニセ犯人に仕立て上げた。その後は同業者の探偵にその浮浪者を演じさせ、ヘイスティングス、ミスレモン、ジャップ警部までも、良い意味で欺いた。

2人のピクニックデートで、「あなたにお会いできたのも犯罪のおかげ」と犯罪者と名探偵が「犯罪」に乾杯する。そしてポワロの「犯人はつかまらないでしょう。でもそれはあなた次第です。」という安堵を与える促しで、伯爵夫人は宝石を返還。2人の情が通じ合ったゆえに訪れたこの瞬間はロマンティックの極みであった。そして犯罪者と名探偵は協力して架空犯罪を仕立て上げ、すべてを円満に収めた、ジャップ警部の首もつながった。

さらにポワロは伯爵夫人にこれ以上の窃盗をさせないために、お仲間になった探偵をボディーガードとして駅まで同行させる粋なはからいをした。伯爵夫人としての威厳を損ねないように慈悲深く接し、最大限の礼を尽くした後で、夫人を名残惜しそうに見送るポワロは愛おしくもあり、神々しくもあった。

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1914年に勃発した第一次世界大戦では、サラエボ事件の後、ドイツ軍のベルギー侵攻が始まり、ポワロさんは難を逃れるためにイギリスに亡命しました。そして1917年にこのスタイルズ荘の怪事件が起こりました。そのときヘイスティングスと偶然再会し、2人のイギリスでの探偵業生活が始まりました。

ポワロさんの正確な生年月日は不詳ですが、1860年代の生まれではないかと推定されています。したがって、このときのポワロさんの年齢は50歳代ではないかと思います。

ベルギーから亡命してきたポワロさんとその仲間たちが橋を渡りながら歌っていた歌は「イッツ・ロング・ウェイ…」。まったくバラバラで下手な歌でしたが「遠く離れた故郷にいつか帰りたい」という意味を知ったときにはジーンときました。

スーツが良く似合うヘイスティングスですが、軍服姿もとても凛々しいと思います。称号は中尉と呼ばれていました。これまでの話では大尉でしたので、退役後ある時期に昇進したと思われます。ヘイスティングスは、心優しい憎めない人ですが、少々ぬけているところもありますので、ポワロさんにいろいろイジラレていました。しかし、今回の事件解決のヒントはヘイスティングスの何気ない一言であったわけで、ポワロさんには素人の言葉にも十分耳を傾ける姿勢がこのときからあり、感心しました。

さて、イングルソープ夫人の殺害方法ですが、これが少しわかりずらかったです。要するに彼女のいつも飲んでいる液体の強壮剤にはもともとストリキニーネの成分が入っていたのです。映像にもあったように、この強壮剤に臭化カリウムを混ぜるとストリキニーネだけが沈殿して、その個体が底にたまって、最後の一口が超濃厚になり致死量になるということです。コーヒーやココアではストリキニーネの味を消すことができなかったので、予め、犯行時間の遅延効果のある粉状の睡眠薬に粉状の臭化カリウムを混ぜておき、味の濃い強壮剤にそれを混入することで殺人溶液となるのです。恐ろしいことです。

この犯人のねらいはカべンディッシュ家の財産目当てだったわけですが、クリスティが小説の中で描く犯人はこの動機が多いですね。そして、今回のように物語の最初の方に登場し誰かに対して怒っています。さらに、怒られている側が共犯ということがあります。2人そろって芝居をしているのです。そのことを周りの人は気づきません。ポワロさんも最初はだまされます。しかし推理を積み重ねていくうちに事件の骨格が見え始め、ある所で事件解決につながる直感が働いて、真実を導くのだと思います。ジョンの裁判の前に大きく映ったロンドン裁判所の屋根にそびえる『正義の女神テミス』、その化身がポワロさんであると暗示しているようでした。

このスーシェ版は何回見ても飽きません。というか、見るたびに「なるほど、そういうことか」という新しい発見があり、本当に楽しいです。

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銀行の頭取さん、もともと計画的に銀鉱山を奪う計画だったのかもしれない。そのつもりでウーリンをイギリスまで呼んで、事前に殺し屋も手配済み。
既にウーリンが死んだ後、生きているかのように装って、ホテルに現れたのは変装した頭取本人。

賭け事にはまって、怪しい場所に出入りする中、犯罪歴のある男とか投資顧問会社の男に罪を着せて真相を葬り去ろうと思っていたっぽい。
後々、ウーリンの鉱山を銀行の頭取さんが売りに出さなきゃいけないわけだけど、事件が未解決だと、後々、容疑者にされてしまうから、事前に濡れ衣を着せる相手も決めて、ポワロさんの前に依頼人として登場、誘導したという感じかも。

見終わった後は、頭取さんが自ら接近してきたのはなぜ?と、やっぱり不思議だったけれど、時間が経ってから、あの頭取はもしや…ポワロさんも巻き込んだ計画的犯行だったのかな?と疑いたくなってきた。

ドラマの中では、頭取さんは逮捕されて行ってしまうし、何もかも説明してくれないから、その後も謎が尾を引いて続く感じ。でも、そこがおもしろい。

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犯人が仕組んだからくり工作として、
①ポワロさんだけを部屋に通すことで、依頼人の顔を見ることができる人物を制限する。
②部屋に通されたポワロさんにスポットライトを当て、依頼人の顔を見えにくくする。
③自分が拳銃自殺するという夢を聞かせ、後々ポワロさんに正夢が起こったと思うように仕向ける。
④共犯者である後妻が、社長がその夢を語っていたと嘘をつく。
⑤アポイントメントをとって訪れた3人が社長室前で1時間以上待たされ、出入りがなかった証人に仕立てあげられる。

犯人としては、練り上げた計画だったのでしょう。

それに対抗したポワロさんの機転として、
「これは、おかしいぞ」と思い、依頼文書と違う文書を依頼人に戻し、その反応を見る。

このことが、依頼人が偽物と見破る決め手の一つになりました。ミス・レモンの窓を開けて時計を確認した行為と合わせて、ポワロさんの思考回路がピッピッピ~とつながってしまうところが凄かったです。2人の犯人の失敗は、ポワロさんを巻き込んだことだと感じました。

今回、オーダーメードのタイプライターを期待したミス・レモンがポワロさんが買ってきた時計を見て、落胆しながら「それが、ほしかったんです。」と言わざるを得なかったのが滑稽でした。ポワロさん、ミス・レモンの心理についてはまだまだ素人ですね。

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今回はイギリスを離れた地中海に浮かぶロードス島での事件。実際に現地ロケをしたとのこと。原作にマッチした雰囲気がすばらしい。全体を通して至高の短編映画になっていた。

今回の「砂にかかれた三角形」というタイトルは意味深だ。基礎がしっかりせずに崩れやすい物事の例えとして、よく「砂上の楼閣」という言葉を使う。この場合も似ている。三角形を砂に書いてもすぐに他の形に書き直すことができるという意味ではないだろうか。(☚自分の勝手な推理)実際、三角関係ではなく、リヴァースな陰謀が張り巡らされた四角関係であった。

そして、被害者面していた人物の放つさり気ない言葉から、加害者だと見破るポワロは本当に大したもの。物事をよく知り得ていて、この発言はおかしい気づく洞察力は凄いとしか言いようがない。

この話では、ポアロがスパイだと疑われ、出国拒否される滑稽な場面がクスっと笑えた。

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アガサクリスティーの作品は毒親や児童虐待や民族差別やジェンダー差別がよく織り込まれていて、クリスティのそういった核に対する怒りがよく伝わってくる。
作品自体は古いものでもそうした人間の闇は変わらないどころかますます色濃くなっているのだから今見るべきミステリーなのだと思う。

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45話までのマイベストシーンは、女犯罪者へのポワロのほのかな恋心?慈悲の心?を描いた「二重の手がかり」のラストシーンである。優雅で抑揚のあるセリフ回しが興趣をさそった。「ゴルフ場殺人事件」のラストのヘイスティングスのラブシーン、「チョコレートの箱」のラストのビルジニーとの再会シーンもよかった。

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